どうやら模擬戦闘はガチバトルみたいだった
「俺は何もしてないのに、裏生徒会に加入なんておかしいと思わないのか?」
「ユウタくんの本当の実力を考えれば、何もおかしいことじゃないでしょ?」
「うん…………そうかもしれないな」
さも当然と言わんばかりのマホロの言葉に、大嘘だが肯定を返す。
見栄を張っている……というのもあるのだが、マホロにこう言われるとなんとなく否定しづらい。
マホロの言葉は理由も何もなくても「もしかしたらそうなのかもしれない」って思わせる謎の説得力があるからな……
やはり、上に立つに相応しい者っていうのは、俺のような一般大衆を扇動するのが得意なのかもしれない。
そんなことを考えていると、マホロが衝撃の一言を告げたのだった。
「裏生徒会では最初に実力を確かめる目的で模擬戦闘があるんだけど、ユウタくんならいきなり頂点を獲っちゃうかもしれないね!」
「はい?」
模擬戦闘!?確かにバリウスが説明していたような気もするが、こんなに早くとは聞いてないぞ!
確かに授業で模擬戦闘をすることはある。だが、魔法が使えない俺はクラスメイトにさんざんにやられることが多くて、正直苦手だ。
模擬戦闘と言っても痛いものは痛い。あとで魔法を使って回復させてもらえるとしても、あの痛かった思いが消えるわけじゃないんだぞ。
その上、学院の中でも強い人達というのはその魔法の威力も凄まじい。
いくら模擬戦闘用に魔力が抑制される腕輪をつけて戦うとしても、モロに魔法を受けてしまえばその痛みは想像を絶するものになるだろう。
「なぁ、マホロ。できれば模擬戦闘とやらを俺はしたくないんだが……」
「私もやったしユウタくんなら大丈夫だと思うよ!」
「そういうことじゃなくて……ほら……その……まだ実力を隠したいというか?」
もうマホロに合わせて適当なことを言って乗り切ろうとしてみる。
「ちょうど良い機会なんだし、ユウタくんの実力を知らしめちゃえば良いんだよ!」
ダメみたいだ。
仕方がない。それなら、攻撃をなんとか避けて、大げさに吹っ飛んですぐに降参しよう。これなら被害は軽くすむはずだ。
「ただ、気をつけてね。裏生徒会の模擬戦闘は魔力抑制の腕輪をつけない本気の戦闘だったから」
「嘘だろ? そんなの下手したら死人が出るんじゃないか?」
「もうユウタくんにボコボコにされちゃう相手の心配? 確かにユウタくんの実力なら死人が出ちゃうかもしれないけど……手加減してあげないとダメだよ?」
手加減するのは相手の方だよ!
死人になるのも俺の方だ!
これは周知の事実だが、魔法の実力というものは才能によるところが大きい。
技術的な側面を練り上げることも重要ではあるが、各個人が体内に保持できる魔力の総量や性質というのはそうそう変わるものではない。
だからこそ、いくら学院の生徒と言っても、その魔法の威力は馬鹿にならない。強力な魔法使いは年齢に関わらず、目覚ましい活躍をするものなのだ。
俺は裏生徒会に誰が居るのかはまだ知らないが、生徒会長バリウスのような実力者ばかりであるとすれば、俺が戦って無事ですむ道理がないだろう。
噂によれば、バリウスは凶暴な魔物の群れを魔法一つで片付けたとも聞く。
俺なんか100人居ても消し炭にされるのではないだろうか?
どうにかして、模擬戦闘までにこの不可解な状況をなんとかしなくては!
「さすがユウタくん! 武者震いしちゃって、よほど戦うのが楽しみなんだね! あ、もうすぐ休憩時間も終わっちゃうね。教室に戻ったほうが良いよ!」
「あ、ああ、そうだな」
なんとか教室に戻った俺だったが、正直頭の中はこの模擬戦闘のことで頭がいっぱいだった。
このままでは、ほぼ一方的な俺の処刑になってしまうだろう。
何故このような状況になっている?
やはり、攻撃を受けているとしか考えられない。俺に幻覚系の魔法でもかけられているのだろうか?夢でも見せられているのなら辻褄はあう。
ただ、夢を見せる魔法でここまで学院の細部を再現したりはできない。これは現実だと考えるほうが自然だろう。
では、逆に俺以外のすべての人間が幻覚系魔法をかけられて、認識がおかしくなっている可能性も考える。だが、そんな広範囲かつ長時間かけられるものなのか?俺が知識に持っている幻覚系魔法は、長くても1時間程度しか持続しないはずだ。
その上、エリートが集うこの学院では、当然そういった類の魔法に対する抵抗手段を持っている人は多い。
そして何より、誰が、何のために、という疑問が残る。
……この日から解決法を探って色々と足掻いてみた俺だったが、無情にも3日後、裏生徒会に呼び出されることになるのだった。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。