思いがけない敗北
今回は悲劇の展開となります。では、どうぞ……
朧丸達はエアボードに乗りながら、急いでルイ16世の元へと向かっていた。レーダーによれば、ヘルバス達はシャルワルザの隣にあるヘルジスという監獄要塞にいるとの事だ。
「まさか監獄要塞がロベリアにあるとは想定外だな」
「恐らくロベリアに基地を建てたのは、シルバリズムの活動を広げる為だと思うわ」
「他の国にもあるん?」
「一カ国に一つだけじゃなく、2つか3つもあるからね。それよりもキララ。ヘルジスまであとどのくらい?」
「あそこよ!」
キララが指差す方を見ると、ヘルジスは空中に浮かぶ監獄要塞で、全体的には西洋の城をイメージしている。
「あそこに陛下がいるのね!」
「ええ。恐らく陛下はヘルバス達に囚われの身となっているは……」
アリアンが言い切ろうとしたその時、風が急に強くなってしまう。
「へ!?」
「風が強くなったの!?」
すると、マリーの服が風によって強く捲り上がってしまい、その姿を見たHARUKA達は赤面してしまう。
「早く隠せ!」
「朧丸は見ないで!」
「うわっ!!」
キララは朧丸を目隠ししてしまい、HARUKA達はマリーの周りに集まって固まり始める。
「もう大丈夫よ!」
「OK。けど、一体誰が……「キララ、後ろです!」おっと!」
詠春の合図でキララと朧丸が回避した直後、ヘレネが両手にカタールを持ちながら突っ込んできたのだ。
「外したか」
「二人目はあなたね」
「そうだ。私はヘレネ。カタールの転生特典を持つ者。お前達はここで死ぬ運命だ」
ヘレネが宣言した直後、彼女はカタールを手に取ってインド舞踊を披露する。
「カタールはジャマダハルと言って、インディアでは武器として使われているわ」
「こちらはインドと呼んでいるけど……ともかくカタールなら私が行くわ!」
佳乃はエアボードで移動して地面に着地。ヘレネも地面に着地して戦闘態勢に入る。
「行くぞ!」
ヘレネはカタールを構えて突き刺そうとするが、佳乃はカタールで弾き飛ばして蹴りを腹に当てる。
「ぐほっ!!」
ヘレネは後方に飛ばされて動きを止めるが、すぐに態勢を立て直して佳乃を睨みつける。
「お返しだ!ロケットストライク!」
ヘレネが全速力で佳乃に襲い掛かり、カタールを彼女に向けて突き刺そうとする。
「そうはさせない!」
ところがすみれが駆け付け、番傘バリアでガードした。
「すみれ!」
「ここは私も戦うわ!朧丸達は先に進んで!」
「分かった!」
佳乃とすみれに任せて朧丸達は先に進もうとしたその時、いきなりバリアが発生して進めなくなってしまう。
「ややっ、こいつは術式じゃ!」
「マスター、知っておられるのですか?」
「術式によるバリアは条件を達成するか、術式を書き換えないと駄目じゃ」
マスターラビットの説明にカルミナがペンを取り出す。
「ここは私に任せてください!術式を書き換えます!」
「頼むぞ!」
カルミナはペンを使って術式を書き換える中、いきなりヘレネがカタールで、すみれの服を切り裂く。
「斬撃で服が!」
「今の技は疾風斬撃。風属性の斬撃よ」
カルミナの説明にナツミはすぐに風が吹いた原因を察知する。
「じゃあ、さっきの風も……!」
「正解だ。今のは外したが、今度は外さない!」
ヘレネは次々と斬撃を繰り出し、すみれの服を切り裂いていく。長い袴は短くなってしまい、チューブトップも真ん中部分にダメージがある。
「すみれ、服が……」
「大丈夫。後で修繕しておかないとね……」
すみれが苦笑いで冷や汗を流し、すぐにヘレネを睨みつける。彼女はあくどい笑みを浮かべていて、止めを刺そうと目を光らせる。
「この程度か。最後は楽にしてあげよう。疾風斬撃!」
ヘレネは風のようにスピードを上げ、すみれ達に狙いを定めて襲い掛かる。
「見えた!」
すぐにすみれは番傘を構え、ヘレネのカタールの突きを弾き返した。
「しまった!」
「今よ、佳乃!」
「そこ!」
すみれの合図で佳乃のカタールの突きが炸裂し、ヘレネの心臓部分に見事突き刺した。
「かは……」
ヘレネは口から血を吐き出してしまい、そのまま前のめりにドサッと倒れてしまった。
「この私が……こんな奴等に……」
すみれは息絶えて消滅。そのままバリアも消えてしまい、残るはカタールと金貨だけとなった。
「カタールは佳乃姉ちゃんが回収してくれ」
「うん」
佳乃はカタールを回収すると、カタールは粒子化して彼女のスピリアに入ってしまった。
「これで私の特典はカタールと盾か。もう特典はこれで十分かな?」
「無駄話はそこまでにして、先に進みましょう!」
キララの合図で全員が動き出したその時、いきなり彼等の前にスクリーンが姿を現す。
「これってスクリーン……まさか!?」
エリザベートが危機感を察したその時、スクリーンにヘルバスが映し出される。
『シャイニングウイングスの諸君。ヘレネを倒すとは見事だよ』
(こいつが……ヘルバス……)
ヘルバスの姿に朧丸は冷静に見るが、佳乃達はジト目で見ていた。
「なんか……ダサくない?」
『は?』
佳乃の一言にヘルバスは驚きを隠せずにいた。
「チャラチャラしているし、不良だし、転生者ってこんな人もいるの?」
「大体こんな奴等は雑魚ですからね……」
「少なくとも彼女いないし」
「ウチだったら突き放すわ」
『うグッ!?』
佳乃達のヒソヒソ話はヘルバスの心に突き刺さってしまい、彼はそのまま後ろを向いてロープを用意する。
『もういい……死んでやる』
『待て待て!!』
ヘルバスが自殺しようとしたその時、ロベスピエールが慌てながら彼を止めてしまう。
「ロベスピエール。あなたも来ていたのですね」
『久し振りだな。さて、君達に話す事がある。まずはこちらだ』
スクリーンの映像が切り替わった途端、牢獄の中では一人の女性と子供達が目を閉じて倒れているのが見えた。
「こ、これって……」
「嘘でしょ!?」
「る、ルイ……」
なんとシャルル達はジャコバンズの党員達によって毒殺されてしまい、佳乃達は目に涙を浮かべながら驚きを隠せずにいた。
『さあ、ここからが本番。王の処刑の始まりだ!』
更に映像が元に戻った直後、ギロチン台が姿を現し、党員達とルイ16世が姿を現した。
「陛下!」
『すまない……私はどうやらここまでだ……』
「そんな……」
マリーは既に涙を流していて、朧丸は悔しそうな表情をする。
『なお、この中継はロベリア全土に繋がっている。さあ、何か言いたい事があればどうぞ』
ルイ16世は処刑台に立ち、カメラに視線を移す。
『フランスに続いて、この世界でも処刑されてしまう事になるとは想定外だった。だが、私は王として責務を果たすのみだ』
「陛下……!」
朧丸は思わずスクリーンに対して跪き、佳乃達も後に続いた。
※
シャルワルザでも、スクリーンが姿を現してサンソン達も朧丸達と同じく跪いていた。
『サンソン。このロベリアを頼むぞ。貴殿には仲間がいるのなら、彼等と共にロベスピエールを倒してくれ!』
「必ず奴の陰謀を終わらせます!」
サンソンは涙を流しながら、ロベスピエールの野望を終わらせる事を誓った。
※
場所はヘルジス前に戻り、朧丸達は跪いていたが、マリーだけは口を抑えながら涙を流していた。
『朧丸。昨日君と話してくれた事はとても嬉しかった。うちのマリーが迷惑を掛けたが、これからも彼女の事を宜しく頼む』
「はっ!」
『あと、マリーを慰めるには君達のスキンシップが必要になる。その時は付き合ってくれ』
「それなら私達も付き合います!」
朧丸達はルイ16世からマリーを託され、彼等は一礼をする。
『最後にマリー。君は彼等と共に生きてくれ。君だけは無事でいて欲しい。それが僕の最後の願いだ』
「あなた……!」
マリーは顔を抑えて泣いてしまい、HARUKAとナツミが彼女を抱き寄せる。
『さあ、処刑を始めてくれ。そして……この世界を頼んだぞ、レッスルヒーローズ!!』
スクリーンの電源が切られたと同時に消滅し、朧丸はすぐに背を向ける。
「悔しいが……シャルワルザに戻るぞ!」
「えっ!?どうして!?」
朧丸の指示にはナツミ達が驚きを隠せない中、マリーは彼の傍に移動する。
「朧丸のいう通りよ。今回は私達の作戦ミス。そして、あの人は私達に未来を託してくれた……だから今は……」
「逃げるしかないですね……」
マリーの説明にナツミ達も項垂れるしかなく、彼女達はすぐにシャルワルザへと転移した。
※
シャルワルザに戻った朧丸達を迎えたのはサンソンだけで、彼もまたルイ16世の最期に俯いていた。
「まさかの作戦が裏目に出たとは……完敗としか言えないな……」
「ええ。俺達も想定外でした……住民達は?」
「ショックで引き籠もっているのが多い。それよりも大変な事があった。ロベスピエール達は3日後に広場で演説をしようとし、このロベリアの新たなリーダーとなる事を宣言しようとしている」
「「「ええっ!?」」」
ロベスピエールの宣言に朧丸達は驚きを隠せずにいたが、彼はすぐに冷静に考える。
「いや、もしかするとこれはチャンスかも知れません。陛下の仇討ちは勿論、ロベスピエールを倒せるのなら……好都合です!」
「その通りだ。その時の為にクーデターを起こす準備はできている。優秀な人材も揃っているので大丈夫だ。明日、会わせてあげるよ」
「お願いします」
朧丸は一礼した後、すぐに空を見上げる。
(陛下……俺達に未来を託してくれた以上、必ずシルバリズムを倒し、シャンバラを救います。だから……マリーさんの事は……俺達が必ず守り切ります。大切な仲間を……失わない為にも……)
朧丸は心の中でルイ16世に誓いを立てるが、その目からは涙が溢れて風に流されて飛び散っていた。
(辛かったのね……朧丸……あなたが後ろを向いたのは、辛い気持ちを我慢していた。私も……前を向かないと!)
マリーは朧丸の姿を見て新たな決意を固め、彼等と共にその場から移動した。
※
同時刻、ヘルジスではルイ16世の処刑が既に終わっていて、ヘルバスはロベスピエールにその報告をしていた。
「遺体に関しては問題なく処理しておいた」
「ありがとうございます。後は宣言だけですな」
ロベスピエールの笑顔にヘルバスも頷き、ルイ16世の首は党員の一人に運ばれていた。
「しかし、油断は禁物だ。まだレッスルヒーローズの奴等がいる限りは油断できない。特にマリーは新たな決意を固めたに違いないだろう」
「全ては3日後で決まりますが、やるからには必ず野望を達成し、この革命を成功させるのみです」
「その通りだ。シルバリズムは誰にも止められない。例えレッスルヒーローズが相手でも、俺達が打ち砕くのみ。だが、その前に党員達の数を確認する必要があるな。すぐにメンバーを集めて緊急会議だ」
「はっ!」
ロベスピエールが一礼して立ち去ったその時、ルータスがこの場所に転移してきた。
「へー、まさかの奇襲で国王陛下を処刑したのか」
「ルータス、何しに来やがった!?」
ルータスの姿にヘルバスは彼を殴り掛かろうとする。
「様子見さ。それに仲間の転生者達までやられたみたいだね。君一人で大丈夫なの?」
「甘く見るなよ。俺も四天王を目指しているからな。何が何でも任務を果たして見せる!」
「へぇ……なら、やってみるかい?」
ルータスは拳にオーラを溜めて殴ろうとするが、ヘルバスは後ろを向く。
「だが、戦うのは奴等を倒してからだ。正直お前とは最後に戦いたい」
「分かったよ。じゃあ、頑張ってね」
ルータスは転移して帰って行き、ヘルバスは窓の外に視線を移す。
(あいつには借りがあるからな。死ぬ訳にはいかないぜ……)
ヘルバスは決意を固めた後、すぐに部屋から移動したのだった。
予想外の策略によって敗北を喫したが、ここからどう反撃に繋がるのかですね。
これは個人的な意見ですが、なろうから多くの作家がデビューしているのですが、皆はどうやってデビューしたのだろうか?




