VS氷の女王3
それでも、こんな危険な状況で魔力の遮断をやるのは初めてで、うまくいった安堵からか3秒くらいその状態でいただろうか。
「ッ!」
握られた手を振りほどくリージア。
「手……ッ! ててて、手を握るなどッ!」
リージアが何か小声で言っているが良く聞こえない。しかし、明らかに動揺しているようだ。
それもそうだろう。詠唱を終えて魔法が使えないなんてことは、普通はありえない現象だからな。
「一体何のつもり。攻撃してこないなんて」
「したくてもできないんだよ!」
「女だから攻撃できないとでも言うの? 舐めないで! 気にせず本気で来て!」
言われなくても、最初から本気だ。
リージアの魔法は想像以上に攻撃的で、わざと当たって降参する機会がこの先も訪れないであろうことが分かってしまった。
だから、俺はとにかく近接戦闘に持ち込めないかと考えていた。
魔法が使えない俺は、リージアが氷の刀を持っていようが、一縷の望みに賭けて肉弾戦に持ち込むしかないのだ。
しかし、魔法ですべてが回っているようなこの世界で、近づければ勝てるなどという甘い話があるわけがない。
リージアは模擬戦闘が始まってから、常に身体を魔力の膜で覆っている。
これは『魔力障壁』という初歩の魔法だが、瞬間的な衝撃に対して硬化し、使用者の身を守る効果がある。
もし素手で殴ったりしようものなら、こちらのほうがダメージを受けるだろう。
これがあるから、俺は積極的に攻められないのだ。
……それでも、俺はリージアとの距離を詰める。
「ハァッ!」
次々に繰り出されるリージアの一閃――
それを俺は紙一重で避けていく。
「それなら……ッ!」
途中からはそこに氷の魔法の魔法まで加わっていた。
刀を片手で持ち、もう片方の手で小さいが氷柱を飛ばしてくる。
だが、刀を激しく振りながら即座に広範囲のアイシクルショットを撃つことは、いくら”氷の女王”でも難しいようだ。
本来であれば軌道が読めないため魔法を織り交ぜた奇襲は有効だろうが、魔力の流れが見えている俺にとってはむしろ直線的で読みやすい。
さらに、リージアが刀を両手で持っていないことは、俺にとってチャンスだ。
連続で攻撃を繰り出し、リージアの動きが疲労で少し鈍ったその瞬間――
「そこだ!」
リージアが刀を振るう瞬間を狙って俺が繰り出したのは、”柄取り”だ。
俺の左手が捉えたのは、リージアの持つ刀の柄……そして、右手でその刀をぐるりと回すように動かすことで、リージアから簡単に刀を奪うことができた。
片手で刀を持っていた上に、連続の攻撃で握力が弱まっていたから出来た芸当だ。
「なっ!?」
奪い取られた自らの得物に驚きを隠せないリージア。
そして、刀さえなければ、俺にも反撃のチャンスがある!
俺は奪い取った刀を即座に捨てると、リージアの制服の胸元を掴み上げ、重心を落とし、脇の下に肘を入れる。
「ひッ!?」などという声が聞こえた気もするが、気のせいだろう。
そのまま俺は回転しリージアの身体をグッと引き寄せると、そのまま背中で背負うようにして地面に向かって投げつけた。
これは、ジジイが教えてくれた中でも特に武術らしい武術”柔道”のもので、技の名前を”背負投げ”と言う。
武術自体が珍しいものではあるが、東方では比較的知られている武術である。
先程の”柄取り”もこの武術の技だ。
ドスン!
地面に思いっきり叩きつけられたリージアはそのまま失神してしまったようで、起き上がってくることはなかった。
遠くで見ていたバリウスが声を上げる。
「そこまで!」
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。