転生者の降臨
今回は転生者との戦いです。
クエスト受注から翌日、朧丸達はルビカルの街に来ていた。そこは西洋の町並みで活気溢れているが、貧富の差が激しい場所でもあるのだ。
「ここはスグリューによって、この様な事態となっています。それと同時に一部の住民達による反発も起こりましたが、謎のアサシンによって返り討ちとなりました」
「謎のアサシン……もしかすると転生者の可能性もあり得るな」
ジャンヌの説明に朧丸はそう推測する。住民達をたった一人で返り討ちにするなど普通ではあり得ない筈だ。
「その推測は正しいと思います。襲撃のタイミングは夜となりますので、真っ暗になり次第行動開始です」
「そうだね。それまで時間を潰しますか」
「「「賛成!」」」
佳乃の提案にすみれ達も同意し、それぞれの自由時間を過ごし始める。
「じゃあ、俺は単独で偵察でもするか」
朧丸は単独行動でその場から移動し始め、気付かれない様に走り去った。
※
単独行動に出た朧丸は屋根の上を飛び渡りながら、スグリュー達のいる屋敷を見つける。教会の屋根の上で一旦立ち止まり、屋敷の全貌を見渡した。
(なるほど……あれがスグリューの屋敷か。油断は禁物だが、どう攻めればいいかだな。中には奴隷や衛兵もいる。ここはどうするべきか……)
朧丸が真剣な表情で考えたその時だった。
「なるほど。お前がこの世界に移転してきた忍者だな」
「!?」
朧丸が声のした方を見た途端、スギヤマがその場から急降下しながら襲い掛かってきた。
「チッ!」
朧丸は舌打ちしながらその場からジャンプし、スギヤマの剣の襲撃を回避する。そのまま宙返りのバック転をしながら、別の屋根の上に着地した。
「その様子から見ると、転生者だな」
「そうだ。俺の名はスギヤマ。シルバリズムのアサシンで、エクスカリバーの特典を付けられた者だ!」
(聖剣エクスカリバー。アーサー王の武器か!その様な武器を手に入れているとは羨ましさを感じるが、油断は禁物だな)
スギヤマの自己紹介を聞いた朧丸は、すぐに彼の武器の詳細を察し、戦闘態勢に入ろうとする。
「俺達の行動はお見通しという訳か!」
「そうだ。いくらお前達が俺達を倒そうとも叶うはずもない。何故なら俺に倒されるからだ!」
スギヤマは転生の特典であるエクスカリバーを引き抜き、朧丸に剣の先を向ける。その行為に彼は動じず、すぐにステップをし始める。
「なら、一思いに殺してやるよ。覚悟しろ!」
スギヤマが跳躍してエクスカリバーを振り下ろす態勢に入り、朧丸はその隙を逃さなかった。
「今だ!」
朧丸は素早くその場から移動し、後ろ向きで宙回転をしながらジャンプする。
「波動斬!」
それに気付かないスギヤマがエクスカリバーを振り下ろして波動を出したその直後、朧丸がエクスカリバーの上に着地したのだ。
「何!?」
「威力は強いが、俺の素早さは甘くない。転生特典を受け取ったお前は調子に乗っているが、相手が悪かったな」
朧丸はそのまま両手から赤いオーラを発動させ、それを両手に纏わせ始める。
「お前は武器無しで終わらせてやるよ!」
「何をするつもりだ!?」
朧丸はエクスカリバーの上を渡りながら、スギヤマにそのまま立ち向かう。そのまますれ違った瞬間、朧丸の手刀がスギヤマの首筋に当たり、彼はそのまま宙返りバック転をして相手の前に着地した。
「へっ!それだけか?今度はこっちが……ぐほっ!?」
すると、スギヤマの右首から強烈な血が吹き出し、その衝撃で彼はエクスカリバーを手放してしまい、屋根の上に落としてしまった。
「奥義、殺人手刀。この一撃を喰らった者は必ず致命的なダメージを与える。忍者の手刀を甘く見たのが間違いだったな」
「そ、そうだったのか……なんて奴だ……」
スギヤマは両膝を地面についたと同時に倒れてしまい、そのまま消滅。跡に残ったのは彼の転生特典であるエクスカリバーと、大量の金貨だった。
(負けたら消滅してしまうのか……哀れな宿命を持った物だな……)
朧丸がエクスカリバーを拾った瞬間、エクスカリバーが光り輝いて粒子化してしまい、スピリアの中に入り込んだ。するとスピリアからウインドウが飛び出し、とある説明画面が書かれていた。
転生特典の取得
転生者を倒すと彼等は消滅しますが、その特典は地面に残ってしまいます。その特典を拾うと使える事ができるだけでなく、以前の所有者達の記録の閲覧、更には特典となる物の改造などができます。
「なるほど……つまり俺がエクスカリバーを手に入れた事で、その特典を使える事ができるという事か。ちょっと試してみるか」
朧丸はスピリアから特典を確認し、エクスカリバーを選択。すると、エクスカリバーが彼の手元に姿を現した。
「なかなか格好良いな。ロングソードだから丁度いいし」
同時に背中にも新たな鞘が装着され、朧丸はその鞘にエクスカリバーを収める。
「よし!後は合流するか!」
エクスカリバーと忍者刀を背負いながら、朧丸は皆の元に合流時に向かった。
※
「何!?スギヤマが殺された!?」
一方、スギヤマが朧丸にやられた報告は、スグリューとピエールの耳にも届いていた。
「はい!朧丸の殺人手刀で殺されてしまい、エクスカリバーも回収されました!しかも、一撃必殺で!」
「そうか。下がれ!」
部下が下がっだ直後、スグリューはイライラしながら机を叩く。
「あの忍者……一体何者だ!?」
「分かりません。こちらとしても想定外でした。あの忍者は只者ではありませんし、殺人手刀だけでなく、他の能力も駆使してくるでしょう。もし、そうなれば破滅は確定です」
「物騒な事を言わないでくれ。取り敢えずは落ち着いて守りを固めなければ」
スグリューはすぐに立ち上がり、兵士達に伝えに向かう。
(やれやれ……これは想定外すぎるな……ジャンヌの奴め、とんでもない男を味方にしたな……だが、わし等をここまでコケにするとはいい度胸だ……!)
ピエールは怒りで震えながら拳を強く握り締めた。冷静である彼でも、自身の計画が打ち砕かれた事で怒りが出るのも無理なかった。
※
「「「ええっ!?転生者と戦った!?」」」
その頃、佳乃達は朧丸からの話に驚きを隠せず、ジャンヌに至っては想定外の展開に口を思わず抑えてしまった。
「ああ。エクスカリバーの使い手だったが、殺人手刀で倒す事ができた。おまけにエクスカリバーも手に入れたけどな」
朧丸はエクスカリバーを鞘から引き抜き、皆に見せる。
「凄い……」
「まさに本物だよ……こんな武器は実在したんだ……」
「というか、転生者に勝ったんやね」
「ええ。忍者の素早さを活かして勝ちましたが、相手は特典に頼り過ぎていました。それもあると思いますが、自身としてはまだまだですね」
朧丸が苦笑いする中、ジャンヌが頬を膨らましながら彼に近付く。
「全く、朧丸さんはヒヤヒヤさせ過ぎです!たった一人で転生者に立ち向かうなんてビックリしましたよ!もしも死んでいたらどう責任を取るつもりですか!?」
「迷惑かけてごめんな。しかし、シルバリズムの転生者はまだ多くいるので油断できない。恐らく彼以外にも強い奴等がいっぱいいるだろう」
朧丸はジャンヌに謝罪した後、今後の事を真剣な表情で推測する。
「ルータスもその一人だからね。今のままでは無理だと実感している」
「そうね。もっと私達が強くならないといけないけど、今はクエストの事に集中しましょう」
「エリザベートさんの言う通りですね。詠春、屋敷の様子は分かる?」
「はい!確認してみます!」
詠春は耳を動かしながら、敵の情報を確認する。
「どうやら私達が来る事を予測して、守りの体制に入っでいます!」
「やはりか。向こうもワシ等が来る事を感じていたに違いない。兵士達、奴隷救出、元凶を倒す3手に分かれて行動じゃ。そしてその役割は……」
マスターラビットは指示したと同時に、役割分担を決め始める。
「マスターの選択はどうなるかな……」
「なんか不安な予感がするんだけど……」
詠春達が考え込む中、マスターラビットは役割分担を決め終えた。
「決まったぞ!まず、兵士達はHARUKA、ナツミ、アリアン、カルミナ、ベトラ」
「ウチ等は兵士達やね。気合い入れていかんと!」
HARUKAの決意にナツミ達も頷く。
「奴隷救出は佳乃、すみれ、ボニー、キララ」
「それなら私に任せて!番人も出てくるから用心しないとね」
「その時は私達もサポートするから!」
すみれの笑顔に佳乃も頷く。
「そして元凶は朧丸、ジャンヌ、詠春、ワシ、エリザベートじゃ」
「奴等に関しては徹底的に始末あるのみだからな。気合い入れて行くぜ!」
朧丸の意気込みに詠春達もコクリと頷く。
「全ては夜じゃ!くれぐれも用心して置くように!」
マスターラビットの忠告に全員が頷き、その場で一斉に解散した。
※
そして夜、屋敷の外では朧丸達が潜入して行動を開始していた。
「恐らく兵士達はこのホール内にいます。奴隷達は地下室。そして、元凶は奥の部屋です」
「なるほど。貴重な情報をありがとな」
詠春の説明に朧丸は礼を言う。
「動くとしたら今しかない。相手がどんな強敵でも、ただ勝ちに行くだけだ」
「その通りじゃ。ワシ等は全員生きて帰るぞ。突撃じゃ!」
「「「おう!!」」」
マスターラビットの合図で全員が動き出し、それぞれの戦いに身を投じ始める。この様子を黒い猫の獣人女性がじっと見ていた。
「へー、あれがスギヤマを倒した人ね。ますます興味深いかも。でも、今は邪魔しちゃまずいから、取り敢えずは帰ろっと」
女性は後ろを向いた直後、その場から気付かれずに転移した。果たして彼等と相見える日は来るのだろうか……
戦闘が本格的になります!果たしてその結末は如何に!?




