10年前の思い出
「小さい頃は私もお転婆だったから、ユウタくんと遊んでる時に『冒険する!』なんて言って、立入禁止の山に入って迷子になっちゃってさ。そのうち、周囲が薄暗くなってくると、私が冒険しようなんて言い出したのに、帰れないんじゃないかって泣きそうになっちゃって」
10年前、俺が5歳の時の話だ。
俺は、思い出そうとする。
「その上、あの日は何度も地鳴りがしてて、意識し始めると何かが唸ってるように聞こえてさ。私はその場でうずくまっちゃったんだよ。でも、そんなときにユウタくんが『俺の彼女にしてやるから、俺のそばを離れるな』って手を引っ張っていってくれたんだ」
やはり、思い出そうとしても、全く心当たりがない。
「そして、しばらくしたら、突然大きな地震があったんだよね。あのときは、地面が動いてるんじゃないかって思ったけど、本当に動いてたみたいだね。そう、あの山の地下に眠っていた太古の巨龍が運悪く地上に出てきたんだ」
10年前、確かにそれは、マホロの祖父であり当主である無限院トオヒサが巨龍を倒したとされる年数と一致する。だが、俺は巨龍と出会った記憶などなかった。
もしかして、俺が忘れているだけなのかもと思ったが、さすがにそんな大きな事件を忘れてしまうだろうか?
「地面から出てきた巨龍のせいで山は崩壊していって、地面はどんどん崩れていくし、私はもう死ぬんだって泣き喚いてた。それでも、ユウタくんが手を引いて私を助けてくれたんだよ。それでも、さらに運の悪いことに、巨龍に見つかってしまった。巨龍から見たら私たちなんて、ほんの虫みたいな存在なのにね」
聞いた話によると、当時の巨龍はこれまで確認された龍の中でも最大の大きさを誇り、国が一つ滅びてもおかしくないほどの魔力を保持していたらしい。
5歳の子供など、ひとたまりもないだろう。
「もうダメだって思ったよ。巨龍の口からは炎が放たれて、ギュッと目を瞑った」
話にあわせてギュッと目をつぶるマホロ。
……そっと目を開けて続きを話し始める。
「それで、目を開けたら、でっかい岩があった。いや、岩というか、地面そのものかな。地面の一部が盛り上がるようにして、巨龍の炎を阻んでいたんだよ。そして、その壁の前にユウタくんが居て、『マホロ、もっと近くに来い!』って言うの。私は近づこうとするんだけど、何が起きてるのかよく分からなくて、怖くて、全然歩けなかったんだよ」
マホロが興奮したように、話を続ける。
「そしたら、ユウタくんが『マホロのことは俺が守ってやる!』って言ったんだよ。その言葉で勇気づけられた私は、なんとか立ち上がってユウタくんのそばに行った。その後は、もう言葉じゃ言い表せないよ。ユウタくんの使う魔法はものすごかった! 大地を手足のように操って戦ってた! 地面も、植物も、川も、湖も、すべてがユウタくんの意のままだった! 巨龍はだんだんと弱っていって、ついに倒れた」
マホロは一呼吸おくと、こちらを見据える。
「それだけの力があるのに、実は魔法が使えないなんて、そんなわけないよ。嘘をつくとしても、もう少しマシな嘘をついたほうがいいと思うな」
「俺は……本当に魔法を使っていたのか?」
「当たり前でしょ?」
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
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