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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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26話 麻酔の目

「お兄ちゃんお兄ちゃん、これ何?」


「それは隣の部屋に居る化物の服だよ」


「化物!?」


「安心しろ、今は俺の従属みたいな感じだ (ドヤっ)」


「おぉ......!!」


 赤と青のオッドアイをキラキラさせる。6歳と言っていたが、それなりに知力は高いらしい。

 魔眼については後で聞こう。今は現状の説明をした方が良いだろう。なにせ相手は急に転移してきたのだ。パニックに違いない。


「この部屋すっごいボロい! お兄ちゃんの部屋?」


「俺の部屋だけど、ボロいわけじゃないよ。これは木造建築って言うんだ。対称性はたしかにないけど」


「へー。あ、ザラザラする〜!」


 ザラザラしている壁にフィルクの服を引っ掛けるキュリアちゃん。......実はそんな戸惑ってない?


「キュリアちゃんは、寝る前はどこに居たの?」


「キュリアの部屋!」


「家には他に誰か居た?」


「一応居たけど、どうせすぐ来れるよ?」


 ......ん? どゆこと? 来れる?



「キュリアは転移したんでしょ? 知ってるも〜ん」



 ......え?


「え? え? 知ってんの!?」


「うん!」


「えーっと...... もしかして魔法の存在とかも知っている感じ?」


「うん! まああんまり使えないけどね!」


 片手拳で胸を叩くキュリア。この子頭いいとは思ってたけど、何? やっぱユズパターン? でも魔法使えないのか...... でも魔眼あるしな......

 考えても分からないし、一旦フィルクと2人きりで話す場を作るか。クルメトに相手しててもらおう。


「ちょっとだけ待ってて。人呼んでくる」


「化物!?」


「いや、うちの先生だ。化物は黒い方」


「黒い化物......!」


 フィルクにこの子を攻撃しないよう言い聞かせておこう。ワンチャンこの子が殺される。

 しかもクルメトの白髪と対比して黒いって言ったけど、黒いのは髪色だけっていう。多分この子、人型を想像していないよなぁ。厄災ガ◯ンみたいなのを想像していると思う。


「この子がキュリアちゃん。この人がクルメト先生だ」


「6歳です!」


「おぉ......! 可愛い......! 体調は悪くない?」


「うん! 大丈夫!」


「んじゃクルメト、キュリアちゃんを頼むよ」


「分かった!」


 クルメトがちょっとテンションが高い。まあこの年齢で小さな子に接する機会って少ないもんな。

 しかし俺は、可愛いとか言っている場合じゃない。フィルクの部屋に移動して、ベッドにちょこんと座っているフィルクに話しかける。


「おはよ。あの子も起きてるぜ。キュリアちゃんって言うらしい」


「おはよう。夜考えたけれど、転移者が5人もいると考察が難しいわ。目的がいまいち掴めない」


「目的? まあ俺はどうせ分からないからいいや。キュリアちゃんに変な誤解産みつけちゃったけど、泣かせないようにな」


「努力するわ」


 信頼性の欠片もない言葉だ。まあ俺がこう言っとけば、少なくとも殺そうとはしないだろう。そんなことより、話さないといけないことがある。


「......で、本命だ。あの子も魔眼を持っている」


「......さらに考察が難しくなったわ。どういう子? 会ってみたいわ」


 昨日転移について言ってから、多少他人に興味を持つようになったフィルク。おそらくこの非現実的な現象を、非現実で片付けはしない性格なのだろう。もしくは何か心当たりがあるか。

 ちなみに俺はって? 全然気にしない。理由とかどうでもいい。異世界転移ありがとうございます! って感じ。

 ただ、魔眼については興味がある。せっかく異世界に来たんだ。強い力を手に入れたいに決まっている。


「その前に、もう1つ。転移について昨日話しただろ? あの子は転移したことに自覚を持っているみたいだ」


「なるほどね。それなら少し心当たりがあるわ。魔眼のことも考えると、転移の神ケニエ様が関わっている可能性が高いわね」


 転移の神ケニエ様......? なんだそのいかにも転移に関わっていそうな肩書きは。


「なぁ、魔眼とか神とか悪魔とか天使とか、もう一回詳しく教えてくれないか?」


「......そうね。一応説明した方がいいわよね」


 ぶっちゃけよく分かっていない話、俺の敵or味方になりそうなやつら。しっかりと聞いておこう。


「どこから話そうかしら...... まずは1番大した存在じゃない天使ね。ぶっちゃけアタシともう1人以外雑魚ばっかだわ」


「えー...... 悲し」


「天使と大層な名前が付いているけれど、実際は神が死ぬ直前の人を助けて、そう呼んでいるだけよ。現在は6人ね」


「フィルクも死ぬ直前だったのか?」


「アタシとさっき言ったもう一人は、直接天使に任命していただいたわ。この2人が最初の天使ね。アタシ達天使は、全員神リアム様の加護をもらっているわ」


 つまり、天使は神様が作った組織名みたいなもんで、リアム様に仕えている(?) ってことか。フィルク含めた最初の天使2人は強くて、他が雑魚と。


「次は神様についてだけれど、正直あまり分からないわ。数は1桁後半ぐらいで、全員強いのは確実ね」


「フィルクより?」


「例外的に転移の神ケニエ様にはアタシ1人だけ仕えているけれど、一応アタシが勝てる...... のかしら?」


「まあやっぱそうだよな」


 フィルクを殺すのは不可能だし、負けなんて有り得ないよな。ってか、神2人に仕えているんだ。多神教だったのか。


「で、神様が与えてくれる恩恵が、加護よ。能力をただで得ることができるけれど、無制限で配ってくれるわけではないわ。どういう条件ならくれるのかは分からないけれど、おそらく重要なのは姿勢ね」


 魔眼はその加護の1つ。レアとキュリアちゃんが持っていて、俺の厨二心に微妙に突き刺さっている言葉だ。


「最後が悪魔。敵よ」


「1番大事なことなのに、そんな適当でいいのか......」


「大半の神様よりも強いわ。それ以外は情報が無いわね」


 まあでもなんだ。意外と単純なんだな。神と悪魔が対立。神の下には天使が居て、強さは想像通り。そこに加護っていうのが混ざるだけだ。


「あ、そういえば、もう1グループだけ言っておく必要があるわね」


「え、何? 今度は閻魔様でも出てくるの?」


「閻魔は架空の存在だわ。正直、大して心配する必要は無いと思うけれど、因縁は深いわ」


 大して心配する必要がないって、すごい適当な扱いだな。


「名前はディスア。アタシの分身の1人と、もう1人の天使を攫った組織よ。前言った、デカい幼虫を作ったアイツが居る組織の名前」


「何が心配する必要ねぇだよ! バチバチで重要じゃねぇか!」


 急にオリジナルの単語が出てきた。しかもカタカナ。天使2人を攫うとか、もうヤバそう。


「大したことはやってこないわ。ただ、もう1人の天使の方は、助けてくれると嬉しいわね」


 助けて欲しいってことは、もう1人の初期天使か...... しかもフィルクと違って分身等は無いと。


「え、それ大丈夫なん? 生きてるの?」


「あぁ、まあ...... 生きてるでしょう。多分」


「えぇ......」


 断言はできないのかよ。何故そんな余裕なんだ。俺的には、今のところ悪魔より悪質なんだけど。


「アタシの分身が捉えられているから、場所が分かるわ。あの山の頂上ね」


「え、フィルク1人じゃ倒せねぇの?」


「余裕よ。能力の相性もいいわ」


「んじゃもうフィルクが倒せよ。俺は虫操るやつ? なんて近づきたくねぇ」


「実践経験は大事よ。むしろ、そのためにわざわざ倒さずにとっておいたんだから」


 こいつ、要らんことを...... え、俺まだデカブツですら倒せないんだけど。無理くね? 相手はデカブツみたいな配下を何匹か持ってるってことだろ?


「まあアタシが結界張るから、虫も近づかないし攻撃も喰らわないわ。とりあえず倒しましょう!」


 この前まで倒すかどうかすら迷っていたくせに...... なんだろう。明確な強い敵が明かされた瞬間なのかもしれないけど、フィルクが変な反応するせいで好奇心も恐怖もない。


「さぁ、早速入りましょ! 自分の虫で体の中を満たしてあげるわ」


「なんか微妙にテンション高くない?」


「アイツ嫌いだったから、正統に殺す理由ができて良かったわ」


「そうなんか......」


 多分前までは倒していいのかどうか分からなかったけど、俺が参戦することで何故か知らんけど躊躇する必要が無くなったんだろうな...... ドSな表情浮かべてるもん。


「まあ、じゃあ...... 行こうか。爆薬とか持っておいた方がいい?」


「うーん...... 欲しい、アイツの耳の中に詰めてみたいわ」


「残念だけど木屑とかに染み込ませて使うタイプだ」


「じゃあ素直に服にぶっかけましょう」


 相当恨みが溜まっていたんだろうな...... 何が有ったかはあえて聞かんとこう。はぁ、なんでこんな人殺しが俺に懐いたんだろうな。寝首かかれない?


「あとは食事ね。白髪の人に頼んでくるわ」


「行ってら〜」


 ふぅ...... あれ? クルメトって今、キュリアのところに居るよな。じゃあ俺も見に行くか。


「よう、これがさっき言った黒い化物だ。名前はフィルク」


「化物?」


「え...... このお姉さんが化物なの?」


「うん、気をつけてな」


「こら、怯えさせないでよ」


 フィルクを化物と呼んだことではなく、あくまでキュリアちゃんを怯えさせたことを怒るクルメト。誰にでも優しいけど、やっぱ無意識下でフィルクのヤバいオーラを感じとっているんだろう。


「まあいいわ。貴方、その目について何か知っているかしら?」


「知ってるよ! この目に魔力を込めると、見えた相手が眠くなるんだ〜。魔力を込めなくても、多少は使えるよ?」


「ずっと見続けたらどうなるの? 永眠する?」


「うーん。そしたら魔力が切れちゃう。キュリアの魔力じゃ、1日に5分も使えない」


「なら、アタシにやってみなさい」


「うん! 分かった! 魔眼『アネスシーザ・アイ』!」


 キュリアの青い目が光る。そして約5秒ぐらい経って、ふらふらしていたフィルクが自分の服の上にバタッと倒れ込んだ。


「おぉ、すごい......!」


「アネスシーザ...... 麻酔だっけか」


「そう、ちょっとやそっとじゃ起きないよ!」


 良い能力だ。攻撃はもちろん、逃げる時や防御する時にも大いに役立つだろう。いいなぁ、すごい欲しい。

 あ、良い八つ当たりを思いついた。せっかくだしやってみよう。


「誰か広めのお皿持ってない? 水入れて顔つけてみようぜ!」


「キキョウ、そんなことしたらフィルクが死んじゃうよ......」


「死にそうだったら起こすさ。実験は好きだろ?」


「まあ...... うん....... 気になる」


「じゃあキュリアが作る!」


 キュリアは物体生成魔法で皿を作り、水魔法で水を入れた。恐る恐るフィルクの顔を持ち上げ、ゆっくりと漬ける。

 そして2分経過。いつ持ち上げればいいか分かんなかったけど、多分もう死んでる。


「なるほど...... マジで起きねぇ。めちゃくちゃ強い能力だな」


「え、え、大丈夫なのこれ?」


「あれ? キュリアは起きると思ってたんだけど......」


「ウ゛っ!? ぷはぁ!」


「あ、本当だ起きた。よく耐えたな」


「けほっ、けほっ、けほっ。はぁ、はぁ。最高4分ぐらいは行けるわ」


 クルメトから「ごめんね」と差し出されたタオルで顔を拭く。フィルクも凄いけど、やっぱそれでもキュリアの能力が無茶苦茶強いな。2分も眠らせることができたなら、実質勝ちだ。

 例えばもし俺が居る時に使ってもらったら、寝ている隙に後ろから首を折るだけで簡単に勝ちが狙える。


「この能力すげぇな。良い戦力になるんじゃないか?」


「まあ能力としては良いわね。問題は、こんなチンチクリンがちゃんと戦えるかどうかだけれど......」


「お兄ちゃんたち、今から戦うの?」


「あぁ。今から山に入るよ」


「あの、戦うってなんか物騒だよ? なにか危ないことするなら、事前に言ってね?」


「特に危ないことはしないしない」


「へえ......!」


 あ、やべ。見知らぬ土地で知り合った人に山に行くなんて言われたら、もし俺が小さな子供だったら、絶対こう考えるよな。



「じゃあキュリアも行きたい!」



 ......まあいっか。強そうだし。


 こうして、地獄の山登りへの参加者は着々と増える (笑)

(笑) 実はこの作品で初めて使ったかもしれない。

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