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意外な奴と再会したときは、意外にも話が弾まない。

主任のお誘いから四日後の土曜日の正午。俺は、家で猫ちゃんの動画を見てひとり癒されていた。


「んー--! かわいいでちゅねー。このキラキラした目。そして耳をくすぐるような鳴き声。たまらんなー」


この場に内山がいたら、間違いなく罵倒されるであろう声を上げて「ゆうちょーぶ」を見ている。

こうでもしなきゃ今夜の呑みで潰されそうだからな。今の内に猫ちゃんと成分を確保しておかなければ。

それほど今夜の呑みは憂鬱と言うわけだ。俺自体、酒が苦手というわけではない。むしろ一人で晩酌するくらいには好きである。酒にも強いほうだと思う。


では何が憂鬱なのか。それは主任と一緒に呑むという事に対してである。

これを聞いた男どもは、『あんな美人な人とサシで呑めるだけでいいじゃねーか!』『文句言うなら代われ!』とか思うだろうが、君たちは分かっていない。あの人の酒癖の悪さを。

いやほんとマジでヤバいから。普段はクールビューティーだが、酒が入ると百八十度、人が変わる。なんなら別人格じゃね?とか思ったり。まあとにかくめんどくさい。



「はぁ…。コーヒーでも飲むか…、あ、コーヒー無くなってたの忘れてた。しゃーない、散歩がてら、コンビニでも行くか」


俺はパーカーをとって外に出た。今は四月だが、まだそれなりに寒い。だが五月になると一気に暑くなるんだよな。最近は春と秋の季節の期間が短くなっているような気がする。五年後とかには、夏と冬しか季節が巡ってこないんじゃね。いやだいやだ。


俺はいつものイヤホンを耳にさして、好きなアニソンを外に漏れないくらいの音量で聞く。

この時間が俺は割と好きだ。ゆったりして何も気にせず、好きな音楽を聴いて、外の景色を見渡しながら、ゆっくり歩く。まあ晴れの日限定だが。


そしてしばらく歩いていると、目的のコンビニに着いた。


「さてさて、コーヒーコーヒー…、おっ、あった。ついでだから適当にお菓子でも買っていくか」


俺は適当にお菓子をかごに入れ、レジで会計を済ます。


「ありがとうございましたー」


俺はもう一度イヤホンを耳にセットしようと思うと、後ろから女性の人から声をかけられた。


「………影山君……?」


「ん……?……お前は……っ!」


「やっぱり影山君だよね……?」


「いえ、人違いです……。それでは」


「ちょ、ちょっと…!」


俺はすぐさまイヤホンをセットし、歩き始めた。つかなんでこいつがこんなところに…。


「ちょっとまって! 影山君!」


「すいません急いでるんで」


「お願い待って…!」


「……はぁ…」


なんか周りから見たら俺が悪者みたいな絵面なので、しょうがなく歩みを止める。


「…なんだよ……。松井…」


「あ、あの久しぶり…だね…」


「ああ…。十年ぶりくらいか…」


「そ、そっか…。もうそんなに経つんだね…。元気にしてた…?」


「普通に元気だよ…。普通に社畜をやっている」


「そ、そっか…」


「……話はもう終わりか? なら俺はもう行くぞ」


「ま、待って…! あのー-」


「おーい。日向ー」


「………なんか呼ばれてるぞ…」


「あっ……! ご、ごめん…。行かなきゃ…」


「…おう。彼氏か?」


「え? いや。ち、違う!」


「そうか、んじゃ行くわ」


「あ、うん…」


「…松井。もしあの時の事を話そうと思っていたんなら、もう気にしなくていい。あれは俺が勝手に勘違いして、勝手に失望しただけだ。お前は何も悪くない。もう何も気にしなくていい。それだけ言っておく。じゃ」


「えっ…! ちょ、ちょっとまっー-」


「おい日向、何してんだよ。俺のジュースは……、あん? こいつだれ? 日向の友達?」


初対面の人にこいつとは。なかなか肝がすわってやがる。


「いえ違います。ただに元同級生です。決してナンパとかではありませんのでご安心を」


「そうかい。まあぶっちゃけ昔の同級生でも、男と話してるだけでもいやなんだけど。まあいいや。早く行こうぜ」


「ちょ、ちょっと! 変な事言わないで! ご、ごめん…。もう行くね…? それじゃあ…」


なんでこいつはこんな嫌そうな顔をするんだ? さては倦怠期というやつか。


「…おう」


そして松井は、彼氏? と駐車場に歩いていった。車できてたのか。クソっ。リア充め。

それにしても、さっきのあいつの顔…。なんか気になるが、まあいいや。


先ほどの女性は、松井日向。俺の同級生で、元クラスメート。そして、俺の元友達だ。

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