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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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23話 壁

「そういや、結局あのデカブツはフィルクとどんな関係なんだったっけ?」


「あの虫は敵のペットみたいなものだわ。量産型の」


「量産型じゃペットって言わないんじゃねぇか...... ってかアレが量産できるのマジ?」


「おそらくね」


 ユズと話して翌日。ユズに服を作ってもらおう計画は却下されたことをフィルクに告げたところ、フィルクも俺と一緒に山に内緒で入ろうと躍起になってしまっている。


「ってか敵って何? 悪魔?」


「いいえ、私情の敵ね。特に悪行をやったわけではないけれど、アイツは嫌いだから殺して良いわ」


「あぁ...... そうっすか」


 まあ、うん。俺らの山に変なことしてくれたんだから、懲らしめてはやろう。俺らを殺すつもりなら返り討ちにしてやろう。それでいこう。


「んじゃ今日の目標はソイツを倒すでいいか?」


「うーん...... それでいい...... わ?」


「え、ダメなん?」


「まあ、別に良いわ。アイツが生きてても死んでても大した影響ないし」


「うわっ、可哀想。価値なしじゃん」


「そうね。価値なしよ」


 とりあえず貶しまくったんで、山に突入する。今までと違ってフィルクが味方だから安心だ。

 山を登っている間、昨日のユズの様子についてフィルクに聞く。あの様子だと、ユズは何かを俺に隠していた。大したことじゃないかもしれないが、無理してそうで少し心配だ。


「ユズがなんか忙しそうだったんだけど、心当たりとかある? 俺には言えなさそうだったんだよな」


「さぁ? あの子が何考えているかなんて知らないわ」


「外的な理由も少しはあるだろ」


「それこそキキョウが山を破壊したからじゃないかしら」


「うっ......」


 それを言われると俺としては何も言えない。ただ、それだけでそんな隠すような事情が生まれるか?


「彼は要領悪いし、どうせ空回って事を大袈裟に感じているだけでしょう。キキョウが気に病む必要は無いわ」


「......要領悪い? ユズが?」


「? えぇ」


 なぜ疑問を持たれているのか分からない、といった感じのフィルク。俺からすればむしろ何故フィルクがユズを要領悪いと思ったのかの方が謎なんだが。


「ユズが要領悪いわけないだろ。どちらかといえば効率厨。アイツのおかげで、ものの一ヶ月で文明が100年進んだと言っても過言じゃないんだぞ」


「それは確かに化け物だけれど、言ってしまえば能力があれば誰でもできるわ。要領の意味を知らないの? アタシは能力を活かしきれていないって言っているわ」


「おまえさてはレスバ強いな?」


「最たる例は戦闘ね」


 戦闘か...... まあ確かにフィルク相手には苦戦してたけど、デカブツとか割とボコボコにしてたよな? フィルクからしてみれば能力に対して物足りないのかもしれないが、実質初の戦闘みたいなもんだし、子供が格上相手に時間稼ぎを成功させた時点で、相当胆力あると思うけどな。


「あの子、変な罠仕掛けていたじゃない?」


「あぁ、あれな。鬼畜のやつ」


「罠の質は良いのよ。毒ガスと洪水、踏むと電気が流れる地雷。あと何故か大木が雨のように降ってきて足止めされた後に粉塵爆発だもの。一日で仕掛けたにしては充分過ぎるわ」


 毒ガスは植物への影響が少ないようにしたユズお手製らしい。洪水は山の川をせきとめて、電気はもとから溜めていたそうだ。そして粉塵爆発に使ったのはある植物の粉。それらを一晩で罠に組み込んだとか、頭がおかしい。

 ついでに言うと、俺が気絶している間に罠の影響を全て解除したのも頭がおかしい。大木を降らせた方法とどう戻したのかについてはもう聞かなかった。知らん。


「けれど、全部中途半端だったのよね。特に電気は死ぬ威力じゃなかったし、そこだけ爆発の範囲から逃れていたわ。おそらくアタシを殺す気はなかった。電気は捕獲用。合っているかしら?」


「あぁ、うん、多分合っているぜ。知らんけど」


「そもそも、あの罠と彼でもニ週間耐えるだけで精一杯だし、アタシが向かって来なければ罠の意味がないじゃない。誰も一生村に入れないわ」


「まあそれは思った」


 ちなみに当時ユズは「相手がキキョウが言う通りの性格なら大丈夫だよ、きっと!」と言っていたが、俺もちょっと同意しちゃったから深くは追求できない。実際来ていたし。


「そこの中途半端に手加減しているところも嫌だし、加えてキキョウの『プリズム・サンライズ』の詳細を聞かなかったのでしょう?」


「あ、それについてはユズから『キキョウなんて精々魔法弾ドカーンぐらいしかできないと思ってた』と非常にムカつく回答を貰っております」


「確かにそれは非常にムカつくわね」


「でも、俺自身も『プリズム・サンライズ』の力知らなかったし......」


「関係ないわ。キキョウを見下したのかどうかは分からないけれど、結局彼は、キキョウを巻き込もうとしなかったのよ。これで友達って言うんだから愉快なものだわ」


 た、たしかにそう言われるとなんかムカついてきた!

 落ち着け。フィルクに正論言われて納得しかけてる。そんなことがあっていいのか? いや、良くない。こんな厨二病拗らせた倫理観のないガキに俺が言い負ける訳がない。

 な、なんとか言い返してやろう...... 結局フィルクはユズは良い奴なことにそれっぽく文句を言っているだけだ。俺はユズをそれで叱ろうとは思わないし、資格もない。


「そういう友達関係だってあるだろ。俺は確かにやや不満だけど、気付かずに何も言わなかった以上それは俺が悪い」


「彼は頭が良いから、きっとキキョウがアタシのようなことを言ってこなくて安心したでしょうね。相手が頭悪いことを理由に自分だけで全て抱え込む。それを知ってもなお庇おうとする。素敵な関係だわ」


「よし命令だ、黙れ(^^)」


「はーい」


 フィルクは思ったより口げんかが強かった。しかも性格悪いから一々嫌なところを突いてくる。もうフィルクとは喧嘩しない。次からは一方的な嫌がらせをしてやる。


「くそっ、微妙にテンション下がった。ってか今のところ、この山に大変な要素無いよな。若干ユズへの不信感が湧いてきたじゃねぇか」


「アタシのせいではないわ」


「フィルクのせいじゃないなら誰のせいだ」


「それもこれも全部小さな子供に戦闘させた人が悪い。つまり悪いのはアイツね」


「デカブツよりお前のほうが厄介だったんだけどなぁ」


「アタシは戦闘する気なかったわ」


「そうだったちくしょう」


 じゃあ一周回って悪いのは俺か...... いや、もういいや。悪いのはデカブツの主ってことにしとけ。自分のせいにしたって良いことないさ。全部知らない誰かのせいにすればいい。


「でも、本当にこの山になんか問題あるか? たしかに普段より生物が居ないけど、虫がなんかしているとかじゃねぇよな」


「特に危険性は無いわね。肉が取れないのは問題だけれど」


 ユズが言う通り生態系はぶっ壊れているけど、今のところ俺らに言えないような何かは無さそうだ。


「拡大鏡魔法」


「なにそれ。俺も使ってみよ。拡大鏡魔法」


 うわっ、なんか視界の中心が歪んで大きくなっている。きもっ。酔いそう。


「うーん...... ちらほら小さい虫は居るけれど、別に普通ね」


「何かいつもと違うかもしれないけど、派手な驚きはないよな。すっごい危機とかは感じない」


「地味ね。アイツぶっ倒してさっさと帰りましょう」


「だな」


 ユズが帰ってきたら問い詰めればいい。全く関係ないが、アイツアイツ言われているが、本当の名前は何なんだろう。


「......あれ? 千里眼魔法」


 フィルクが何かを見つけたようで、千里眼魔法を使って上の方を見た。俺もそれに続いて千里眼魔法を使う。


「......壁?」


「あの色、ユズという子が作ったものね」


 ちょっと加速して近づく。木で見づらいが、壁は結構広がっている。魔力を相当使うはずだ。


「何か起きてんのかな? 手伝ってやるか」


「えぇ、面倒くさいわ。彼に任せましょうよ」


「訂正。勝手に手伝わせてもらうぞ」


「しゃーなしね」


 壁のすぐ近くに来た。コンコンと叩いてみた感じ、中は空洞で結構薄いっぽい。ぶん殴ればおそらく壊せるだろう。


「でも...... この長さはヤバくね?」


 見る限りずっとこの壁は続いている。山を囲むように円状になっているのだろうか。いや、だとしたら幾らユズでも魔力が保つ気がしないが......


「ヤバいわ」


「ちょっと沿って歩いてみるか」


「そうね」


 壁に手をつきながら歩く。俺の感覚は基本的に鋭いが、壁の作りは均等でどの角度から見ても対称になっている。


 そして1時間後。


「はぁ、疲れた。やっぱり一面壁か。ユズってこんな魔力あったっけ?」


「どうかしら。彼の得意魔法は陰魔法だから、物体生成魔法は得意なはずよ」


「あぁ...... えーっと...... なんだっけ? 客観的で、あくまで陰に徹した魔法が得意なんだよな? 分かりづらい」


 フィルクから一応話は聞いた。ちょっと説明が難しいが、この世界では人それぞれに魔力の色というものがあり、例えば同じ炎魔法使いだと色は似ているらしい。

 あくまで大まかに分けた範囲の話だが、例えば炎魔法使いは炎の影響を受けづらいなど、魔力の色によって恩恵がある。

 その中でも陰魔法を使う人の魔力の色は特殊で、相当珍しいのだ。従って、普通の人とは違った恩恵があるらしい。

 陰魔法を使う人は、フィルクによるとこの世に二人しか居ないらしい。主人公かお前は。ずるいなー。


「要は地味な魔法が得意と思ってくれれば良いわ。物体生成魔法や結界魔法、隠密魔法や千里眼魔法など、魔法を発動しても対象には直接影響を与えない魔法ね。自分の冷静さを保つだけなら精神魔法もできると思うわ。例外的に治癒魔法は得意らしいわね」


「ユズの性格的に、治癒魔法は得意そうだよな。でもアイツ、槍魔法とか得意じゃなかった?」


「空気抵抗を消しているのよ。それもある意味では接触を嫌う技。陰魔法らしいわ」


 そういや爆発魔法を使った超速ダッシュも、大事なのは爆発魔法じゃなくて空気抵抗を消すこと〜とか言ってたな。


「結構応用が効くのな」


「あくまで彼は得意ってだけよ。抵抗を消すっていうのは難しそうだけれど、他はアタシもキキョウも大体はできるでしょう?」


「まあ......」


 たしかに、俺も炎系の魔法使いだけど水魔法だって使えるもんな。確かに陰魔法もユズが強い理由の一つだけど、結局は頭が良くて魔法の扱いが上手いってだけか。


「めっちゃ話逸れたけど、とりあえず中入るか。フィルク、飛べるか?」


「......」


「ん? どうした?」


「あぁ、いえ、割と早いペースで歩いたから疲れたわ」


「え、頑張れよ」


 なんだ急に。たしかにちょっと長かったけど、頑張れば行けるだろ。俺らに勝ったやつが何を言っていやがる。


「分身で360°と上空を確認しながら、この厳しい足場を歩いているのよ?」


「やっぱお前魔法よりスピードと体力鍛えた方がいいんじゃねぇの?」


 まあ頭と集中力は使うんだろうけど...... なんかムカつく。俺をあんなに困らせたやつがこんなんだと、自分の価値が下がったみたいでムカつく。


「頑張れよ。気合いで行けよ。息もあがってないじゃん」


「走れない理由があるのよ。男なら察しなさい」


「......あ、そういうね。カイロでも作ろっか?」


「生理じゃないわ。そもそもアタシは痛みに強いから気にしないわ」


 ......? やべっ、全く分かんない。え、なんか悔しい。この俺が女心を分かっていないはずがない。別にフィルクの靴もハイヒールっていうほど高くないし......

 服か? 実はめっちゃ重いパターン? いや、でもフィルク蹴ったことも殴ったこともあるけど、そんな重くなかったしな...... え、本当に分かんない。


「はぁ。考えてもみなさい。こんな服を着て一人で黙々と走る練習をしている姿を。ダサすぎるわ」


「そうだったコイツ厨二病だった。ってか前も言ったけど違う服着ろよ! 確かに可愛いしカッコいいし個性も付けれるけど、明らかに戦闘向けじゃねぇだろ!」


「実は軽くて通気性が良くて耐久性も高いわ。神様に作ってもらった服だから」


「そうだったのか......」


 ちょくちょくぶっ込んでくる天使設定。違和感がすごい。神様がこのデザインにしたのか、フィルクが頼んだのか、どっちなのだろう。


「じゃあいいよ。一瞬だけ壁の奥覗いて帰るか」


「どうぞ。補助はいる?」


「いや、大丈夫」


 俺は木をパッパと登り、身体強化魔法と物体操作魔法で壁の奥に飛び移る。着地地点には柔らかい物体を作っておいた。


「ほいっと」


 さぁ、何があるのかな......



「ん? 更地?」



 視界に映ったのは、茶色い土と葉が消えた大木だけだった。俺の『プリズム・サンライズ』の影響か? でも、花とかはともかく葉も苔も何もかもが完全に消えるなんてありえるか?


「うーん...... え?」


 俺の腕に大きな蝉みたいなのがくっついた。どこから来たんだ? ......なんか嫌な予感がした。

 俺はくっついた蝉を指で摘んで軽い爆発魔法で消し飛ばし、感じた違和感を払拭するため拡大鏡魔法を使う。予感は的中してしまった。


「......は? 何だこれ気持ち悪っ」


 土と完全に同化していたのは、小さな虫の群れだった。

 なるほど、これは確かにヤベェわ。


「......」


 あれ? 待てよ? ここは相当頂上に近いのに、なんでこんなにも小さな虫が湧いているんだ? 寒さで草も葉も無いから生き残れないはずだが。

 仮に寒さに強い虫が生き残ったとしても、俺の魔法で殺したはずだし、そもそも俺の魔法から一週間ちょっとしか経っていないのにこんな急に数が増えるはずがない。


「......デカブツ」


 そういえば、デカブツの周り、馬鹿みたいな数虫が居たよな。デカブツは頂上に住み着いていて、獲物を見つけても追いかけようとしなかった。

 あの巨体を維持するのに、あの程度の虫や木でなんとかなるはずがない。つまり、つまり......


 フィルクが言う「アイツ」は、頂上で虫どもを管理しているんだ。

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