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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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25話 新たな転移者

「ようタイカル、早かったな」


「朝からずっと頑張っていましたからねー! で、他に言うことは?」


「いい感じに仕上がってるだろ? やっちゃえタイカル! ロリコンとしての意地を見せグハァ!」


 タイカルにガチ顔面パンチを貰った。それもそのはず。レアはさっきの香水と爆発で満身創痍&微妙に変なテンション。多分、俺が女にモテそうな香りを意識して魔法使ったから、そういう効能も混じっていたんだろう。

 俺も服が軽く破け、全身がズキズキと痛んでいる上に香水の匂いで頭もクラクラしている。そして全ての元凶であり問題児のフィルクは、俺によって正座させられていた。

 つまり今はこういう構図だ。タイカルが仁王立ち。俺は足が痛いため体育座り。レアは戦死を遂げたように横になり、フィルクは俺の後ろで正座。カオスとはこのことだ。


「はぁ、で、なんで入ったんです? ちょっかいをかけるため?」


「フィルクがちょっかいをかけるために入って、折れたレアが俺も一緒に家にあげてくれた。フィルクはグレーで俺はパーフェクトホワイト」


「本当?」


「......後半が違う」


「いえ、合ってるわ」


「2:1だ。つまり俺らの方が正しい」


 ナイスフィルク。チョロいことだけが取り柄のタイカルだ。2人で強く言えば折れるだろ。水掛論に持ちこんであやふやにしてやるぜ。


「この人今、『チョロいことだけが取り柄のタイカルだ。2人で強く言えば折れるだろ。水掛論に持ちこんであやふやにしてやるぜ』って思っている......」


「なんで一語一句正しいの!?」


「よし先輩、ギルティー」


「あ」


 うっそ...... 納得いかねぇ...... なんだよ今の、心読んだのかよ。俺やユズですらできねぇぞ。理不尽だ。


「本当にさー、そういうのされるとさー、真面目に困るんですよねー」


「はい、すいません」


「ただでさえ前回、最悪の出会い方をしたんだから、もう少し挽回しようとは思わないわけ? 言っとくけど、レアは特段人を嫌うわけじゃないからね。嫌われているにはそれ相応の理由があるの。たしかに先輩も強めの反撃喰らって痛そうとは思うけd」


「痛っ」


「......」


「......」


「え、今の何?」


 フィルクが急に声を出した。しかもあのハイパー無表情で痛みに強いフィルクがだ。


「あー、ちょっと...... 一瞬この分身から意識を逸らすわ」


 ......やっぱ山になんかあったのかな。


「あ、そうだよタイカル! こんな引きこもりロリのことは放っておいて、今アクティブショタがなんかヤバそうなんだよ!」


「なに対比使っているんすか。もうレアは心身共にボロボロですよ」


「気にしないでいい......」


 なお側から見たら3人の中高生によるリンチにしか見えない模様。金髪と茶髪と魔女衣装だし。俺とフィルクは立ち振る舞い的に不良だ。


「正直コイツがどうなろうがどうでもいい。それよりユズがなんかヤバそうなんだよ! 何がかは知らんけど!」


「知らんのかい。え、で、今フィルクの分身が向かっているっていうことです?」


「そうそう。何が起きてるんだフィルク?」


「あぁ...... 特に大したことじゃないわ」


 絶対嘘じゃん。え、何? フィルクですら言いづらいことなの? ユズもフィルクも言えない呪いにでもかかったの?


「まあ、うん。彼なら大丈夫だと思うわ。寝落ちとかしない限りは命の危険は無いはず」


「逆に寝落ちしたら命の危険あるのかよ。絶対ヤバいじゃん。え、なんで言えない?」


「言ってもおそらく意味がない。むしろデメリットがあるわ。それだけ」


 なんかフィルクが見たことない反応している。すごい論理的に返された。え、何があるんだろうすごい気になる。


「せめて、なんで意味がないかとか、どんなデメリットかとかぐらいは言ってくれよ」


「行ったところでキキョウじゃ力不足。労力と時間を使った上、足手まといだと気づいて精神をすり減らすわ」


「辛辣だな。役に立たないっていうのには何も言わないとしても、それで落ち込むほど柔じゃねぇよ」


「そうね。後半のは半分詭弁よ。けど、精神が削られるというのは嘘じゃないわ」


 タイカルが興味深そうに聞いている。どういうことだ? 合理的なフィルクがそういう心理的な考えで動くとか。ってか、俺が精神的にキツイなら、ユズはもっとヤバいよな。


「やっぱ全部話せ。覚悟しとけば辛いことは乗り越えられる。それよりユズの方が心配だ」


「......」


 フィルクはしばらく悩んだ後、渋々といった感じで了承した。


「・・・明日、もう一回山に入りましょ。今度は壁の中まで」


「よし乗った。タイカルは行くか?」


「あ、はい。じゃあ行きます。ユズが心配だし」


 タイカルと一緒にいれば気持ち的にも楽だ。巻き込むのは悪いが、ここでハブるほど俺は優しくない。

 なのに......


「貴方には来ないで欲しいわ。迷惑」


「酷くない!?」


「草。別に良いだろ。俺は来てほしいぜ?」


「じゃあ来なさい」


「すごいムカつく......」


 フィルクの容赦のない言葉。今のはちょっと可哀想だった。


「......待って。私も行かない方が良いと思う......」


「なんで!?」


「この人たちに迷惑......」


「え......?」


 まさかのレアから追撃が入った。やっぱ可哀想より面白いが勝つな。ドンマイタイカル。


「ほら、レアはタイカルに危ないところに行って欲しくないんだよ。喜べロリコン」


「オレはロリコンじゃないっすからね? それに絶対違う理由でしょ。この引きこも...... レアがそんなこと言うはずがないです」


「あ、タイカルもやっぱりそういう感じなんだ」


 タイカルはレアに好かれていると思っていたが、別にそういうわけではないらしい。流石に俺らよりはマシだと思うけど。


「俺としてはタイカルが居てくれた方が嬉しいんだけど......」


「しゃーなしね」


「おっけ。明日の午後ここで集合な」


「え、ここですか?」


「別に良いだろ。少しは同居人らしく仲良くしようぜ?」


「うん...... まあ...... たしかにね。レアはいい?」


「仕方ない......」


 俺はこの時、まだ知らなかった。レアとフィルクが、タイカルが山に入るのを止めた意味を。


___________________________



 そして今日の出来事はこれで終わりではない。山入って壁を見つけて、レアとフィルクが知らぬ間に激闘を繰り広げ、香水魔法と消臭魔法を覚え、そしてレアと少し話せるようになった。

 どれも無駄に強烈な出来事だが、そのどれよりも印象に残る出来事。


 新たな転移者が発見されたのだ。


「見て見てっ、ぷにぷにしてる〜。可愛い〜」


 ミゼが転移者の子の頬を突いている。濃い赤紫色の髪をした小さな子が、クルメト院のベッドで眠っている。俺らが山やタイカルの家に行っている間に、村人から知らない子が歩いていると報告があったらしい。

 年齢はユズより低いだろう。ここまで行くとロリじゃなくて幼女だ。流石の俺でも可愛いと思う。ちなみに服は紺色ベースのゴスロリファッションだ。

 よく分からないが、眠ったまま転移した俺やユズとは違い、この子は起きたまま転移したのか。


「フィルク、なんかこのことについて分かるか?」


「転移するっていうのは、並大抵の魔力量じゃできないわ。アタシですら1メートルも転移できない。その上、障害物を完全に貫通して魔力を通す必要があるわ。従って、敵になったら怖いから殺した方が良いと思うわ」


 色々と何を言っていやがる...... 俺より強くて年下の魔法使いがこれ以上増えたらビックリだよ。こんな小さな子がそんなヤバいわけないだろ。ってか俺も転移者だし。

 俺も転移者だし...... 俺も転移者だし......


「あれ? フィルクって実は俺が転移者だって知らない?」


「は?」


 そういえば説明が面倒臭いからって言ってなかったな。


「記憶を失ったって言ったじゃん? それは俺が転移したからなんよ。知らんけど」


「......これはアレね。ドッキリというやつだわ」


「大丈夫、俺も1日目は生体実験だと思ってたから。その反応は分かる」


「え...... え? 必然?」


 懐かしいな。俺も最初は意味不明だった。もう完全にそういうの忘れて魔法世界にハマってしまっている。みんな性格も顔も良いし。

 けど1つだけツッコませてほしい。必然ってどういう返答だよ。


「俺以外にも、ユズやタイカル、レアもそうだぜ?」


「えぇ...... 貴方たちが一緒に住むことになる理由って、そういうことだったのね。もう少ししっかりと説明して欲しかったわ」


「あれっ、私とか言ってなかったっけっ?」


「よく分からなかったし興味なかったから聞いてなかったわ」


「キキョウとの差...... (´・ω・`)」


 ポカンとしているフィルクは置いといて、俺は新たな転移者をもう一度見る。もうそろそろ正統ヒロインが来ると思うんだけどなぁ。クルメト以外全員年下っていう。なんなら男でも俺より年上が居ない。


「熟睡って感じだな。これは起きそうにないな」


「私の部屋に移そうか。このままだと、起きた時に誰も居ないことになる」


「いいよクルメト。ユズのお守りで大変だろ?」


「お守りって......」


「俺の部屋に置いとくよ。ちょうどフィルクの服が溜まってるし、どうせなら有効活用したい」


「頭良いっ!」


「そう...... だね?」


 布団代わりである。まあ触り心地は良いし温度もちょうどいいから、良いんじゃねぇかな。


「待って。アタシが寝るところは?」


「この子と一緒に寝ればいいじゃん。抱き枕にピッタリのサイズだし」


「重いわ」


「んじゃ外行ってこい」


「......天井にくっついているわ」


「それはやめろ」


 結局、フィルクを別の部屋に追い出すことに成功した。起きた時にフィルクが居たら、この子も怖いだろうしな。

 フィルクの服が無限に散らばっているため、良い感じに2m×1mぐらいで敷き詰めて、そこにこの子を置いたら、上からフィルクの服を被せた。


「俺もこんな感じだったのかな......」


 もちろんフィルクの服に囲まれているっていう意味ではない。誰かも知らない人なのにパッと拾われて、ベッドに置かせてもらったということである。

 まあ別に大した仕事量じゃないけど、見ず知らずの奴のためにようやるよな。たしかに放っておいても問題だけど......


 本当、異世界に来てたった1ヶ月で、しかもその間に大変なイベントがありまくったっていうのに、すごい順応してきたよなー。

 実はまだ知り合いもレアやフィルク含めて6人しか居ないけど、魔法や言語も覚えてきたし、これから知り合いがドンドンと増えていくだろう。

 あれ、急に眠くなってきた......? まあ今日忙しかったもんな。......とっとと風呂入るか。



 そして夜、俺が異世界に来た初日の夢を見た。すっごいリアルな夢だ。もう慣れたけど、最初は名前すらもなかったんだよな。

 最初はユズも微妙に人見知り? みたいなの拗らせてて、パッと昼ご飯作ったのが初めてユズが凄いって思ったことで、俺が魔法で爆発して服が焦げた時も、頑張って直そうとしてくれてたんだよな。



「ん?」


 頬にぷにっとした感触があった。ってか、誰かに乗られている。


「あぁフィルク...... おはよう...... 今日ちょっとリアルな夢見てさー......?」


「フィルク〜?」


「......あぁ、思い出した。新たな転移者ちゃんか。俺はキキョウ。よろしくな」


 濃い赤紫色の髪に、赤色の右目とめっちゃ輝く紺色の左目。まんまるい顔していて可愛い。


「君のお名前は? 何歳?」


「キュリア! 6歳!」


 年相応のテンションと声。ユズもレアもこういう子供らしさっていうやつが無いからなぁ。見ているだけで楽しいわ。

 特にこの、赤と青のオッドアイと髪色が特殊で、なんか好き。ん? オッドアイといえば......


「......あれ、魔眼?」


 魔眼持ちの女の子、キュリアちゃんが現れた。

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