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やはり、陰キャは何かを、語れる生き物ではない。

さあ、ついにやってきた当日の土曜日。この日のために猫ちゃんの動画を見るの我慢したんだ。

存分にモフモフさしてもらおう。俺はウキウキの気分で電車に乗り込む。


確か、十二時に待ち合わせだったな。俺は後輩の内山を探しながら時計を見る。


「さすがに一時間前は早すぎたな。まあ、まだ来ないだろうから、そこらへんの喫茶店にでも入る……………あいつ、何やってんだ」


近くの喫茶店に入ろうと思ったら、内山が喫茶店の窓に映る自分を見ながら、髪の毛をいじっていた。

中の人に見えちゃうぞ。


「おーい…」


「あ、おはようございます。先輩。早いですね」


こいつ、喫茶店の中にいる人に、見られているの、気付いてないのか。


「おっす。そういう内山も早いじゃないか。まだ十一時なのに」


「え…? あ……っ。か、勘違いしないでくださいっ! 別に、早く会いたくて、こんな時間にきたわけじゃないですからっ! 先輩が迷子にならないか心配しただけですから!」


「はいはい…」


一応心配はしてくれるのか。やっぱり根はいい奴なのかもしれん。まあ、毒舌はいつもどうりだが。


それにしても、内山の私服姿なんて、久しぶりに見たが、やっぱり可愛いな。

いつも、スーツ姿しか見てないから、ギャップもあってか、すごい可愛く見える。


ピチっとした茶色のズボンに、上は、肩が露出している長袖の黒のシャツ。首にはハートの小さいネックレス。耳には銀色に輝く丸いピアス。


本人には、絶対言えないが、滅茶苦茶似合っている。普通にモデルみたいだ。本人には絶対言わんけど。『似合ってるね! 滅茶苦茶可愛いよ!』なんてキザなセリフを言えるのは、イケメンに限ると昔から決まっている。


俺みたいなやつが、こんなことを言ってしまったら最後、内山の超攻撃的なマシンガンマウスにハチの巣にされてしまう。悲しいかな、俺みたいな陰キャには、女性の見た目を褒めることすら許されない。セクハラだし。みんなあ(陰キャ)気を付けような。


「先輩。お昼ご飯まだですよね?」


「ああ。まだだけど」


「そこの喫茶店でもいいですか? 私もよく行くんですよ」


「おう。なら行くか」


チリンと入店の音が鳴る。おお。なかなか洒落てるな。結構レトロな感じだ。

中を見渡しながら席に着く。


「私はもう決まってるので。メニュー表は先輩が見てもいいですよ」


「お、おう。わかった」


え、もう決めたん? 早すぎるやろ。エスパーやん。最近の女の人は、メニュー表を見なくても決めれるのか。こわ。

とりあえず決まったし、店員呼ぶか。


「すいませーん。このカルボナーラを一つ」


「私は、ベーコンときのこのクリームパスタのドリンクセットを一つ。食後にスペシャルティコーヒーをお願いします」


なんだその呪文みたいなメニューは。よくそんな長いメニューを噛まずに言えるな。


「……さすがだな」


「何がですが?」


「いや、よくそんな長いメニューを嚙まずに言えるなと思って」


「別に、最近は普通ですよ。というか喫茶店のメニュ-なんて、みんなこんなもんですよ。先輩は、引きこもり陰キャなんで知らないだけです」


「い、陰キャだって喫茶店くらい行くわ! ……まあ一人でだが」


「先輩、男友達もいないんですかー? かーなしー」


「うぜぇ……。ボッチの何が悪い。友達なんていれば、それだけで気を遣うし、予定もそいつに合わせなきゃいかんし。ボッチは全部一人で好きな事ができる。素晴らしいじゃないか!」


「そんな意気揚々と語られても……。普通にイタイです」


「うっ…。別にいいやん……。ちょっとくらい語らしてくれてもいいやん…」


陰キャだって語りたいとこもあるんだよ…。まあ、客観的に目ればボッチがボッチの事を語ってる奴がいたら、普通にイタイな。うん。やめよう。


でも、友達なんてもう懲り懲りだ。

あんな思いをするなら、一人のほうがよっぽどマシだ。




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