VS氷の女王1
「アイスエッジ!」
先に動いたのはリージアだった。
リージアの得意魔法は氷、それは噂通りのようだ。
しかし、俺はその魔法の内容までは聞いていなかった。
いや、目の前の光景がマジだとするなら、はっきり言って大ピンチだ。
「ハァッ!」
こちらに向かって走ってくるリージア、その手に握られているのは一振りの刀。
そう、彼女は氷で刀を作り出したのだ。
俺は弱い攻撃に当たって降参するつもりだったわけだが、少しだろうがあんなのに当たったら怪我じゃすまない!ヤバイヤバイヤバイ!容赦がなさすぎるだろ!
大焦りする俺をよそに、リージアとの距離は着実に縮まっていく。
あー、もう!こうなったらうまく降参できるタイミングが来るまで死ぬ気で攻撃を避け続けるしかない!!
「動かないとは……余裕だなッ!」
容赦なく振り下ろされる刀、それを俺は右にステップしてかわした。
右、左、右、右、左……
次々に迫りくる一閃を俺は最小動作で避けていく。
刀が横を過ぎるたびに、尋常ではない凍気を肌で感じる。
……しかし、俺は避けることに関してならば、誰にも負けない自信がある。
実家である岩院家は名家であるが故に力が重視されていた。魔力がゼロだった俺への扱いは酷いもので、小さい頃から親元を離れて、武術の達人を名乗る変なジイさんの元で生活させられていた。
あのジジイ、家の雑用とかを俺に全部押しつけた上に、修行と称して過酷な訓練をさせてきやがった。武術も割と教えてもらえたが、基本的にあれはただの憂さ晴らしのいじめだったと思っている。
とはいえ、おかげで身体能力の方はだいぶ成長した。特に、理不尽な攻撃を避けることに関しては、もう身体に叩き込まれている。
魔力ゼロの俺が生活していくには肉体の方を鍛えるしかないから、仕方がない。
「中々やる」
リージアはバックステップで距離をとると、即座に次の行動に移った。
「アイシクルシュート!」
かざした手のひらから放たれたのは無数の氷柱であった。
手の付近に何かを形成して飛ばすのは、魔法の基本である。
しかし、さすがは”氷の女王”、その氷柱の大きさや数は一般生徒が放つそれとは一線を画している。
そして、なにより、近接戦闘からスムーズに魔法に移行する魔力操作も凄まじい。
だが、俺は氷柱が放たれると同時……いや、「それより前に」に、すでに回避へと移っていた。
「驚いた。まさか魔法で相殺せずに避けられるとは」
確かに、何かを飛ばす魔法というのは放たれる方向や密度が予測しづらいため、同じような魔法で相殺するか、壁のようなもので対処するのが基本だ。
さらに、リージアは接近戦から流れるようにこれを放ってきた。魔法による相殺といった対処も、普通であれば難しかっただろう。
まぁ……俺に関しては、魔法が使えないのだから相殺しないのは当たり前だが。
しかし、何も避けることができたのはマグレではない。
これこそが俺の秘策、”魔眼”の力だ。
魔眼とは、魔力の流れを可視化する目のことだ。この魔眼の発現には謎も多く、滅多にお目にかかれない非常に貴重な能力とされる。俺は、この魔眼を生まれながらにして持っていた。しかも、俺の魔眼は特に強い力を持っているらしく、意識すれば魔力の流れをはっきりと見ることができた。
本来、魔眼は魔法を使う際に有利であるとされるものだ。イメージや思いの力と密接に関わっている魔法を使う上で、実際に魔力が見えるというのは大きなアドバンテージとなる。魔眼持ちの魔法使いは例外なく高い実力を持っている。
しかし、それだけ貴重な才能を持っていながら、魔力ゼロの俺では完全に宝の持ち腐れだ。魔力が見えようが、それを扱う術を持っていないのでは意味がない。
とはいえ、この状況では存外役立つのだ。
例えば、今であれば、俺はリージアが詠唱に入る前から何かを飛ばそうとしていることが分かっていた。さらに言えば、どのような軌道で飛ばそうとしているのかさえもはっきりと見えていたのだ。
ただ、別に避けるための秘策というわけではない。
元々、魔眼で弱い魔法を見極め、わざと当たって降参することを秘策として考えていたのだが、リージアの魔法は牽制用と思われるものですら威力が高くてその隙がなく、完全に避けるしかなかったのだ。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。




