氷の女王と戦うことになっていた
次の話は本日17時過ぎに投稿します。
「ユウタくん、来たみたいだね。今日呼び出したのは、裏生徒会のことを説明するためさ。そして、君のことだからもう調べているかもしれないけど、そのあとに裏生徒会のメンバーと模擬戦闘を行ってもらいたい」
俺は、裏生徒会のメンバーとして、とある一室に呼び出されていた。
目の前に座るのはバリウス。他のメンバーは居ないみたいだ。
説明によれば、裏生徒会とは、学院の中でもほんの一握りの実力ある者を加入させ、その才能を実戦の中でより磨かせるための組織なのだそうだ。
学院長主導のもと結成されたこの組織は、世界のパワーバランスに均衡をもたらすために作られたという。
そもそも、グランヴァザーナ学院は100年以上も同じ学院長が運営を続けている。
世界の中心地点であるこの土地に中立国家ヴァザーナを建国し、グランヴァザーナ学院を作ったという伝説のような存在こそが大魔法使いである学院長だ。
そして、無用な争いを世界から排除し、均衡の取れた世界を実現すべくグランヴァザーナ学院が作られたのだという。
学院長は、均衡を守るためにはある程度の力は必要だと考えているようで、強き才能をより伸ばして抑止力として機能させるべく、裏生徒会を組織したらしい。
裏生徒会の具体的な活動として、授業などが一部免除され、より実戦的に魔物の討伐やヴァザーナおよび周辺諸国の問題解決などの任務にあたるとのこと。
なんで、そんなのに俺が呼ばれたのか全く分からない。
だが、死刑の瞬間はもう目の前まで迫っているようだ。
「さて、以上で説明は終わりだ。次に、君には模擬戦闘を行ってもらい、その実力を簡単にではあるが測らせてもらう。今回の相手は、君と同じ1年生のリージア・メルヴァニアくんだ。この模擬戦闘は魔力抑制の腕輪なしで行ってもらう。ついてきてくれ」
リージア・メルヴァニア、その名には聞き覚えがあった。
1年生の中でも特に噂になっている人物といえば彼女のことだろう。
美しいという言葉が似合う綺麗な顔立ちで、氷の魔法を使うこと、そして他人に冷たい態度などから”氷の女王”などと裏では呼ばれている。
実際、彼女は北の大国メルヴァニアの王女の一人であり、いずれは女王になるだろうし、その実力も申し分ないと言われている。エリート学院だけあって、グランヴァザーナ学院には高貴な身分の人も多く在籍しているが、リージアほどの身分と実力を兼ね備えた人物は他にほとんど居ないだろう。
魔法の強さは個人の才能。そして、血筋はそれを決定づける最も単純な要素だ。
過酷な寒冷地を治めるメルヴァニア王家の者が、弱いはずがない。
実際、学年でもトップの実力だとよく噂されている。
まぁ……俺も名家の出身のはずなので、悲しいことに例外はあるみたいだがな。
「さて、ここが模擬戦闘を行う場所だ。知っているとは思うが、彼女が裏生徒会の第六席であるリージアくんだよ」
屋内ではあるがコロシアムのような形状をした模擬戦闘場の中心には、リージアが立っていた。
美しい白のショートヘアーも氷の女王という感じで、色々と映えている。
メルヴァニア王家を象徴する氷の結晶の髪飾りも、それに拍車をかけていた。
「あなたがユウタ。強いと聞いている。全力でやりましょう」
「俺はそんなに強くないから、手加減してくれると嬉しいんだけど」
「油断はしない」
リージアはそう言うと、奥にある戦闘開始位置へと歩いていった。
「ユウタくんにはルールを説明しておこう。裏生徒会での模擬戦闘は相手が降参するか気絶するまで行われる少し過酷なものだ。大怪我することにも繋がりかねないから、決して手を抜かないほうが良いよ。それじゃあ、ユウタくんも開始位置についてくれ」
相手はあの”氷の女王”だ。はっきり言って、勝ち目はないだろう。
だから、俺の目的は最初から「弱そうな攻撃にあたって降参を宣言すること」ただ一つだ。
そして、そのための秘策もある。
……意を決して、俺は、開始位置へと歩を進める。
一体なんでこんなことになっているんだか……
そんな思いが拭えない。
「それじゃあ二人とも、準備はいいかな?」
前を見れば、リージアが鋭い視線でこちらを見据えている。
――張り詰めた空気の中、そのときが訪れた。
「戦闘、開始!」
こうして、魔力ゼロの俺は、”氷の女王”と戦うことになったのだった。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。