シルバ6の誕生
今回は敵サイドですが、ヘルバスの隠された過去の話です。
ロベスピエールの屋敷にあるヘルバスの部屋では、彼がベッドに仰向けになりながら天井を見上げていた。
「ったく、ルータスの奴……相変わらずだぜ……シルバ6の中では2番目に強いとしか言えないからな……」
ヘルバスがため息をついた後、ある事を思い出す。
「そう言えば……結成した当時はあの日だったな……」
ヘルバスはそう呟きながら、結成した当時の事を思い浮かべ始めた。
※
半年前、シルバリズムのアジトでは多くの候補生達が四天王の座を手に入れようと、ランク戦が行われていた。四天王になるには入れ替え戦だけでなく、ベスト15までのトップランクに入らなければならない厳しい掟があるのだ。
そんな中、ヘルバスは見事ベスト15に入ったばかりだった。
「ったく……なんとかトップランクに入ったのは入ったんだけどよ……まだ上がいるのかと思うと余計不安だぜ……」
ヘルバスがベンチに座りながらため息をつく中、突然ざわつきが聞こえ始める。
「なんだ?」
ヘルバスが騒ぎのある場所に視線を移すと、それはルータスとペルミラが歩いているのを目撃する。彼等はトップランクのベスト5の二人で、四天王候補の有力者でもあるのだ。
「また彼奴等か。実力も凄いが、四天王になれる確率も高いんだよな」
ヘルバスはため息をつき、自身の武器であるグラムを見つめる。
(今の俺にあるのはこのグラムのみ。しかも、ランク戦はプロレスでの戦いも含まれているから油断できないな……クソッ!余計イライラしてくるぜ……)
ヘルバスが苛つく中、スクリーンに対戦カードが映される。
「おっ、対戦カードの更新だ!」
「トップランク同士の争いか。ヘルバスは……ランク6位の選手とだな」
「ん?」
ヘルバスがスクリーンに近付いて対戦カードを確認すると、なんと6位の戦士と戦う事になっていた。
(カグヤマ。確か任務において優秀な成績であり、更にはプロレスも得意。しかし、彼奴は俺を誂うんだからな。戦うには丁度いいか)
ヘルバスはすぐにトレーニングに向かおうとしたその時、カグヤマが彼の前に姿を現す。
「へー、まさかお前が俺の対戦相手だとはね……」
「カグヤマ……テメェ、来ていたのかよ……」
ヘルバスはすぐにカグヤマの前に移動し、お互いおでこをぶつけ合う。
「実力では俺の方が上手だが、今回のルールはプロレスだ。形式についてはデスマッチとなるが、どうかな?」
「それなら蛍光灯も付けようじゃないか」
「良いだろう。試合は2日後、覚悟しろよ」
カグヤマが去った後、ヘルバスは気を取り直してトレーニングルームに行こうとしたその時だった。
「へー……あのカグヤマと因縁があるとは驚いたよ」
「その声は!?」
ヘルバスが声のした方を見ると、ルータスが彼の後ろに姿を現していた。
「ルータス!お前、聞いていたのか!」
「こっそりとね。それよりも君、デスマッチで戦うって言ったよね。本当に大丈夫なの?」
「当たり前だ!俺はここで引かない男なんだよ!デスマッチだろうが何だろうが、大丈夫だ!」
ヘルバスの覚悟の決意にルータスは口元を吊り上げる。
「なら、僕が良いところに案内するよ。付いてきて」
「お、おう……」
ルータスはヘルバスを連れてとある場所へと向かい出した。
※
「な、何じゃこりゃ!?」
ルータスに案内された場所は、遺跡のようなトレーニングルームで、その姿にヘルバスは驚きを隠せずにいた。
「ここは僕等がいつも使っているトレーニングルームさ。ペルミラも来ているからね」
ルータスが指差す方を見ると、ペルミラが鉄棒を掴んで回転し、そのまま宙回転して見事着地した。
「あれ?お客さん?」
「ああ。今度ランクマッチで戦う事になったヘルバスだ。デスマッチで戦う為、ここでトレーニングをする事になる」
「なるほど。私はペルミラ。ランク4位の海賊娘だよ。特典は双剣!」
「海賊か……実在していたと聞いたけど、まさか本物と出会えるとは……」
ヘルバスが納得していたその時、彼はトップランクのベスト3がいない事に気付く。
「トップ3がいないが……」
「ああ。彼奴等は四天王に向けて頑張っているさ。余程の成果が出ないと入れ替え戦に参加できないし」
「なるほど。俺も十分成果が出てないからな……」
ヘルバスがため息をついた直後、ペルミラが彼に近付く。
「そんな事よりもトレーニングしようよ!」
「そうだったな。さっさと終わらせるか!」
ヘルバスはペルミラと共に銀色の扉の訓練場に行くが、ルータスはある事を思い出した。
「あっ、その場所は……」
ルータスが言い切ろうとした直後、扉が閉まってしまった。
「そこは一番厳しいトレーニングルームだというのを忘れていたな……しかも、ペルミラが担当で、今頃……」
「ぎゃあああああああ!!」
「遅かったか……ペルミラは訓練となるとビシバシするからな……」
ルータスは手を合わせながら黙祷を捧げ、無事である事を祈るしかなかった。
※
そしてランク戦当日、リングエリアでは戦いが行われようとしていて、リングロープの東側と西側に蛍光灯が十本ずつ設置されていた。
「お、おい……そこまでするか!?」
「蛍光灯デスマッチとなるとこれはゾクゾクしそうだが、蛍光灯の数は限られているからな……」
候補生達がざわつく中、リング上ではヘルバスとカグヤマが睨み合っていた。二人はプロレススタイルのコスチュームを着ている。
「カグヤマ……この戦いで決着つけようぜ」
「言われなくてもそのつもりだ。蛍光灯だけでなく、椅子、テーブル、ラダーは各一つずつだ。分かってるな?」
「おう!」
両者はレフェリーの指示でコーナーに移動し、戦う準備に入り始める。
「さて、お手並み拝見だな」
「あの特訓でどれだけやれるかね」
ゴングが鳴ったと同時に、カグヤマがいきなり蛍光灯を二本持ってヘルバスに向けて振り下ろそうとしてきた。
「いきなり蛍光灯!?」
「カグヤマの奴、最初から相手を血塗れにする気だ!」
「先手必勝だ!」
カグヤマが蛍光灯を振り下ろしたその時、ヘルバスは回避したと同時にジャンプする。
「何!?」
カグヤマが予想外の展開に驚いたその時、ヘルバスの回し蹴りがカグヤマの右側頭部にヒットする。
「う……」
カグヤマがバランスを崩した直後、ヘルバスは彼から蛍光灯を奪い取り、リング下に置く。
「ん?蛍光灯をリング下に?」
「何をするつもりだ?」
突然の行為に皆が疑問に感じる中、ロープにある蛍光灯を次々と取りまくり、十本ずつテープで結んでいく。
「これは最後の技で終わらせる。蛍光灯は勝手に使わせない」
「舐めやがって!こうなったら!」
カグヤマはロープに向かって走り、ロープの反動を利用してヘルバスの首元にラリアットを喰らわせる。
「今のラリアットは強烈だ!」
「いくらヘルバスでも……」
更にカグヤマはヘルバスを掴み、ブレーンバスターの態勢で投げ飛ばし、リングに叩き付ける。
「そのままフォールだ!」
「1!」
「させるか!」
ヘルバスはワンカウントで返して、カグヤマの後頭部に蹴りをいれ、仰向けに倒れさせた。
「そのまま……サマーソルトドロップ!」
「ガハッ!!」
なんとヘルバスはその場跳びで前方空中回転し、寝た状態のカグヤマに背中を落としたのだ。
「サマーソルトドロップ!完全に習得したのか!」
「勝てるわよ、この試合!」
ヘルバスのサマーソルトドロップにルータスとペルミラが興奮する中、カグヤマはすぐに起き上がる。
「こ、こいつ!」
カグヤマは強烈な連続チョップでヘルバスにダメージを与え、すぐにトップロープに登る。
「あの態勢は……」
「ダイビングセントーン!」
カグヤマのダイビングセントーンがヘルバスに襲い掛かるが、彼は回避してしまう。
「何!?」
カグヤマが驚いた直後、彼はリングマットに尻もちをついてしまい、その衝撃による激痛が走ってしまった。
「ぐおっ!?」
「今だ!」
ヘルバスはすぐに蛍光灯を用意してリング内に並べる。更に逆さまに担ぎ上げたカグヤマの両足を脇の下でクラッチし、そのまま高くジャンプしてしまう。
「人でなしドライバー!!」
ヘルバスは勢いよく膝を着き、カグヤマを脳天から蛍光灯の山に突き刺してしまった。おまけに蛍光灯が割れてしまい、カグヤマにとっては出血を伴うかなりの大ダメージだ。
「1、2、3!」
そのままスリーカウントが響き渡り、見事ヘルバスが勝利。ランクも6位に上がったのだ。
「口だけばかりで弱かったな」
ヘルバスは頭から出血して失神しているカグヤマを見下し、ルータスとペルミラの方に視線を移す。
「やるじゃん!カグヤマを倒すなんてさ」
「特訓の成果が響いたわね」
「大した事ないぜ。カグヤマにとってはいい薬かもな」
ヘルバスはカグヤマの方に視線を移すと、彼は担架に乗せられて医務室まで運ばれていた。
「あいつはどうなるか分からない。だが、俺は俺のやるべき事を達成するだけだ」
「君らしいね。そうだ。もし良かったら僕達6人で組んでみないか?」
「6人?」
ルータスの提案にカグヤマはキョトンとした顔で彼を見る。
「四天王を目指す6人は勿論、この組織の幹部を僕達で独占し、新たな歴史を築き上げるのさ。悪くない話だろ?」
「なるほどな……助けてくれた恩もあるし、頑張ろうぜ!」
「そう来ないとな!後で僕達の仲間を紹介するよ!」
ルータスはグッドサインで返した後、そのまま先に帰り始める。それと同時にペルミラがヘルバスに駆け寄ってきた。
「今後は共に戦うけど、お互い頑張ろうね」
「あの地獄のトレーニングは勘弁してくれよ」
「さあね?」
ヘルバスの忠告にペルミラはキョトンと首を傾げてしまい、彼はガックリと項垂れてしまう。
「そうだ。折角だから私達でチームを作らない?」
「チーム?」
ペルミラの突然の提案にヘルバスはキョトンとしてしまうが、彼女はスケッチブックにチーム名を書いていた。
「シルバ6。私達ランク上位の6人で結成するの。どうかしら?」
「いいな。これからも宜しくな」
ヘルバスはその提案に賛成し、ペルミラも微笑んでいた。
※
「あれから半年経ったが、今も四天王は変わっていない。シルバ6もだ」
過去の事を思い浮かべたヘルバスはため息をつき、窓の外にあるシャルワルザの街を見つめる。
「必ず任務に成功し、俺は四天王になる。絶対にだ!」
ヘルバスは熱き決意を固め、そのまま就寝したのだった。
次回で決戦の幕が上がります。ご期待ください。




