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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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8話 波乱の前兆

「ほら付いてきてやったぞ感謝しろ。そして俺にそろそろ主人公ムーブをやらせろい」


「知らないよ。どうでもいいね」


 トーララオン騒動から、ユズは毎日山に通うようになった。もう既に1週間目。時間は昼食前か夕食前のどちらか。おかげでご飯が毎日新鮮だ。


「なんかさ、とにかく展開が平坦。ミゼもクルメトも可愛いけど、聖人すぎてラブコメ展開感じない」


「それは分からなくもない。僕もミゼ達の影響で、三大欲求が二大欲求になりつつある」


「すぐそういう方向に。俺も...... 一人でするとか無いし......」


「せっかく魔法使えるのにね〜」


「それー」


 すっげぇ平和な会話だが、これでも俺らは大真面目である。何故ならば、これからついに激戦が始まるからだ。



 これは昨日の夜の話。ユズが情報を確定させたらしく、俺の部屋で報告をさせていた。


「キキョウ、明日一緒に来てほしい」


 ユズは単刀直入に言った。


「......俺も山で調査するってことか?」


 俺はつい聞き返してしまう。


「そう」


「あっれ〜?(笑) ユズさんこの前、俺のことを足手纏いって言ってませんでしたっけ〜?(笑) やっぱり俺の力が必要でした〜????」


「くっ......」


 ちょっと根に持っていたから、煽り返せる機会があって嬉しい。


「まあ本当はもっともっと煽りたいけど、大人げないのもあれだし許してやろう。手伝うのは全然いいぜ。理由を教えてくれ」


「今日までの観察の結果、生態系が終わっている」


「ほう。具体的には」


「普段よりも植物が少なくて草食動物も減って、肉食動物もその影響で段々と餓え死んできているね。わりかしヤバい状況」


「なるほど...... それおかしくね? どっかの動物が増えていないと」


「そう。そこが問題。何処でしょう?」


 植物でも草食動物でも肉食動物でもない。あの山は火山じゃないし、この世界で公害などあるはずもないし。急激な気候変動があったなら、ユズかクルメトあたりが気づくよな。となるとウイルスかカビか、それとも......


「正解は、虫が増えました」


「あぁ、虫か。......虫? あのただでさえクソデカくてキモい奴が増えたとか、地獄じゃん」


 ここの虫らは山の奥に行くほど多く強くなる。群れないはずのトーララオンが8匹も現れたのは、麓に降りてきたからだろう。草食動物が減り、腹が空いていたのもあるかもしれない。


「いや、ね。本当そう。どうする?」


「そもそも何で増えたんだ?」


「それが分からないんだよね。だから困っている。とりあえず、山の行ける場所は行き尽くしたから、もっと高いところに行きたい。必要なら頂上まで行ってみるつもりだよ」


 頂上か。幾らユズもたかが何時間で頂上探索するのは、大変だし危ないだろう。


「頂上行くから俺に付いて来て欲しいってことか」


「そういうこと。僕も魔力温存したいし、付いてきて欲しい。頼んでいい?」


「あぁ。構わないぜ」


「ありがと。じゃあ明日の朝、早起きするから良く寝てね」


「おっけー」



 というわけで、早起きして朝食とって、日が登ってきたため今から頂上に行くところだ。虫対策として、長袖長ズボンに虫除けを使っている。


「うぇーい! 出発進行〜!」


「テンション高いな」


「先生にお弁当作ってもらったんだ〜」


「おぉ」


 今から激戦区に入るといっても、まだ麓付近で虫も弱い。しかし、それでも拳サイズ。この前の場所でも顔サイズだったから、頂上に行くと果たして何処まで大きくなるか......



××××××



「うわー、でっか。夢に出てきそうだな」


「このサイズ、糸出して女の子ぐるぐる巻きにする奴の実写版だね」


「なんだそれ」


 頂上付近の大きな虫の中でも、さらに比較的大きなサイズの蜘蛛。体長は50cmを超える。

 流石に大きすぎるので、魔法を使って駆除しながら進む。ユズが魔力の温存って言っていたが、ようやく実感したわ。雑魚処理専門みたいな扱いでムカつくが、これは必要な役。


「お腹空いた。お弁当食べようよ」


「このタイミングで!?」


「だってここ逃したらもう食べる時間無いじゃん」


 正論ではあるけど、それはそれとして此処で食べるの嫌すぎる。ユズがレジャーシートを敷いてくれたが、結界魔法でこの空間を隔離したが、それでも視覚的ダメージが中々強い。


「「いただきます」」


 水魔法で手を洗い、クルメト作の弁当を取り出す。サンドイッチ弁当か。カラフルで美味そうだ。


「あー...... 美味」


「美味しいなら美味しそうに食べなよ」


「ちょっと虫恐怖症かもしれん俺」


 結界の外側には、ビッシリと大きなトンボやらバッタやらが張り詰まっている。いや、見るな見るな。気にしてはいけない。


「んー、僕も虫嫌いだから気持ちは分かるけどね」


「生理的嫌悪感」


「僕の場合は生理的嫌悪感ってよりは単純に有害生物が嫌いなだけだからなぁ。んま」


 心の底から美味しいというリアクションをしている。まだピクニック気分で居られるのか。人生楽しそうだな。


「虫が怖く無いのか?」


「うーん、嫌いだけど、怖いとは違うかな」


「ふーん」


 なんとも合理的に生きている奴だ。これからGが出たらユズに任せよう。そしてこの場もなんとかして欲しい。


「ご馳走様っ!」


「ちょっと待って。んっ、んっ。......ご馳走様」


「よし、じゃあ出発再開!」


 結局ユズは何も対処せず、俺がただただ焼き払い続け、ようやく頂上に着いた。言われてみれば、虫の数は確かに多く、ここに来るまでにも三十匹は殺している。

 しかし......


「これはエグい」


「うわー...... 帰る?」


「賛成...... って言いたいところだけど、流石にここまで来て引くのは無理だろ」


 今までが比べ物にならない程多い。地獄絵図だった。虫がウヨウヨいすぎるせいで、もう何というか視界が半分黒い。蝗害みたいになっている。ユズが結界魔法を使っているおかげで何とかなっているものの...... いやヒビ入っている! ヤバいヤバい!


「どうする? 焼き尽くそうぜ!」


「うーん...... 山が燃えるのは勿論いただけないけど......」


「これを放置するのも良くないだろ。焼いたら虫の死骸が肥料になるかもしれないし、大丈夫だって」


「案外それが一番良いかもね。よろしく」


「おっしゃ! 待ってた!」


 ユズからの許可が降りた。両手を前に出し、その間に緑の魔力を募らせる。暴発限界まで魔力を抽出できたので、両手を広げ......


「キキョウ、ここで必殺名!」


「えっ、えっ、『ファイアートル......」


「完全にパクリ! しかもそれサッカー!」


 ファイア...... フレイム...... ブレイズ...... バーニング…... クラッシュ...... 全く思い浮かばねぇ。


「なんか手本見せてよ」


「えぇ、恥ずかしい......//」


「んじゃもう安直に『オラっ!』でいいか」


「こんな異世界生活は嫌だ」


「後で一緒に考えようぜ」


 よし、クソみたいな会話していたら虫への怯みも無くなってきた。思いっきり燃やし尽くしてるぜ!


「最大出力! 炎魔法! オラァァア!!」


 爆発。目の前に大きな炎の柱が立った。バチバチと音が鳴り、炎は燃え広がる。熱気が直で伝わり、肌がヒリヒリと焦げていく感覚。


「ハーー!! まじツエェ! 魔法最高ー! ハハハ、フハハハハ!」


「あっつ。完全に悪役化しているね」


「うるせぇ! ハハッ! ヤベェなヤベェな!! オラッ、追加追加追加追加ァ!!」


「あ、キキョウやりすぎ! 冗談抜きで山が死ぬ!」


 ユズが物体生成魔法で俺らを遮断するが、壁の上には大きく燃え上がる炎が映っている。360°全てが炎に包まれて、俺のテンションは最高潮だ!


「10%ぐらい魔力残ってればいけるだろ! 酸素追加! 風魔法!!」


「ちょ、結界魔法! 一旦止めてってば!」


「フハハッ、アハハッ、ファー!!! 」


「やめてーー!!!!」




「ふぅ、ふぅ、大満足」


「はぁ、はぁ、マジで怖かった」


 山を殺す気で撃った魔法だが、山にはあまりダメージが入っていない。ユズが物体生成魔法で地表にはカバーをしていて、さらに途中で結界魔法で囲って酸素を消したからだ。

 虫の死骸は、もはや消し炭となって消えてしまっていた。燃料とか関係なしに、とにかく爆発させてたからな。


「ふぅ、空気の入れ替えしなきゃ。風導魔法」


「頑張るなぁ」


「誰かさんが想像以上に燃やしたからね」


「悪いな、強くて。派手なものが好きなんだ」


 俺としては、花火を見たような気分で大満足だ。あのキラキラは少年心に火をつける。もうこれだけでも魔法使えてラッキーだったって思える。


「どうせなら、山ごと全部燃やし尽くしたかったなぁ」


「もうキキョウを山に連れて行くのは止めよう」


「あぁ待って待って。悪かったって。な?」


「次やったらダメだよ。今回だけ」


 やったぜチョロい。


「でも、おかげで大体虫は片付いたね。何が起こっているか調べなきゃ」


「あとは任せた!」


「用済みのペットは捨てたいんだけど...... あれ? 地震?」


 地面が揺れる。震度で言うと4はあるな。結構強い。ま、ドデカイ震動音! なんだこれ!?


「おいおい、結構デカくね? ここってプレートの境目なん?」


「どうだろう。でも......」



 その瞬間、ユズの足元の地面から、黒鼠色の大きな物体が飛び出した!



「あっ!」


「ファ!?」


 俺が振り返って見た時には、すでにユズは飲み込まれていた。


「ユズッ!!」


 残りの魔力を搾り出し、全力の魔法弾をユズが居たであろう位置に放つ。中のユズごと傷つけるかもしれないが、今はそんなことを言っている場合ではない。とりあえず救出が最優先だ。


「あ゛あ゛あ゛!!!!」


 しかし、そんな全力の魔法弾でも、デカブツの身体に傷ひとつつけられなかった。代わりの咆哮は、俺の耳が裂けそうだ。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」


「ウッ......」


 さらに声をあげられ、鼓膜が痛む。デカブツが暴れ、さらの近くの木が倒れる音が重なる。これは...... 怯んでいるのか?


「ぐ、カハァ! 生存!」


 そんな時、デカブツの一部が弾け飛んだ。その中心には、ドロドロとした青い液体が付着した結界を纏うユズが居た。

 ようやく咆哮とデカブツの暴走が終わり、俺は急速に目の前の事象について確認する。

 今ユズを飲み込んだのは、大きな黒鼠色のワームのような生物だ。どんな大木でも丸呑みできそうなほど大きく、表面は何かもぞもぞと動いている。光沢はなく、土はあまりついていなくて、得体の知れない嫌悪感が湧いた。


「え...... キッッッッッッモっ!!!」


「そんなん叫んでいる場合じゃないから! 逃げて逃げて逃げて逃げて! 結界魔法!」


 デカブツが地ならしをしながら向きを変える。歯も牙もない口が俺に向いた時、デカブツはとんでもない速度で動き出した!

 ユズが俺に飛び込んでくると同時に、結界魔法が球体状に俺を包む。直後、デカブツが俺と結界をぶっ飛ばした!

 ユズが魔法弾でデカブツを惹きつける。空気が震えるほどの威力の魔法弾でも、デカブツは怯まない。そんな絶望的な光景が目に映り......


「痛い! 痛い! 衝撃が強い!」


「絶対に吐かないでね! 絶対に吐かないでね!」


 俺だけバトルから追い出されそうになっていた。結界が俺を包んで山を転がり続けているのだ。木にぶつかった時の衝撃が結構強い。首が痛む。

 そのまま転がり続けて約2分、ようやく止まった。おむすびコロコロに次ぐ世界的な記録を叩き出して、俺は吐きそうになっていた。


「ちくしょう...... もう少し魔力を温存しとけば良かった」


 さっきの炎魔法と魔法弾でほぼほぼ魔力が切れた俺。そもそも、あのデカブツはなんだ? 大きな虫が集まっている...... いや、張り付いている? それとも......

 ちょっと考えないようにしよう。吐きそうな時に考えたら気持ち悪くなってきた。

 ユズなら結界魔法かなんかで逃げられるだろう。残ったのは、何か理由があるからだ。ここで殺す気なのだろうか。

 本音は加勢に行きたいが、距離も開いているし、そもそも魔力も切れて三半規管も死んでいる今の俺じゃ本当に足手纏い。ユズに言われた通り、安全地帯で待っているか......




「やあやあただいま。そしてお疲れ様」


 ゆっくりと頂上まで歩いていると、ユズが見つかった。少し服が破れていて、それ以上に身体がボロボロになっている。


「......あれキモい。戦いたくないぃ」


「風呂は先に譲るよ」


「ありがとう...... 何分か耐久して観察したけど、村への影響は無いと思う」


 ユズは逃げ帰ってきたらしい。攻撃しないのは、刺激して暴れられるのを懸念してか、それともキモ怖いから見たくないのか。俺は一部しか見てないが、それはそれはヤバそうな見た目だった。後者でも責めはできない。


「しゃーない。村への影響無いなら、一旦帰るか。粘ってくれてありがとな。戦力の補強だ」


「補強といっても、僕とキキョウとタイカルぐらいしか戦力にならないけどね。まあ魔力を回復するだけでも十分効果あるか」


「俺ら3人だけで勝てそうか?」


「勝てると思うよ。キキョウがデカブツが逃げられないよう結界を作る係。タイカルがキキョウの監視とフォロー。僕があのデカブツの処理。それで行こう」


 ・・・あれ、俺の役割がなんかショボいぞ。しかも監視とフォローまでついてるぞ。ん?


「流石に無理がある、せめて3人でデカブツ相手にした方がマシだろ。囮役とか居ないと、ユズなら一撃で死んじゃうぜ?」


「一発も喰らわずに倒せばいいだけ。僕もキキョウを守りながら戦うのは流石に厳しいし、僕1人でやった方が効率的だよ。退散するのは単純にそっちの方が確実だからだね」


「......マジで言っている?」


 あのデカブツの体積は、日本の生き物だと小さめの鯨と同じぐらいのサイズだ。それが蛇のように速くクネクネと動く。俺の炎魔法で山ごと燃やすとかしないと、普通に勝てなさそうだが。


「まあ、期待してて。原因が見つかってよかった。特別に本気の僕を明日見せてあげるよ」


 自信満々なユズ。ユズがここまで断言するってことは正しいんだろうけど、なんか、不安だ......



××××××



「ケニエ様、アタシをセレネに転移させてください」


 ここは天界。フィルクは転移の神様に跪き、そう言った。


「おーけー。ま、気楽に頑張りたまえ」


「はい」


 転移の神様が指をパチンッと鳴らすと、フィルクはセレネ ーキキョウ達のいる星ー に転移した。


「ッツァ!」

「ったぃ......」


 直後、額と額がぶつかる。


「あぁ、悪ぃ。見てなかった...」


 フィルクの目には、茶髪を基本に緑色の髪が少し混じった、比較的よい顔立ちの青年が映っていた。

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