無限院家当主としての立場
聞いてもなお、現実として実感することが出来なかった。
今まで魔法が使えないのは体質だと思っていたから、いきなり俺が魔法使いとして才能があると言われても受け入れることは出来なかった。
それに、これを聞いても、10年前のことを思い出すことはなかった。
ただ、もし俺がそんな状況になったら、マホロが傷つくのを嫌だと思ってもおかしくない。今も昔も、たった一人の大切な存在だ。
トオヒサの話は、真実のように感じられた。
「ユウタくん……私は傷だらけだろうが、十分嬉しかったんだよ」
マホロがこちらを見て、瞳を潤ませる。
「もしかして、ユウタくん、魔法が使えないっていうのは本当のことなの?」
「ああ、俺は魔法を使えないんだ」
「そんな……」
そこにトオヒサが口を挟む。
「分かってくれたかね。ワタシは君の心を思ってこうしただけなんだよ」
「黙れッ!」
先程まで瞳を潤ませていたマホロが、トオヒサの方を向いて威嚇する。
マホロのことは可愛いとは思っていたが、この豹変っぷりだけは全然慣れない。
「仮にそうだとして、お前はユウタくんの優しさにつけ込んだだけだッ! 意図してユウタくんの魔法使いとしての才能を潰したんだッッ!」
「それは違うな。大森羅僻覚法で、魔法の才能まで消すことは出来ないのはお前も知っているだろう。ワタシは記憶を操作したが、長年に渡り魔法を使わないのはユウタ自身の意志に過ぎないさ」
「……ッ」
マホロが黙ったところを見ると、大森羅僻覚法で魔法の才能を消すことができないというのは事実のようだ。
「それに、太古の歴史から出日三院が権力争いを繰り広げていることは今伝えただろう。表面上は交流を保ってはいるが、隙を見せれば一族の破滅を招くことにもつながる。ワタシは当主として、正しい選択をしたまでだ」
「出日三院争っていたなんて、私は聞いていない!!」
「お前が知らないだけさ」
俺も、そんな話は聞いたことがなかった。
とはいえ、才能を見限られて家から縁を切られた身だから、それは当然か。
トオヒサは出日三院の成り立ちについて話し始めた。
太古の昔、出日は各家の開祖である三人の人物によって作られた。
岩院アラマサ、夢幻院リョウメイ、御暁院コクソウ。
そして、出日が出来た時に最も力を持っていたのは岩院家だった。
どの者も歴史を変えるほどの力を持った魔法使いであったが、岩院アラマサの力は突出しており、残りの二人もそれを認めていたのだという。
かつては、最も力を持つ者の証として、出日を建国した岩院アラマサは、岩院ではなく天岩院と名乗っていたらしい。
しかし、開祖である岩院アラマサこそ稀代の魔法使いであったが、アラマサが強すぎた影響か、天岩院家にアラマサより強い人間が生まれることはなかった。
そんな時代が続き、夢幻院家と御暁院家は、天岩院家が力を持っている今の状態に不満を募らせ始める。
その後も、出日の支配者として表面上は平和を保っているものの、裏では熾烈な権力争いが繰り広げられ、天岩家はついには岩院家という元の名前を名乗るようになり、出日三院の間に権力格差はなくなった。
いつしか夢幻院も無限院へと名を変えていった。
しかし、どうしても完全なる公平というのは難しい。
無限院家の力が少し強まれば岩院と御暁院がそれを抑え、御暁院家の力が少し強まれば岩院と無限院がそれを抑える。
そうして出日三院のバランスは保たれてきたのだという。
トオヒサに言わせれば、権力争いをやめることは一族の歴史を裏切ることであり、当主として、そのために取れる手段は選ばないのが普通なのだ。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
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