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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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7話 8匹の獣

「おい! なんか狙われているぞ!」


 木を運んでいる最中、なぜか急に獣に目をつけられてしまった。


「うそっ!? 逃げないとっ!」


「そんなヤバいの!?」


「あれはトーララオン! 簡単に言うと虎とライオン混ぜて大きくした感じ!」


「師匠院に運ばれる、動物に襲われちゃった人達の、7割はトーララオンから逃げてきた人たちだよっ!」


 そりゃヤバいな! しかも複数、集団行動もできるのかコイツら!


「魔法弾! 壁魔法!」


 ミゼが魔法弾で牽制し、物体生成魔法で大きな壁を作る。さすがクルメトの手伝いさん。転移組を除けば、トップレベルに魔法を使えるのだ。


「ナイスミゼ!」


「今のうちに逃げよっ!」


「待って!」


 ユズが静止する。


「おいおい! 幾ら何でも多すぎじゃね?」


 反対側にもトーララオンが見えた。しかも一匹じゃない、どうなってんだよ。


「うわぁ、8匹も居るよ! どうするのどうするの!?」


 8匹!!?? いや、待て。焦るな。ここは異世界。さっきミゼが言ったように、一般人でも魔法を使えば負傷はすれど逃げ切れるレベル。

 8匹同時というのはメチャクチャだが、こっちにも無茶苦茶な性能をしている人が居るんだ。


「落ち着け! ユズ、おまえなら行けるだろ?」


「そっかっ!」


「たしかに!」


 俺らも足手纏いになるほど弱くはない。身を守りながら、ユズが一体ずつ戦えるように物体生成魔法で援護すればいける。


「よし、とりあえずミゼとタイカルは身を守れ! 防御面は俺が援護するから、ユズはとにかく倒してくれ。一匹ずつで良い」


 ユズは返事をする前に、ミゼの近くにいたトーララオンを槍魔法で貫いた。そして、次に一つの槍魔法で2体同時に貫き、俺の方を向く。

 やれやれ、作戦を立てるまでも無かったか。やっぱりユズに不可能は無い......


「ごめん、もう魔力切れた」


「つっかえねぇなぁオイ! じゃあ俺が代わりに戦うから、防御と俺の援護を頼むぞ!」


「分かった!」「了解っ!」「あざーす」


 たしかにさっきまで結構無茶していたからな! でももっと節約しろ!

 3体減ったのはだいぶデカい。残り5体か。


「俺まだ槍魔法っていうやつ苦手なんだけど。方向がブレる。魔法弾で良いかなぁ」


「暴発しないように、けど威力はそれなりに。とりあえず臨機応変に頑張って」


 指示が曖昧だな。ちょっ、早速来た! 早っ!


「オラァ!」


 身体強化魔法と物体操作魔法で力とスピードが増した、殺人パンチでトーララオンの顔面を打ち抜いた。トーララオンの顔が潰れ、怯んだところを掴む。膝蹴りを顎に喰らわすと、ゴキッと音がして地に倒れた。


「ひっ、痛そうっ」


 ミゼから悲鳴の声があがる。俺の拳と膝頭もまあまあ痛い。おっと、トーララオンが今度は連携して向かってきた。

 いやこっわ! ガチ猛獣やん! あ、待って距離取っても近づいてくる! 速っ!


「ちょっ」


 結界魔法で身を守った直後、2つの魔法弾がトーララオンに横からぶち当たる。ミゼとタイカルか。さらにタイカルの追撃の魔法弾が一つ。エイム力抜群だ。


「2体、弱らせたんで任せます!」


 トーララオンは俺からタイカル達に標的を変え走るが、壁にぶつかる。2体ずつに仕切られたみたいだ。よし、それなりに距離を取ってまとまってくれている。これなら......!


「魔法弾!」


 距離が近ければ暴発の可能性も無い。2体まとめて撃破...... あ、威力ミスった。


「ギャー!」


「大丈夫ーっ!!??」


 爆発の衝撃で俺も床に倒れた。こ、こわかった。ちゃんとトーララオンが吹っ飛んでいってくれて良かった。

 念の為もう一度魔法弾を撃って、確実に倒し、壁を身体強化ジャンプで乗り越える。

 あらら、マズイ。挟み撃ちにされているし」


「危ない、戻ってっ!」


 ミゼの言う通り、俺はもう一度ジャンプして、今度は壁の上に着地した。


「おー、ナイスバランス感覚ー」


「おまえ何もしてねぇな!」


「だってまだ子供だもん」


 理が通っているんだか通っていないんだか。俺は無視して、トーララオンの一体に手のひらを向けた。


「槍魔法!」


 槍を飛ばすのび必要な、物体生成魔法からの物体操作魔法という工程を、感覚的に楽にできるようまとめた便利な魔法。

 しかし上手く扱わないと強くない。ぶっ刺さったものの、致命傷にはなっていないようだ。


「ありがとう!」


 タイカルが魔法弾で弱らせた一体にとどめを刺す。よし、ラスト一体......!


「じゃあせっかくならラストは僕が」


「は?」


 ユズが槍魔法でラストのトーララオンを処理して、この戦いは終わった。



××××××



「ぐ、ぐろい......」


「あっ、ごめんね。無理させて」


「おまえ魔力無かったんじゃねぇのかよ!」


「帰りにあの木を運ぶためにちゃんと残しておいたんだよ。もちろんキキョウならアレぐらい簡単に全滅させられると踏んでね」


 魔力というとMPみたいなものを想像する人の方が多いと思うが、実際は数値ではない。例えばもう満腹だと思っても、胃には空きがある。例えばシャトルランのように、魔力が切れたーと思っても捻り出せば無理やり出てくる。

 ということで、ユズが言っていることも強ち間違いではないのだが...... はぁ。


「でも皆すごいよっ! 8体も倒したよっ!」


「あー、そういや、こんな一気に出てくるっておかしくないか? 群れて行動しているってわけじゃないんだろ?」


 ここは村からいうて離れていない。そして、普通の人は3体以上に囲まれたらもう命が危ういだろう。そんな殺伐とした世界観では無かったはずだ。


「知能が高いから群れて狩りとかもできるんだろうね。でも何で普段は群れていないのに、今回だけ?」


「あぁ、えーっと...... ここら辺になんとかブルーがあるんじゃないかなっ!」


「アイカブルー?」


「それそれっ!」


 アイカブルー。ユズの植物図鑑に書いてある中でも、一段と面白い生態をしている植物だ。


「なるほど、アイカブルーの匂いに惹き寄せられたってことか。言われてみれば微かに香るな」


「あー。トーララオンなら溶かされることも無いもんね」


「溶かされる?」


 タイカルが疑問を持つ。

 アイカブルーは太く短い木。特徴として、樹液がある何週間かだけ非常に甘くなる。水を加えながら火を通せば、この異世界では唯一の、シンプルに甘い調味料ができるのだ。


「アイカブルーの樹液がメチャクチャ甘いのは知っているでしょ? その樹液は、火を通す前は香りもメチャクチャ強いんだ」


 甘い樹液が出るアイカブルーを見つけたら、積極的に取るべきとされている。見分け方は琥珀色と強い香り。


「木のテッペンに樹液が溜まった穴があるんだけど、その香りに誘われた虫とか鳥が入ったら......」


「あ、もう分かった。それ以上は大丈夫」


「粘性の強い樹液の中に捉えて、じっくりと溶かす。上手く登ることができず、じっくり、じっくり、皮、肉、内蔵......」


「聞かない聞かない聞かない!」


 熱を通せば酸性は弱くなるので、安心して食べられるぜ。


「よし、そのアイカブルーっていうやつ取りに行こうぜ!」


「さんせーいっ!」


 トーララオンの埋葬をして、タイカルの精神的回復のため少し休憩し、俺らは移動を始めた。


 ユズの嗅覚強化魔法とやらを頼りに、アイカブルーはあっさり見つかった。たしかに、他とは比べものにならない程良い香りがする。

 穴の中に滑り落ちないよう注意して飛び乗り、カモフラージュになっているのだろう枝を掻き分け、ユズお手製の即席バケツを樹液の中に入れて引き上げる。


「取れた!」


「じゃあこっちに!」


 タイカルにバケツを渡し、木を降りた。タイカルは樹液に指をつけ、加熱魔法を使い、舐める。


「あ、ん、あまっ! あまいあまい! そのままだと甘すぎるこれ!」


 タイカルは悶絶の表情を見せた。水を飲みまくっている。そんなになのか?


「どれどれ。......あっま!! えっぐっ! 何これ、エネルギー入れすぎだろ! カロリー過多だわ馬鹿野郎!」


「そんなに? あ、ヤバっ! あまっ! え、あまっ!? なんで!?」


「......私も? あ、あまい! んっ、んっ! あまい!」


 全員舐め終わったので、バケツはミゼに預けて、さっきの場所に戻る。再び木材2本を運びながら、俺らは降り始めた。


 日が沈み始めたころ、タイカルの家が見えた。その隣に、俺らの新しい家ができるのか。良い場所だな。


「ふぅ、ふぅ、到ちゃ...... くっと!」


「重かったー」


「ふぅ、本当にありがとね2人とも。というか、無理させてごめん。これ無ければトーララオンもっと楽に倒せたよね」


 感謝と謝罪を述べるタイカル。最初は誰かさんのせいで疑っていたけど、普通に良いやつだったな。気遣いもできるし。


「どういたしまして。おかげで、今日は初めて異世界っぽい体験できて、楽しかったぜ」


「うん、オレも。これから新築関連で会う機会が増えていくと思うけど、よろしくね」


「あぁ。いい家お願いしますね」


「了解っ」


 別れる雰囲気だしといてアレだが、疲れたので少し休憩だ。みんな座り込む。


「そういや、レアって子とは結局話さなかったな。今からはちょっと面倒だし」


「まだ何日かあるし、一回ぐらい会話できる...... かな? 新しい家で初めて話すとかでも、全然良いんじゃないかなっ」


「そうだな。タイカルから俺のことを適当に語っておいてくれ。イケメンとか天才とかパーフェクトとか」


「盛りすぎない程度にポジティヴに言っておくよ」


 これでレアちゃんからの好感度カンスト間違いなしだな。よしよし。


「どうする? そろそろ行く?」


「私は良いよーっ」


「おっけー。じゃ、また近いうちに」


「「ばいばーい!」」


「ばいばーい!」


 こうして、長い一日を終え、クルメト院に戻った。



××××××



「美味っ! めちゃ美味しい!」


「うん。うまうまです」


「そう、嬉しいな。でもあと3日はブータミネート漬けだから、途中で飽きないようにね」


「あらら。ありがたく戴きます」


 クルメト院に着いて、蜜を渡し、種を保管して、そして現在夕食を食べている。血抜き? やら何やらの面倒な処理をユズとクルメトでしていたらしいが、超美味しい。初めて食べた。


「あむあむ。美味しいです!」


「珍しいね。ブータミネートを持ってくるなんて」


「そうなんすか?」


「うん。基本的に高い位置に居るし重いから、普段は村の肉係が取っているんだ」


「おぉ、文化」


 役割分担があるのは、村の仲が良い感じがして、なんというかホッコリする。俺も力あるし、慣れたらそういうのしてみたい。


「あれ、じゃあブータミネートの残りはそこに渡せば良いのでは?」


「私たちはあんまりお肉は食べない方だったから、せっかくだし人数増えた今、肉料理を試してみたいって思ったんだ」


「私お肉大好きですよ?」


「え。......そうだったんだ。ごめん」


「え」


 謎の沈黙。なんでクルメトは知らなかったんだ。ぱっと見好きそうじゃん。


「そういえばっ! お肉繋がりで、今日トーララオンに囲まれたんだっ!」


「テンションの切り替えすごいね。帰り途中、急に。数にすると8体いました」


「......8体って、多くない?」


「はい! 初めて見ましたっ!」


「......」


 軽いノリだが、真面目な話題に移る。クルメトは少し悩む様子を見せたが、すぐ柔らかい表情に戻して、今日の話を続ける。


「タイカルとは話せた?」


「......あ、あぁ! 良い奴だったな。ちみっこくて可愛かったぜ (最大級の罵倒)」


「へえ。それはよかった。実は、私はタイカルとは最初あまり話せなかったんだよね」


「そうなんだ。先生が...... 意外」


 タイカルは一番最初の転移者なので、クルメトとはそれなりに長い期間居たはず。クルメトに話しづらい点があるとは思えないし、疑問だ。


「話しかけられないっていうと大袈裟だけどね。最初は私たちが転移者にどう接すれば良いのか分からなくて、タイカルの方も萎縮していてさ」


 なんかイメージつくな。俺もいきなり異性と同じ屋根の下でビビったし、タイカルならもっと空気に付いて行けていない気がする。


「私は普通に話しかけてましたよっ。タイカルも、10回目ぐらいで名前で返してくれたんだ♪」


 ミゼは良い意味で何も考えていなかったようだ。ギクシャクとかしていなさそうで良かった。


「あははっ、ちょっと慎重にしすぎていたかなぁ。その後はレアちゃんも来て色々あったから、全体的にはあんまり話せなかったんだよね......」


「なるほどね。分かる分かる。別に話す機会は幾らでも残っているけど、初対面であんまり話せないと、なんか悔しいよな」


「そういう意味だと、キキョウの初対面は今のところタイカル以外全員悔しい結果なの?」


 あー。ミゼは異世界転移後の目覚めた瞬間で、初対面とか考えていなかったな。クルメトも最初はキャラ掴めなかったし。あと髪色が特殊でビビったわ。


「ミゼとクルメトは仕方ないかな。でも、別に後悔とかはない。あれはあれで新鮮だったし」


「ユズは?」


「一番意味不明だったな」


「天才すぎるからね。人はIQが違うとやっぱり不信感を覚えるらしいよ」


 実際こいつが一番強い設定も未だに納得いかないが...... それ以上に謎い性格だったな。図太いのか人見知りなのか分からんかった。急に俺の名前決めようとか言い出したし。


「ま、初対面が悪くても、それがこんな風に気の許せる関係を作ることもあるから、むしろラッキーって思っとけばいいんじゃないか?」


 この関係を築いたのは、同性だったり思考回路が似てたりとかもあるが、初対面の酷さからの対比で良く感じたのもあるだろう。所謂ギャップだ。


「ふふっ、そうだね。ポジティヴで良いと思うよ」


「あれ、なんか立場逆転した。まあいいや。ご馳走様! 俺はお先に部屋に。今日趣味見つけたから、篭る」


「なになに、なにをするのっ?」


「内緒だ内緒。何ヶ月かしたら分かるかもな」


「え、長い。忘れちゃうよっ」


「大きい音出さないようにしてね」


 趣味とは今日見つけた爆薬についてのことだが...... ユズにはバレていたか。指サインを送っておく。防音効果のある結界魔法を使うつもりだ。


「あ、待ってキキョウ。私も行っていい?」


「え。別にいいけど、どうかした?」


「少しだけ話したいことがあってね」


 俺はクルメトを部屋に入れた。見られて困るようなものは無いし、信頼もしているため、抵抗はない。意識はしてしまうが。

 作業机の椅子をクルメトに渡し、俺はベッドに座った。そして話が始まる。


「それで話なんだけど...... さっきのトーララオンの数。本当?」


「本当だぜ。大変だったけど、なんとか対処できたんで問題はないはず。もちろん怪我も無い」


「ほっ。ありがとう。心強い」


 対処したというか殺したわけだが、他に被害が及ぶよりはマシだろう。


「それで...... えーっと、危険だよね」


「言いたいことは分かる。明らかにあの高さではおかしいってことですよね。そんなシビアな世界観だったっけかなーって」


 あの数に囲まれたら、普通の人が一人なら死ぬ。しかし、今までクルメト院で過ごしている中で、治癒魔法で完治する程度以上の怪我をしている人は誰一人来なかった。もちろん、村長でもあるクルメトに訃報が来ることも無い。


「私、山に何かあるのかなって思ったんだ。それで悪いけど、調査をお願いしてもいいかな......?」


「同意見。任されましたぜ」


「ありがとう! 助かるよ!」


 俺は最初から行くつもりだったと思われるぐらい快く即答した。本当は面倒だから行きたくなかったということは全然無い。

 そこで、ドアが開く音がした。タイミングを狙っていたのだろう。ユズがひょっこりと現れた。

 ドアをちゃんと両手で閉めると、壁にスマした顔でもたれかかる。


「その話、僕も聞きましたよ」


「ユズ...... 盗み聞きしていたの?」


「あれ、酷い。せっかくカッコいい台詞が言えたのに」


 思ったような反応が来なくて不満そうだ。残念ながらイケメンをやるには背が足りなさすぎる。


「どうしようか...... 巻き込みたくなかったけど......」


「安心してください。僕がたかが調査で死ぬわけないでしょう?」


「これで呆気なく死んだら、墓場に死亡って書いた旗立ててやるわ」


「死亡フラッグってね」


「「あはははは」」


 クルメトはジトーっと俺らを睨む。可愛い。ふざけている俺たちとは違い、真面目に考えていると思うと、少しだけ申し訳なくなった。

 たしかに気持ちは分からなくはないのだ。ユズは幾ら強くても見た目は子供。言うならば大人は本能的にユズを心配しないといけない。


「山登りで怪我する子は結構多いんだよ」


「ごめんごめん。ユズは俺がしっかり見ておくから。安心してくれ」


「......うん。ありがとう。たしかに、私が行くよりは安心かな」


 クルメトは笑って言った。信頼されているようだ。


「あ」


 ユズが声を漏らし、俺が見ると「しまった」といった感じで目を逸らす。


「どうしたの?」


「いや、大したことじゃないよ......」


「なら言えよ」


「......」


 ユズは軽く舌を出しながら、申し訳なさそうに言った。


「キキョウは足手纏いだから来るだけ邪魔って言おうとしていたけど、言えない雰囲気になっちゃった」


「え。ぶっ飛ばすぞ」


 普通に傷つく。俺そんな風に思われていたのか。


「というわけで、お留守番よろしくね。危ないし迷惑だから、一人で魔法の練習しちゃダメだよ。あと先生に迷惑かけないでね」


「おまえは母親か! ふざけんじゃねぇ! 俺も行く!」


「要らないよ。足の速さが違うから無駄に疲れるし、ご飯も3倍必要になるし、キキョウの好奇心にいちいち付き合っていたら日が暮れるし。

 キキョウが仮に本当に僕の後ろを歩くだけだとしても、暇なだけだよ? 僕がいないんだし、クルメト院でミゼの相手してあげてね」


 くっ、反論できねぇ。うぜぇ......


「ユズ...…」


 子供に諭すようにクルメトは声をかけたが、その先は続かない。


「キキョウはどうしたい?」


「え、そこで俺に振る? うーん......」


 実際、多分大丈夫なんだよなぁ。というか、大丈夫じゃないとしても俺らができることって少ないわけだし。とはいえ心配しないのも大人として如何なものか。


「魔力を半分以上残して帰る。一回一回経過報告する。あと万が一の時に助けられるよう、帰る時間を決める。高くは行きすぎない。とかかなぁ」


 要はユズが無理しなければ問題ないわけだ。これなら危険地帯に踏み込めないし、俺らとのコミュニーケーションもちゃんと取ることができる。


「慎重だなぁ。まあ別にいいよ。必要な妥協だと思うし」


「そうだね...... じゃあ、そうしようか。細かくは明日決めよう」


「後はクルメトに任せるけど、ちゃんと言うこと聞けよ?」


「はーい」


 そうして、ユズは次の日から、一人で山登りを始めた。

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