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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
3/49

3話 名前

 異世界転移して2日目。昨日の夜、分かったことがある。まず、俺とユズとクルメトは「クルメト院」という病院で過ごすこと。安直すぎて草。ミゼは隣の家で、朝からクルメト院に通い、夕食後くらいに抜けている。

 次に、俺の転移前の所持品が全て消え去ったこと。この前、炎魔法を使ったら服を焦がした。ユズに見てもらったが、流石に直せないとのこと。結構あの服カッコよかったのに......

 最後に、俺の顔だ。氷魔法と光魔法の応用で、ユズが鏡を作ってくれた。見てみたところ......


 イケメン。冗談抜きで、一目惚れしてもおかしくないぐらいのイケメン。何やってもイケメン。顔が良いのは本当にマジ感謝だわ。

 細かくいうと、薄めの茶髪のやや高身長で、目元は丸く、輪郭は普通。目は黒くて肌は白めだ。

 ただ、1つだけ解せないポイントがあったのだ。俺の髪のうち、何割かが緑色になっている。正確には、蛍光色の黄緑って感じの色だ。染めているのかと思ったが、触っても感触は変わらないし、水を使っても落ちない。

 どういう理由かはサッパリだが、個性になっているから許す。なんだかんだカッコいいし。


 で、朝食をクルメト&ユズ&俺&合流したミゼと食べ終わり、今日からは本格的に異世界生活だ。

 というわけで、まずはユズに魔法を教わろうということになった。魔力は時間が経てば回復するようで、昨日の夜には既に全回復していた。よく寝たので、体力も魔力もバッチリだ。


「今から、実は一番私生活で使う魔法、水魔法の授業を始めます」


「お願いしゃーす」


「ではまず、き... 君って年上相手だと言いづらいね。君さん、水魔法を使ってみてください」


 俺は右手を前に出し、水を流す。最初はドバッと出てきたが、調節すると量が少なくなった。ちょうどいい感じだ。


「うい。簡単です」


「よしよし。じゃあ、それを空中でキープしてみてください。物体操作魔法と僕は呼んでます」


 次にするのは水を浮遊させるイメージ。画像化が簡単だから、意外と簡単だった。


「なるほど。簡単です」


「じゃあ、それの温度を上げてみてください。これは加熱魔法とか火魔法とか、炎魔法とか。もう何でもいいです」


 次のイメージは、水を加熱...... 水を加熱するイメージって、あんまり湧かないな。色々やってみるが、なんか火が出てきたりするだけで、水の温度を直接上げることができない。


「先生、イメージがしづらいです!」


「水の中にある粒子を振動させるイメージで」


「先生、余計にイメージしづらいです!」


「うーん...... 水の中に、炎を作るイメージで」


「なんだそれ...... あ、できた」


 よく分かんないけど、水が結構熱くなった。そのまま温度が上がっていき......


「ま、空中で沸騰してる! 跳ねる! 熱い熱い!」


 耐えきれなくなって、お湯は落ちてしまった。なんというか...... 魔法難しい。


「アレだね、君さんは火魔法が得意なんだね。前の爆発とか」


「熱血系キャラってことかな」


「あ、そう。今までの経験とか、信念とか、価値観とかが魔法には影響してくるよ」


「え、じゃあ俺ガチの熱血系キャラってことじゃん。冗談で言ったのに」


 俺が熱血......熱血か? 別に熱血系とは限らないか。今までの経験、信念、価値観ね。あぁ、確かに思い当たる節はあるな。


「ユズの得意魔法は何なんだ?」


「あぁ...... 1番得意なやつは、結構特殊なんだよね。でも、他のも全部得意だよ」


「そんな自慢を言われても、何故か嫉妬の念が湧かない不思議」


「可愛いからね。この容姿と声」


「自覚はあったんだ」


「絶対将来有望だよね」


 案外ユズは腹黒いのかもしれない。純粋さしか見えない見た目なのに。まあ、でもそんぐらいの方がむしろ付き合いやすいってもんだ。


「俺もさぁ、見た目ヤバくない? かっこよすぎると思う。マジ惚れる」


「まあ、うん。たしかに」


「いやさ、俺初めてこの顔見た時、俺は異世界転移したって信じたわ。っていうか、もう転移前に戻りたくないわ」


「はいはい、すごいすごい。き... 君ってやっぱ言いづらいな。君さんは転移しましたよー」


 適当に流すユズ。ユズ的には、「君」と言うのは結構違和感があるようだ。まあ、普通に違和感はあるよな。俺も子供に君って言われると違和感がある。


「そろそろ、俺の名前を決めたいな」


「......後でね。今は魔法の練習。ちょっと移動して、火魔法の練習しよう」


「へいへい」


 俺らは火が燃え移らないよう草が無いところに移動して、ユズが魔法で薪を作り、火魔法の練習をする。


「絶対に爆発させないでね。一応結界魔法を貼っとくけど」


「結界?」


「うん、空間を隔てる魔法。結構難しいけど、慣れると便利だよ。今回は、魔力を通らないようにしてみる。応用すれば、魔力を通したり空気穴を作ったりできるよ」


「なんか凄そうだな」


 便利そうな能力だ。結界...... 異世界っぽい。いいな。ただ、イメージはしづらい。よく分からないが、俺には難しそうだ。


「僕の得意魔法の1つ」


「あぁ、性格が得意魔法に影響する。人を拒絶する的な?」


「いや、それより安全なところから確実に勝ちたいっていう意思だと思う」


「流石です」


 ということで、俺は安心して火魔法を使う。炎をイメージしながらも、威力は弱くするように。魔力を絞るというよりは、少しだけ出すレベルに......

 俺の想定通り、薪にはちょうどいい火がつき、魔力の消費もあまり感じない。いい感じだ。


「うん、上手上手。あとは...... 物体生成魔法とか? 足場や壁を作る魔法」


 そんなこんなで練習し、俺の魔力が尽きるまでに、

・水の生成 ・火の生成 ・治癒魔法 ・物の加熱&冷却

・威力の調節 ・物体生成 ・複雑な形の物体の生成

・色々な性質の物体の生成 (粘土みたいなのとか)

・物体の操作 ・魔法弾(エネルギーを操作して爆発させる)

・光魔法 ・同時に色んな魔法を使う


 これらをできるようになった。ユズいわく、

「相当の魔力量だよ。多分、僕の半分を超えてる」

とのこと。魔法を上手く使うことで、さらに魔力の消費を抑えられるらしいが、それは練習あるのみらしい。

 今のところ得意な魔法は、炎魔法と光魔法、治癒魔法、加熱魔法、魔法弾の5つだ。特に炎魔法は楽しかった。


「ふぅ...... 疲れた」


「飲み物とか要る?」


「じゃあよろしく」


 ユズはクルメト院から幾らかの果物とコップを飛ばし、それを絞った。100%のフルーツミックスジュースだ。飲んでみたけど、やっぱり美味しい。

 センキューとお礼を言うと、ユズは満足そうに微笑んで、絞り終えた果物にかぶりついた。


「いやそれは食べるものじゃないだろ」


「皮も案外美味しいよ。この村だと、捨てるっていうのも難しいし。自然環境的に」


「硬くない? カミカミしているだけで食べれてないじゃん」


「ゆっくり切りながら食べているから、実は結構食べれている」


 なんだそりゃ。そこまでするぐらいなら燃やせよ。そんなんで自然環境にどう影響するよ。


「ふぅ、満腹中枢の味がする。甘い」


 ......本人が良いなら良いんだけどさ。


「日本語になってねぇな」


「あはは、実際日本語じゃないしね。君さんは日本ってところに住んでいたんだよね。どんな場所か覚えている?」


「なんか五月蝿くて、人間関係がダルかったってのは覚えてる」


「き...... 君って本当に言いづらい! 君さんの顔だと、周りの人は寄り付いてくるだろうね」


 イケメンだろとドヤ顔したい気持ちは置いといて、ユズが毎度 君 と言う度に詰まっている。そろそろ鬱陶しくなってきた。


「なぁ、やっぱ名前決めようぜ? 俺的にも面倒だし。君が定着する前に、とっとと名前を決めたい」


「あぁ...... うーん...... 先生とミゼが一緒の方が良くない?」


「んじゃクルメト院に戻るか。まだ居るよな?」


「うん。まだ僕コピーしてないから居るはず」


 ミゼとクルメトは、本当はこっちを見たかったらしいが、この村の他の家に俺 (転移者) が来たことを知らせる必要があるので、クルメト院に籠ってポスター的なものを書いている。

 あの2人は、村の中心的な立ち位置に居るらしい。ユズが俺を超上手く模写して、クルメトとミゼで見た目以外の情報を書く。

 それができたら、ユズが魔法でコピーして、ミゼがみんなに配りに行くらしい。元気に動き回るミゼと、上手くまとめるクルメト。2人とも村の人と仲が良いため、適任と言えるだろう。


「ただいま〜」

「ただいまー」


「あ、おかえり〜。長かったね〜」


「おかえり。こっちは順調だよ。そっちはどう?」


 ユズが色々クルメトと話し、俺はミゼと配り紙のデザインを見る。B4ぐらいの大きな紙に、もはや写真な俺の容姿が真ん中に描かれていて、周りに箇条書きに情報が書かれている。


 記憶がない 名前も生まれた土地も、転移前のことは何も覚えていないらしい けど、知識は残っていて頭は良さそう 私達は君と呼んでいる ・・・・・・


 半分ぐらいが記憶喪失についてなのが気になるが、良い出来だ。


「異世界も思ったより凄いな。なんつぅか、文明レベルというか、ちゃんと進んでいる」


 学校も無いのに、ミゼとクルメトは頭いい。現代っ子だからといって、異世界人より技術力があると思い込んではいけなさそうだ。


「裏も見て見て! こっちは私が頑張ったからっ」


「裏もあるのか」


 紙を裏返してみると、映ったのは......


「ちなみに、表はクルメトが書いたの?」


「うん、師匠が書いた。私のは私のはっ!」


「えーっと......」


 小学生の悪戯書きみたいになってた。


「良いと思うぜ? こう、配色とか、凝ってる」


「でしょでしょ」


 デザイン性は良いんだが...... 俺の説明が適当。「目 緑色!?」とデコられまくった文字と吹き出しで描かれている。まぁいっか。うん。


「ドヤッ」


「そっちの話は終わったー?」


 ドヤっているミゼは可愛いが、紳士な俺はもちろんミゼに文句を言ったりはせず、ユズとクルメトの方に話を振る。


「あ、ちょっと待って! 先生、き...... 君さんの名前をつけましょう!」


「おぉ、私が考えていいの?」


「全然良いぜ。あ、もちろんミゼも。俺が気に入ったらだけど」


「やったー!」


 こうして、大喜利大会が始まった。


_________________________



「えーっと...」


「えるみゃん!」「テハ」

「かーりゃん!」「マダジ」

「にゃーたん!」「パ」


「パって何だよ()」


 こんな感じだった。異世界のネーミングセンスが無いのかと思ったが、クルメト...... ミゼ...... 普通に良い名前だよな。ってことは、コイツらのセンスが致命的に無いだけか。


「ユズもさぁ、狼狽えるだけじゃなくて何かアイディア言ってよ」


「えぇ...... なんというか、僕なんかの言葉で、き......みの人生を変えるのは抵抗あるっていうか......」


「別に気にしなくていいぜ?」


「分かったっ! チェアリンはどう?」


「せめてこれよりマシな名前を付けてくれれば」


 これで本当に酷い名前だったら、それこそ自分で自分の名前を考えるしか無いが、まあユズなら心配はないだろう。

 できるだけカッコよくて、でも自然で、言いやすくて馴染みやすい名前が良い。さぁ、ユズの答えは......


「......キキョウ」


「......キキョウ?」


 なんか不思議な名前だ。元の世界に居たかな、こんな名前の人。


「あぁ、いいねっ」


「うん、私も好き」


「悪くないな。どっかから取ってきたん?」


 軽い気持ちで言った言葉に、返答は3秒かかった。



「うん、僕の転移前の友達の名前」



 あぁ...... 俺が転移時に記憶を失っているから忘れていたが、ユズは記憶が残ったまんまなのか。


「なんか...... それでいいのか? ユズは」


「うん、良いよ。むしろ、僕がそうして欲しい」


「......」


 そうだよな、まだこんな小さいのに、友達と別れてしまったんだ。もう何日も経ってるとはいえ、やっぱりまだ悲しいだろう。


「ね。だからあんまり言いたくなかった」


「悪いな。けどこんな空気になったところで、俺らが何か言えるわけじゃねぇし。はいはい、空気入れ替えていこうぜ〜」


 俺が両手を叩くと、ミゼはユズから離れ...... てないな。ユズの右腕をガッシリと掴んでいる。まあいいや。とりあえず、しけった雰囲気は霧散した。


「話戻すけど、キキョウはもうキキョウで良いんだよね?」


「あぁ。実は結構好き。かっこいいし、言いやすいし」


 完全に空気が払拭できたところで、クルメトがこの会話を締める。


「じゃあ改めて、キキョウの名前はキキョウに決定しました!」


「パチパチ〜!」


 俺の名前はキキョウ。青年になって、新たな名前がついた。

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