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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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41話 好戦的

「おー、すげぇ!」


「......クルメト院の方が広かったわイタッ」


「意外とちゃんと仕事しているんだなぁ」


「先輩達はオレをなんだと思っているんですか?」


「「チビ」」


「相変わらず仲良いっすね!!!」


 フィルクと殆ど身長が変わらないタイカルはおいといて、俺らの家が完成だ。ここに住む人は、この3人に加えて、ユズとレア。本当はキュリアも入ると思っていたんだけどなぁ...... まあ悲しくなるから思い出さないようにしよう。

 しかもユズは未だ帰ってこないし、レアとは仲直りできていないし。実は意外と大変?

 ユズとキュリアはどうしようもないけど、レアは今からでも対処できる。荷物移したりとかするだろうし、今日中に仲良くなれるといいな。


 というわけで、タイカルの家の前へ荷物を運ぶための手伝いに。棚やテーブルも劣化しないよう新しい家に移すそうだ。筋力平均のタイカルがと女児1人じゃなかなか厳しいだろうと思い、善意で...... なわけはなくて、実際はレアと話す口実を作るためだ。

 しかし、「ありがたいですけど、レアが許してくれるか不安。聞いてきます!」と俺らは玄関前に残された。


「なんでアタシが指図される側なのかしら。ムカつくわ。両方とも年下でしょう」


「残念だがタイカルはお前の1年上だぞ」


「え、本当?」


「ちなみに、客観的に見てもタイカルの方が普通に年上だからな?」


「世の中目が腐った人が多くて困るわ」


 フィルクの自己評価を聞いてみたいところだ。自分を大人だと勘違いしている姿はちょっと俺にも刺さる。

 おっと、ドアが開いた。


「あ、タイカル。どうだった?」


「ダメですって」


「あちゃー」


「・・・物体生成魔法。重力強化魔法」


「おいやめろ。天井が壊れるだろ」


 情報収集魔法かなんかを使っていたんだろうか。レアに死角からのダイレクトアタックを決めようとしているフィルクを静止する。フィルクは上目遣いで見てきた。

 俺が目を軽く逸らしていると、足音が中から聞こえてきた。レアが来てくれたんだろうか。


「......なんとなく魔力の流れを感じたから来た」


「ちょっと痛い目を見せてやるわ。いい?」


「ダメ。ごめんな、うちのバーサーカーが変なことして」


「......次やったら、殴って欲しい。そしたら信頼する」


「おっけー」


「......」


 あ、やべっ。答え間違えた。女子2人から冷たい目を向けられている。ブラフかけられたのかよ。これは反撃しないと舐められるな。


「でも実際、もうすぐ一緒に住むわけだろ? 遠慮しているわけではないと踏んで言うけど、手伝いを断られるのはちょっとな。ましてや理由無しで」


「......下着とかもあるし。嫌」


「そうか。そういう時期あるよな」


「......」


「......うん」


 タイカルが少し笑いを堪えた声を上げる。レアは気にせず続けた。


「最初から求めていない...... 私の荷物ぐらい何往復かすれば運べる......」


「テーブル運べるか?」


「......魔法使えば」


「ねぇレア、それってオレの力含まれてない?」


「......」


 図星らしい。俺が手伝えばタイカルが楽になる。レアが勝手に断るのはワガママだ。ただこれじゃ納得してくれない。俺は荷物を運ぶためではなく、レアと仲良くなるために来たんだ。もっと話さないと。


「別に俺は手伝わなくてもいいんだぜ? タイカルには悪いけど、こんな悪態つかれて気分最悪のボランティアなんて意味ないしなぁ?」


「......」


「ちょっ、先輩」


 レアは俺を睨む。俺が挑戦的に上から睨み返すと、レアは少し怯んで、話し始めた。


「......そもそも、なんで手伝うの」


「優しいからかな」


「偽善者......」


 あははっ、偽善っぽく見えただけで即決めつけか。こういうのが一番ムカつくんだよ。偽善でも何でも素直に感謝しとけと心から思う。


「......」


「キキョウ、やっぱりこういう相手は力で分からせるのが一番いいわ。後始末はアタシがする。やりましょう」


「タイカルを巻き込むことになるだろそれ」


「チッ」


 イライラしているなぁ。俺も人のこと言えないけど。帰ったらフィルクに何かしらのフォローをしてやらないとだ。でもその内容を考える前に、俺の溜飲も下げたい。


「......」


「あの、先輩。さっきからレアに向き合う気あります?」


 なんて考えていると、タイカルからやや怒りの意を込められた言葉を控えめに言われた。タイカルが流れを悪くするはず無いから、多分俺を助ける意図も入っている。


「一応俺なりには」


「その割にはレアへの態度酷くないです?」


 そういうね。でもそれは仕方ないだろ。だって......


「まあ、俺正直こいつ嫌いだし」


「言ったぁ! 本人の前で言ったぁ! やっっば!」


 仲良くできるならしたいとは思っているから、嫌いという表現は間違いだったかもしれん。正しい表現はどちらかというと嫌かな。これを言ったところで余計に現実味を増してアウトですけども。


「......帰ります」


「おい待て待て待て! そっちだってこの雰囲気をずっとは嫌だろ!?」


「もっと居ても悪くなるだけ」


「俺のせいかよ!」


「別にそうは言ってない......」


 どうにかして引き留めないと! 本当にこの雰囲気は嫌だ!


「ってかそうだよ。テーブル運びに俺の力があるとタイカルが助かるんだよ」


「......じゃあ、タイカルと2人で運べばいい」


「は?」


「私はもともと運ぶ気はなかった。キキョウさんが来てくれたおかげでタイカルは運べる。......以上」


 なんだよそれ。屁理屈が過ぎる。俺は攻撃しようとするフィルクの前に被さって、話を続けた。


「さっきも言っただろ、そんな態度じゃ運ぶ気起きねぇんだよ!」


「......お願いします。で、いいの?」


「チッ、よくねぇ」


「......テーブル1つ運ばれなくても、私は問題ない」


 問題ない? 6分の5でセーフってことか? とにかく、レアは俺が手伝うか手伝わないかに自分は無関係だと言いたいみたいだ。なら、それを否定すればいい。


「言っとくけど、例えレア以外の部屋にテーブルが運ばれなかったとしても......」


「それで何かしようって考えているなら、脅しているも一緒。......私がキキョウさんを信じられなくても仕方ない。......私のせいにしないで」


 くそ、正論だ。じゃあどうすればいいんだよ。何かメリットを提示して納得してもらうしか。


「なんか、なんかやってやるよ!」


「......要らない」


「俺が要るんだよ! いった! なにすんだテメェ!」


 フィルクから頭にチョップされる。珍しい、不意打ちで攻撃されたのはあの激戦の後では初めてだ。


「キキョウ、段々と主導権を握られているわ」


「おいそれ殴らなくても言えるだろ」


「え、貴方が言う?」


「うっ」


 痛いところをつかれた。とりま俺はレアに見えないようフィルクに電撃魔法を使い、考え直す。たしかに主導権を握られていたな。悔しいが、おかげで冷静になれた。


「さて、話を戻すか」


「戻さなくていいです」


「ちょっ、帰るな帰るな」


「腕掴まれるの...... 結構怖い...... 折られそう」


「あぁ、それはごめん」


「......キキョウ、もう少し威厳とかだせないの?」


 ぱっと手を腕から離したせいでフィルクから怒られた。仕方ないじゃないか、叱りたいわけじゃないんだ。


「うーむ...... そろそろ会話は飽きてきたな。疲れた。この前みたいにトランプやろうぜ」


「(......その時アタシ居なかった)」


「どうせ先輩が勝つじゃないっすか」


「(あ、キキョウが勝てていて良かったわ。流石に金髪2人は負けないわよね)」


「じゃあババ抜きとかでもいいから。殆ど運ゲー」


「(......少しやりたい)」


「やらないです」


「よし、もう今ここで殺してやるわ。覚悟しなさい」


「ちょっと待ってな。そろそろ爆発しそうだから処理してくる」


「よ、よろしくです」



 5分後



「大丈夫ですか? 言い合いし続けたあとに先輩の魔法弾で吹き飛んでいきましたけど...... ってか大丈夫じゃないですよね?」


「不意打ちが成功した。大丈夫だ、どこも傷んでない」


「いや先輩の体調は心配していないです」


 ふぅ、軽い心理戦だった。疲れた。


「フィルクの分身が潜んでいたりとかは......」


「隠密魔法で隠れているけど、そこら辺の木の裏見たら居ると思うぜ。でももう襲ってこないはず。なんか知らんけど帰ったらトランプ勝負が交渉材料になったから」


「なにゆえ?」


「さぁ?」


 そんな話はどうでもいいけど、レアが居ない。何故っていうか理由は想像できるんだけど......


「ってかレアは?」


「あ、中に居ますよ」


 ですよね。舐めていやがる。


「俺中に入っていい?」


「うーん...... 正直ダメ」


「でも言い方的に?」


「まあ入っても怒りはしません」


「じゃあお邪魔しまーす」


「!!」


 やっぱタイカルちょろいわー。扱いがフィルクより楽〜。

 はい、タイカルの家に入るのは2回目だし別に驚きはないんだが...... おっ、機織り機が置いてある。そういやミゼかクルメトかがレアは服作っているとか言ってたな。仲良くなったら今度なんか作ってもらおう。


「ってわけで、5分ぶり〜」


「はぁ......」


「ごめんねレア、断りきれなかった」


「恨む......」


 何も抵抗しなかったのに断りきれなかったとか抜かしてやがるw


「......」


「そういえば、今回俺は家主であるタイカルに許可をもらったから入ったわけじゃんか」


「まあまあツッコミどころは多いですけどそうですね」


「あの家って誰が家主になるんだ?」


「「・・・・・・」」


 沈黙。それぞれが思惑を巡らす。レアは勿論、タイカルも俺が家主になると色々と不満だろう。とはいえ俺もレアと無駄な争いをしないためにも家主になりたい。あと爆弾が暴発した時とかも自分が家主だったら気が楽だ。


「ここは一番年上の俺だy」


「ジャンケン」


「レアがジャンケンで勝ったらオレ達の居場所なくならない?」


「はい」


「はいじゃねぇ! 嫌だけど!?」


「オレもそれは流石に反対かなぁ......」


「......」


 あぁ、シュンってしちゃった。大人の権力に屈してしまったか若き芽よ。さて、俺とタイカルのバトルだ。意外とタイカルは口が回る。敵に回すと厄介だな。


「オレが作ったんだからオレの家ですよね? 先輩何もしていないじゃないっすか。オレは設計から製作まで携わっているんすよ。この家はオレが作ったと言っても過言ではないんです」


「おまえが作ったのは認めるけど、だからといってそれが家主にどう関係ある? 作ることと維持することに求められる能力は違うだろ。例えば俺はタイカルより遅く転移したのに、タイカルより知り合いは多い。つまりはコミュニケーション能力が高いわけだ。ご近所トラブルなどがあっても対処しやすいのは俺なわけ。

 他にも魔法の才や体力を比べると、俺の方が勝る。畑仕事とかの力仕事は俺の方が得意だ。つまり物理的に家を守れる。さっきのと合わせて俺は人からも自然からも守れるんだ。家主として文句あるか?」


「外側から守ることはできていても、先輩は内側から崩壊させる恐れがあります。その最たる例がレア! この平和で優しい村、周りに家が何もないこの立地、さっき言った利点は無いも同然。オレの方が家主としての安心感がある!」


「ならおまえにフィルクを制御できるか? どう考えてもレアよりフィルクの方が危ないだろ (正論)」


「忘れてたー!!」


「はい、言われた言葉そのまま返すぜ。タイカルの言っていた利点は全て消滅。俺にはフィルクを制御できること、その他諸々の能力がある。ましてや年齢的にも俺が上。家主としての安心感があるのはどっちだ?」


「先輩です......」


「じゃあ俺で良いか?」


「はい......」


 よし、長いプレゼン勝負で勝った! 意外とあっさり勝ててよかったわ。フィルクの存在でけー! フィルクが居なかったら、タイカルが言う利点全てにイチャモンをつけて年齢勝負に持ち込むとかいう、クソ面倒な方法しかなかったな。

 タイカルは膝をつき、レアは...... めっさタイカルを睨んでいる。フィルクを制御できないのは仕方ないことだから、タイカルは悪くない。

 どんな反応を見せる。どう対抗する。これはレアを懐柔するチャンスだ。無駄にはしない。


「あの......」


 よし来た。覚悟の目だ。俺に対抗する意思がある。


「もう一人、居ますよね」


「あぁ、そいつはレアよりも年下。以上」


「でもタイカルは尊敬している......」


「え、それは青少年としてどうなん。1.5倍だろ?」


「言葉の綾ですよ! 敬愛しているわけではないっす!」


 もう一人とはユズのことだ。うん、なんというか、理由は説明しづらいけど、そりゃおかしいよな。実務上は問題ないんだけどな? 流石に変だって。


「しっかりもので、クルメトとレア、そしてフィルクさんもその子を少し評価している。魔法も凄くてなんでもできるみたいじゃないですか......

 私もこの家に来る前に少し見たことあるけど、性格も...... 周りから見たら良さそう。安心感はあった......」


「いやいやそういう問題じゃなくね? もっとこう、根本的におかしいじゃん。3歳児がお父さんを肩車していたら、例えできたとしても構図的にやばいだろ?」


「それはちょっと違う気が......」


「うるせぇタイカル」


 どう納得させればいいのか。難しいところだ。こういう真面目な顔した女の子に合理性とは無縁の話を言われると、説得しづらいんだよ。


「悪目立ちしちゃうことは分かっている...... 表面上はキキョウが、事実上をユズ君にやってもらえばいい......」


「......」


 待っていよいよ説得できなくなってきた。どう反論すれば良いってんだ。嘘だろ? こんな子供相手に論破されるのか? 俺が? マジかよ。


「レ、レア。ユズはどちらかというと先輩の言うことを聞く方だよ? しかも善意から。結局はあんま変わんないんじゃないかなぁ。むしろ明確にフィルクを言い聞かせることのできる先輩の方がレアにとっては良いと思うけど......」


 タイカルはユズに家主になられるのは流石に嫌ということで、手のひらを返して俺の味方に。


「......フィルクはなんでキキョウが好きなの?」


「......」


「......」


「......あ、俺?」


「そうですよ先輩。実際なんで?」


「え、知らねぇし。フィルクに聞けよ」


「......」


 俺以外がフィルクに聞いても答えないと思うし、俺が聞くのは恥ずい。フィルクが自分から話さない限り分からないと思うが、あの厨二病がそんな繊細な話を好むとは思わない。

 フィルクを雑に追い出したからか、面倒なことになったなぁ。


「キキョウさんが聞けば...... 答えてくれると...... 思う」


「俺からフィルクに『なんで俺のこと好きなの?』って聞くのはヤバくないか? 別にアイツとそういう関係になる気はさらさら無いし」


「答えないなら、それでいい。聞いて欲しい......」


「だから答えるか答えないか以前に聞くのが嫌なんだって」


「......もし彼女が貴方の顔か雰囲気に好意を寄せているのなら......」


 俺は自他共に、レアでさえ認めるほど顔がいい。たしかにフィルクがそれに惹かれている可能性は無きにしも非ずだろう。


「そして、貴方が強いと勘違いしているのなら......」


 フィルクは俺のことを過剰評価している節がある。ユズよりも上だと直接言ってくるほどだ。それに惹かれている可能性は高い。

 それに納得がいかないのか、レアは強く言い放った。



「私がボコボコにする......」



 俺をボコしてフィルクにダサいところを見せてやりたいと。なにやら面白いことになりそうだ。

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