【久遠】の二つ名を持つ魔法使い2
「ファイアランス!!」
マホロが続けざまに魔法を射出する。
「ロックブラスト!!」
「サンダーボルト!!」
しかし、そのすべてがトオヒサに当たることはなかった。
ただ、立っている。
それだけなのに、トオヒサに魔法が届かない。
近くにいるはずなのに、トオヒサが遥か遠くに居るかのようだった。
マホロは左腕が痛むようで、すでに少し肩で息をしているように見える。
「ワタシの二つ名を、君たちも知らないわけではあるまい? よほどの実力差があるから、これだけ余裕でいられるのだよ。不意打ちに失敗したのは予想外だったとはいえ、真正面から戦ったところで、万に一つも君たちに勝ち目などないさ」
【久遠】、それこそトオヒサが世に轟かせる二つ名だ。
しかし、一体どのような魔法を使うのか、想像もつかない。
「ワタシは、世界の法則すら作り変えることができる。もう、すでに君たちは逃げることも、ワタシに攻撃を届かせることもできやしない。試してみるかい?」
そう言うと、トオマサは両手を広げて挑発した。
無防備なトオヒサを見て、俺は、前へと踏み出す。
それなりに脚力には自信がある。
この距離であれば、数秒でトオヒサの元にたどり着ける……
そのはずだったが、何故かトオヒサとの距離は全く縮まらなかった。
10秒、20秒……全力で近づこうとしたが、トオヒサとの距離は変わらない。
「おやおや、どうしたんだい! ワタシは何もしていないって言うのに。こんなに近いのに、近づいてくることすら出来ないとは! 怖気づいたのかい!?」
トオヒサが俺の様子を見て、笑っていた。貼り付けたような冷たい笑みだ。
絶対に、何らかの魔法が使われている。
しかし、俺の魔眼ですらその痕跡を捉えることが出来なかった。
仕方なく、俺はマホロのいる場所へと後退する。
トオヒサに向かって走っていたはずなのに、数歩後退しただけで、俺は元の位置に戻ってきていた。
「君は魔眼を持っているのだろう? ワタシは何もしていないだろう?」
絶対に魔法を使われているという確信はあるのだが、トオヒサが言うことも事実だ。魔眼を持ってしても、トオヒサが何かをしているようには見えない。
一体、何が起こっているのか。
この状況について考えようとしたときだった。
トオヒサが、笏を持っていない左手をわずかに動かした。
ほんの少しの動き。
次の瞬間、何かが風を切る音が聞こえた。
ザッ
「ッ!!」
横を見ると、マホロが膝をついている。
「マホロ、大丈夫か!?」
「右腕まで……」
マホロの右腕には最初に受けたのと同じ、何かが貫通したような傷があった。
そこから流れる血が、マホロの右腕も赤く染めていく。
何か、魔法を使われた……!
だが、俺はトオヒサから少しも目を離していない。
魔力の痕跡もなければ、魔法本体すら見えなかった!
「少し狙いがそれたか。中々、同時使用に無詠唱だと難しいものだね。ただ、これでお前が魔法を使うのは、ほぼ無理だろう。君たちが逃げることはできないのだから、あとはゆっくりやればいいさ」
トオヒサは、ずっとそこに立っているだけだ。
それなのに、絶対に触れることができないんじゃないか……何をしても無駄なのではないか……そんな絶望感を感じる。
これが無限院家、当主の実力……!
幸い、トオヒサは連続で魔法を放ってきていない。
おそらく、正体不明の魔法にリソースを割いていて、時間をかけなくては連続で魔法が使えないのだろう。トオヒサがやけに喋っていたのは、時間を稼ぐためではないかと、予想を立てることが出来た。
その間に、俺はマホロの状態を確認する。
「マホロ、しっかりしろ!」
マホロは、膝をついたまま息を荒くしていた。
傷が痛むのだろう。
両腕をだらんと垂らし、じっと痛みに耐えている。
そんなマホロの様子を見ていると、俺の中に、今まで感じたことないほどの怒りが沸き上がってきた。
一体、何故マホロが傷つかなくてはならないのか!
一体、誰がマホロをこんな風にしたのか!
俺は、トオヒサを睨む。
「無限院トオヒサッ! 絶対に、お前を許さない!」
「身の程を知れ! 許しとは、常に上の立場の者が与えるものだ。ワタシがお前らを許すことはあり得ても、お前らがワタシを許さないなんてことはあり得ないのだよ。もっとも、ワタシがお前らを見逃すことはないがね」
怒りの中で、俺は打開策を考える。
俺たちの攻撃は、すべてトオヒサに届かない。
そして、トオヒサの放つ魔力の軌跡すら見ることが出来ない。
だが、きっと何らかの魔法を使っているはずだ。
考えろ、どうやれば、その魔法の正体を突き止められる?
どんな魔法を使われている?
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。




