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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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21話 魔眼の少女

 一緒に住む予定ということでレアちゃんに挨拶しようとしたら、断られたとの伝言をタイカルから受け取った。


「フィルク、質問だ。断られたなら?」


「脅すわ」


「惜しい三角だ。正解は何気ない顔して押し通す。突撃するから準備しとけ!」


「分かったわ!」


 というわけで、タイカルの家のレアという子に突撃することになった。もう既に退院許可は下りている。タイカルの許可は取っていない。けど、セーフだ!


「まあそもそもな、この上下社会において、家主でもないのに初対面とはいえ年上の入室を断るなんてあり得ないんだよ。正当性は俺にある」


「パワハラね」


「俺は現代っぽい価値観だからといて、盲信するのは良くないと思うんだよ」


「老害ね」


「あと害という言葉はカタカナで表記するのが現代風だと思うんだよな」


「言葉で言うならカタカナでも変わらないし、さっき言ったことと矛盾しているわ」


 と、和やかな会話が終わったところで、タイカルの家に着いた。


「あ、あれが俺らの家になる予定の家だ。意外と完成しているな」


「へぇ、意外と大きいわね」


 タイカルが工事現場でなんか頑張っている。俺とフィルクにはまだ気づいていないらしい。


「じゃあ今タイカル気づいていないし、こっそりドアを開けるか」


「えぇ」


「ドアを閉めたら、開口一番は『ただいま〜』な。できるだけ大きな声で」


「分かったわ」


 俺はドアを開けて、音が出ないようにゆっくり閉める。


「「ただいま〜!!」」


「!?」


 成功。俺らは借金取りのようにズカズカと足音を立てながら奥と進んでいく。特にタイカルの家で言うことは無いな。若干古いのか木の香りが良い。

 おっ、早速少女発見。この子がレアちゃんか。ボブカット風に調えられたキラキラと光を反射する黄色の髪。歳は11、12歳ぐらいだろうか。

 けど、なんというか、表情が微妙に暗い...... 左目に映るピンク色の輝きだけが、やけに強調されている。


「え? うわぁ!」


 魔法弾が飛んできた! 俺は受け身の体制をとり、フィルクは物体生成魔法で壁を作る。


「ちょっ、ちょっ、ちょっ、幾ら何でも酷くね? あ、不審者に見えた? タイカルの友達だから安心しt危ねぇ!」


 2つ目の魔法弾は、冷静に壁を作って防御する。何だコイツ、魔法弾の速度が俺よりも速い? ってか、威力も下手したら同じくらい......


「フィルク、攻撃はしなくていい。ただ壁だけはしっかり作っておいて」


「えぇ...... 貴方、加護持ち?」


「......」


 アンサーを拒否され、追撃の魔法弾が続く。5発、10発、15発......

 待てよ? コイツ、幾ら何でも連射が早すぎじゃね? 弾速も速ければ、連射間隔も短い。ユズはできるかもしれないけど、少なくとも俺にはできねぇ。


「フィルク、大丈夫か?」


「アタシは全然余裕よ。けれど、これはおそらくタイカルにバレるわね。音も大きいし、最悪この家が壊れるわ」


「あぁ...... タイカルに怒られるのは仕方ないとして、家をぶっ壊すのはヤバいな。結界魔法」


 俺は魔力が爆発に妨害されないようにしながら、レアを囲むように結界魔法を展開する。魔法弾は結界魔法に当たると同時に爆発し、レアは自分の魔法弾の衝撃波をもろに喰らうこととなった。

 ......どうしよう。なんか倒した。え、ごめん。全く狙っていないのに。なんなら攻撃する気も無かったのに。

 煙が止むと、明らかに涙を流したまま、レアが怯えたように座り込んでいた。


「あぁ...... えーっと...... 治癒魔法。大丈夫か?」


「......」


「いや、その...... ごめんな? 本当、悪いとは思ってるから......」


「......手」


「手? はい」


 俺は手をレアの前に出した。掴んで立ち上がるのかと思っていたら、レアはその手に触れることなく......


 俺の右手が吹き飛んだ。


「あ゛!? ん、ぐっ、治癒魔法!」


「大丈夫、キキョウ?」


「辛うじてくっ付いていてよかった。なんとかなりそう......」


 俺は右手に治癒魔法を使いながら、軽く後ろを向いたところで、死角から左手でストレートを打ち出した。狙いは骨折させても一大事にはならない肩。

 しかし、レアはそれを難なくかわし、距離を取る。フィルクは冷たい目をしてレアの方を向いた。


「......」


「キキョウ、彼女は殺していいのかしら?」


「ダメだ。一旦引こう。今は誤解を解ける気がしない」


「だそうよ。命拾いしたわね」


「......」


 オドオドとして俺らと目を合わせようとしない。躊躇なく殺すほどの攻撃を仕掛けてきた割には、か弱い印象を受けた。

 ......コイツの目、左目は綺麗すぎるぐらいに輝くピンク色だが、右目は黄色だ。こっちもあどけない感じで綺麗だが、なんというか、左目に比べて人間味がある。


「どうしたの? やっぱり敵対するの?」


「いや、ごめん。行くよ」


 俺らは一旦タイカルの家を離れた。


___________________________



「ってわけなんだよユズ! 俺らが悪いとはいえ、俺が普通の人間だったら最悪一生義手だぞ!?」


「やりすぎだとは思うけど、急に強そうな男の人が入ってきたら、まあ子供なら理性を失うよ。むしろ心臓を狙われなくてよかったじゃん」


「たしかに。心臓だったら1発だったな」


「そしたらアタシが守るわ」


「頼もしすぎる」


 夜遅く、普段は俺は寝ている時間だが、今回は同居人としてユズも関わってくる話だから、少し待っていた。

 ユズがなんで帰ってくるのが遅いかというと、山を治しに行っているからだ。日中頑張っているため、あまり帰ってくることはない。俺らと話すのは1週間ぶりだ。


「本当に仲良いんだね。先生は言ってたけど、ちょっと強調されているのかと思ってたよ。ビックリ」


「まあな。そっちも順調か?」


「誰かさんの爆発の被害が思ったより大きくて、ちょっとキツイかなぁ」


 山をぶっ壊した張本人2人がここに居ます。ユズに迷惑をかけすぎて、俺はフィルクを思いっきりぶん殴ることしかできない。

 ちなみに、クルメトがユズの体調を見るために毎度遅くまで起きているから、お互いの事情を話だけは聞いているはずだ。お弁当とかもクルメトが持たせているらしい。お母さんかな?


「レアちゃんと仲直りできる目処はあるの?」


「タイカルに結構怒られて、今はタイカルが説得中。今度は勝手なことはしません」


「アタシは仲直りなんてしなくていいと思うわ。いっそ殺りましょう」


「やっぱり味方になっても性根が変わるわけじゃないんだね......」


 ちょっと俺にデレたぐらいで、大した変化はない。むしろ少し図々しくなったまである。


「というか、地味に疑問なんだけど、よくキキョウのパンチを咄嗟に交わせたね。僕でも反射神経だけで避けるのは無理な気がするけど......」


「加護よ」


「......加護?」


 ユズの疑問に、食い気味に答えるフィルク。


「神様がくれる力、みたいな感じだったよな」


「あー、前ちょっと言っていたような気がする」


「えぇ。とりあえずそれだけ分かっていれば今はいいわ」


 フィルクの分身とかも加護の力らしい。


「その加護の内容だけれど、あのオッドアイ、ピンクの方は魔眼か何かね」


「魔眼!? 何それカッケェ!」


「考えられる能力の可能性は沢山あるけれど、何かの能力を司る魔眼であることは間違いないわ」


 魔眼...... なんか加護とか言う割には禍々しい字だけど、むちゃカッケェ。あぁいや、フィルクは厨二病だから、勝手に魔眼って名付けているだけか。まあそれ以外の名前もあんま思いつかないしな。

 オッドアイって良いよなぁ思っていたけど、そういうことだったのか。俺も欲しいな。


「魔眼かぁ。なんかカッコいいね。フィルクは加護を持っているの?」


「アタシの加護は分離と自己観察ね。自己観察は自分の身体の構造を完全に精密に理解する能力で、分身を作りたいと思って魔法を使えば、自動でアタシを再現してくれるわ。

 分離はアタシの精神を分けたり、物体を溶かしたりする時に使っているわね。一番の当たりだと思うわ」


「......なんか強くね?」


「それと才能強化の加護も貰っているわね。だからアタシは、貴方達より魔力量が多いと思うわ」


 フィルクの元々がほぼほぼ0な件。分身なし、一撃必殺なし、魔力少ない。逆に何があるんだ。


「何か勘違いされているかもしれないけれど、アタシは加護なしでも貴方達二人を同時に相手して完勝できるわ。この村の分身に割いている魔力は、全体の10分の1程度ね」


「はいはい。どうやったら加護は貰えるんだ?」


「神様が渡したいって思ってくれたら貰えるわ。加護は手伝ってもらうのに必要だから、今のうちに加護を渡したくなるような人になりなさい」


「......なんで素行が悪いお前が貰えたんだ?」


「さぁ? 可愛いからじゃないかしら」


 え、その理論だったら俺も女神様とかに貰えるかな。ちょっと期待しておこう。これは俺でも俺ツェーができるかもしれねぇな。


「ってか、あのレアって子も貰ってんのか...... 人の手首を不意打ちで千切るようなやつが......」


「アレじゃない? 更生のために力あげますよー。ぜひ世界平和のために使ってくださーい。みたいな」


「じゃあ俺ら絶対貰えないじゃん」


「自己評価の高いこと」


 これじゃ期待できないな...... 素直で仲間思いの俺には更生なんて程遠い言葉だ。ちくしょう、善人が損をする、そんなシステムが許されていいのか......!?


「真面目に答えると、努力だと思うわ。ひたむきに頑張る人を評価する。善か悪かを上から主観的に判別している時点で、アタシは嫌いだもの」


「え、なんかフィルクがまともなこと言っている」


「100人中99人に悪人と言われるであろう人が言うと、まるで説得力が違うね」


 意外と精神論が好きなフィルクであった。努力か...... 俺は努力できる方だけど、別に今の目標とかあんまないんよな。どうしよ。なんか頑張れる目標探してみるか。


「というわけで、加護を手に入れるためにも、アタシの手伝いを頑張りなさい」


「しかしそれだけは断る」


「チッ」


「あ、俺料理上手くなりたい!」


「それ神様が見ても、『こいつ飯テロしてくる!』としかなんないよ?」


「たしかに......」


 加護か。加護か〜。......やっぱ欲しいなぁ。1個貰えるだけで結構強くなれそうだもんなぁ。うーん......


「参考までに、何を手伝って欲しいか言ってくんね?」


「え、手伝ってくれるの!?」


 うぐっ、急に可愛い声出すじゃん。


「ま、まあ...... 場合によってはな?」


 期待の目で見つめてくるフィルク。......これで無理難題言われたら、どう断れば良いんだろう。


「じゃあ言うわね」


「『なんだってー』の準備は?」


「要らないわ。驚く要素はないし」


「じゃあ、どうぞ」


 溜めに溜めて、遂にフィルクの願望が分かる。フィルクは落ち着きを取り戻し、一回咳払いをしながら、強く言い放った。



「悪魔を倒して欲しいわ」

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