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Green Way 〜記憶を失って転生し、絶望を知る〜  作者: SS
1章 英雄の誕生編
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19話 戦いが終わって

「協力してほしいの」


「・・・」


「・・・」


「・・・ダメ?」


 めっちゃ上目遣いで可愛く聞いてくるが、言っている意味が分からない。とりあえずクルメトは空気を読んで一旦退いた。俺的にもそれは嬉しい。


「いやダメとかじゃなくて嫌だ。なんでわざわざ殺人鬼を手伝わないといけないんだよ」


「ちょっ、先輩! そんなこと言ったら殺される!」


「......普段の行いってやっぱり関わってくるものね。山の中では誰も殺していないのだけれど...」


「何言ってんだよ。俺らを殺そうとしてたじゃねぇングっ」


「本当、本当にうちの馬鹿がすいません! なんでも手伝います! いえ、むしろ手伝わせてください!」


「貴方の力は要らないわ。弱い」


「あ、すいません......(^_^)」


 ニコニコしながら退散していくタイカル。シュールだ。


「というか、アタシは別に貴方たちを殺そうとしていないわよ?」


「・・・え?」


 タイカルが変な声をあげる。何を言っているんだフィルクは。


「いや、今更それは無理あるだろ。最初から山に来いだとかなんだとか言ってたじゃねぇか」


「山に来て欲しかったから脅しただけよ。山に入っても死なないでしょう?」


「いや、俺普通に殺されそう...... 殺されそうに......」


「・・・」

「・・・」

「・・・」


「あれ? なってない?」


「はぁ!?」


 タイカルの怒号が響く。そういや、俺が殺されそうになった経験ってあんまないな。怪我らしい怪我も、デカブツと自爆が原因だったし...... むしろ治癒魔法まで使ってもらってたな。


「あれ、でも、デカブツに関わっているとかなんとか......」


「デカいブツ...... あぁ、アタシもそれを殺そうとしていたわ。けれど、貴方を見て、どうせなら実力を見ようと思ったの」


「え、ってことは......」


「アタシ、今回は普通に貴方たちの味方だったのよ?」


 ......マジかよ。


「え、え、本当に言ってなかった? 実は俺を殺すと言ってたとかない?」


「言っていたとしてもノリと勢いね。途中からどうやって殺してくるか楽しみにしてたわ」


「そ、そうだよ! 俺は殺そうとしたんだよ! なんで生きてんの?」


「あぁ、あの技ね。強かったわ。世界でもトップクラスね。けれど......」


 フィルクは立ち位置を変え、両手を腰にあて、決めポーズを作って言った。


「アタシ、この世界中に散らばっているから! (ドヤっ)」


「・・・というのは......」


「そう、この星にも分身を少し置いといたし、仮にこの星を消したとしても生き残っているわ!」


「......チートだそんなもん」


 そういや、フィルクを倒したら世界のTOP5とか言ってたなぁ...... 誇張でもなんでもなくそうだったのか......


「え、え、じゃあ、俺がやったことって全部無駄だったん? フィルクは敵じゃないし、放っておいてもデカブツは死んだし、ユズが悲しむも何もなかったし......」


「あ、あとついでに言うと、貴方が放っておいても、そのユズとか言う子が仕掛けた罠で、当分は近づけなかったはずね。ここに来るのも苦労したわ。彼が罠と一緒に頑張れば、まあ2週間は足止めできたと思うわね」


「......ユズ、いつのまに罠を設置したんだよ」


「夜は誰もいないから隠密魔法を使って村を見るけれど、必死に頑張っていたわね。彼が今寝ていなければ、もっと沢山の罠があったと思うわ。一番酷いのだと、木が上から沢山降ってきて、動けなくさせられた上に粉塵爆発が発生して、辺り一面が......」


「粉塵爆発!?」


「えぇ。ものすごい量の植物の粉が地中に埋まっていて、踏んだら永遠と爆発し続けるレベルだったわ」


「......俺がやったことの上位互換じゃねぇか」


「やった? 貴方も粉塵爆発を起こしたの?」


「・・・(チーン)」


 もはや認知すらされていなかった......


「......ww」


「ほらそこ、声を殺しながら笑うんじゃない」


「アタシなんか変なこと言ったかしら?」


「いや今のは100%俺...... タイカルが悪い」


「オレ!?」


 まあそんなタイカルいじりは置いといて、少し建設的な話をしよう。俺の傷はこれ以上抉らせない。


「で、協力してほしいとは何だ? お前嫌いだけど、俺もやりすぎたとは思ったから、内容によっては手伝ってやろうじゃないか」


「何故に上から目線」


「そうね。貴方には...!?」


 フィルクが何かを言おうとしたら、黒がかった青色の結界が、フィルクの周りに覆いかぶさった。


「だ、大丈夫キキョウ!?」


「あぁ... ユズか。その結界、解いていいぞ」


「え?」


「理由は後で説明するから。今は敵じゃない」


「......まあいいや」


 フィルクは内側から一瞬で結界を解いた。ユズはそれを見て、反抗する気が失せたらしい。


「一応全力の結界なんだけどね......」


「『黒き罪への白き天罰』は魔力の結びつきだって解けるわ。魔力は元々は気体だから、溶かしたら何も生まれないわね」


「......へぇ」


 ユズも少し落ち込んでいる。そういや、ユズもフィルクに負けてたな。万全だったら知らんが、あの奇襲みたいなフィルクの攻撃は効くだろう。


「えっと...... こんなこと聞くのもどうかと思うけど、どうやって生き残ったの? 80℃は超えていたと思うけど......」


「山以外にも分身を配置していたわ。以上よ」


「正確には、この星やこの星以外にも分身は配置してあるらしい」


「......チートじゃん」


「俺もそう思う」


 ユズにフィルクにでなんで年下2人の方が圧倒的に強いんだよ。おかしいだろ。


「じゃあ、なんで敵対しなくなったの?」


「あぁ、そう。実はフィルク、最初から敵じゃありませんでした。パチパチパチパチ〜」


「・・・は?」


 ユズが俺を見て目を見開いている。そんな反応になるだろう。あまり驚いていない俺の方がおかしい。でも、言われてみれば俺もフィルクは敵って感じしなかった。なんとなくで察していたんだろう。


「はいすいません。なんか雰囲気で勘違いしていました」


「・・・・・・ちょっと待って」


「1分までなら」


「2秒でいいよ。フィルクは最初から敵対していなかったってこと?」


「えぇ、そうね」


「山に来いという脅しは何のために?」


「あの大きな虫を使って、実力を確かめたかったわ。あの虫はアタシが用意したものじゃなくて、敵陣営的な人が作ったものね」


「て、敵陣営? あぁ、えーっと...... 作ったっていうのは?」


「言葉通りよ。使い捨ての生物兵器ね。......かっこいい」


「まあかっこいいけど...... 怖い......」


「他に質問は?」


「......僕らが山で死にそうになったらどうしてた?」


 あ、それは俺も気になる。助けるか放置するか......


「そうね...... 彼は絶対に治癒するけれど、貴方は微妙ね。金髪の彼は多分死なないわ」


「オレの圧倒的ネタキャラ感」


「実際なにひとつ危ないことしてないじゃん。

ってかおい、ユズが微妙ってどういう意味だよ」


 俺はやや声を荒げて言った。


「ケースバイケースって意味よ。行間を読みなさい」


「いや意味が分かんないわけじゃねぇよ!」


「え?」


 俺の声色はいつも通りに戻った。


「やっぱ俺こいつ無理...... 狂気......」


「大丈夫よ、近くに置いているうちになんとかなるわ。アタシは従順で可愛いから」


「従順なら今すぐ実家に帰るか死ね」


「本末転倒ね」


 なんて協力する気のおきない奴だ。


「まあ何となくは分かったよ...... 正直、キキョウが僕より助けたいっていうのが意外だけど」


「ユズも俺に喧嘩売ってる?」


「まあ。勝手にいろいろと作戦練っていたみたいだしね」


「貴方の作戦も、あまり良いものではなかったけれどね。罠の質は高かったけれど、足止め程度にしかならなかったと思うわ」


「想定していたよりも5倍強かった上に、分身の数がそんなに居るんじゃどうしようもないよ」


「貴方程度じゃアタシの敵にすらならないわ。彼より貴方の方が圧倒的に強いのは正しいけれど、アタシに手も足も出ない時点でアタシにとってはドングリの背比べよ」


「ひ、酷い...... でもドングリの背比べなら何でキキョウなの?」


「それはまあ何となくね。実際今は経験もないし作戦も生温い。戦闘方法も脳筋だし、戦いの才能も中途半端。貴方が疑問に思うのも仕方ないわ」


「せ、先輩たちのライフが消えているのでもう少し優しく......」


「うるさいわ。貴方は論外」


「「「......」」」


 3人そろって撃沈である。擬音語をつけるなら「ズーン」って感じだ。


「そういえば、あの山はどうするのかしら? あまり詳しくはないけれど、生態系は確実に壊れているわ。元々、虫が山を荒らしていたし」


「俺の魔法で何とかなってたりしないかな? 太陽の光が照らしてくれたんだぜ?」


「あぁ、あれね。粉塵爆発でも狙ったの?」


「お、そうそう。よく分かってるじゃねぇか」


「普通に考えて、酸素濃度が低い山で、かつ土煙も舞いやすい中、よくやろうと思ったよね。魔力がちょっと作用したから少し爆発が続いたけど、多分普通にやったら1回も爆発しないよ?」


「......そうなんだ」


「マジで今日の先輩良いとこないじゃん。最初の戦果は一体どこへ」


 若干ユズの言葉に棘が入っている。ちょっと怒っている証拠だ。なんでだろう... いろいろありすぎて逆に分かんねぇな。


「......まあでも、キキョウのあの粉塵爆発も、全くの無意味ってわけじゃないけどね」


「え、マジ!? なになに!?」


 ユズは笑顔で俺に言った。


「植物倒壊。動物のうち何種が絶滅。虫の死体が散乱し、爆発の影響で頂上付近の虫に耐えれる動物が死亡。虫の卵は土の中にあれば生き残っていると思うから、虫がさらにこの山の生態系を壊してくれたよ」


「うーん...... つまり良いこと?」


「やってくれたねキキョウ!」


 知ってた。


「本当に何やってんの!? 村の生命線の山が死んだんだけど!」


「えぇ...... 元々燃やす予定だったし......」


「はぁ......」


 ユズは呆れたように溜め息を吐いた。まあ、うん、俺もなんとなく分かってた。まあそれでもいっかって思ってた。


「僕は今日から何週間か山に毎日見に行くから、キキョウは治癒魔法でも受けながらそこでもう寝てて」


「え、ユズが治癒魔法を使えば1発じゃん......」


「今は大罪人に魔力を使っている暇がないの!」


「えぇ......」


「タイカルはキキョウが無理をしないよう見てて! フィルクは全てのキッカケとして僕に付いてきて!」


「嫌よ。面倒だわ」


「あぁもう!」


「オレもそろそろ工事を手伝わないと......」


 ことごとく否定されるユズ。おかしいな、ユズは1番今回悪いことしていないはずなんだけどな。今もむしろ山を治してくれようとしてくれているんだけどな。


「まあ、アタシが居れば食糧には困らないし、彼の監視はアタシがやるわ。安心しなさい、山が死んでも肉は食べれるわ」


「山が死んだら肉は食えないだろ。何言ってんだ?」


「アタシの能力を忘れたの?」


 ......ん? 分解する技は何も関係ないしな。分身に食糧を取らせるってことか?

 ......あ、違うわこれ。


「腕切って焼けばそれなりに豪華な食料になるわ」


「俺...... やっぱお前無理......」


 俺の異世界生活に、狂人が加わった。

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