無限院マホロとの死闘
突如、マホロの周りに現れる無数の魔力の軌跡、魔法を詠唱する気だ。
しかし、簡単に撃たせるわけにはいかない。
俺は近くの椅子をマホロの方向へと蹴り、動きを阻害する。
「ロックウォール」
木製の椅子が岩の壁に当たって破壊された。
マホロが立っていた場所を覆うように岩の壁が展開されている。
だが、狙い通りだ。その隙に、俺は走って距離を詰める。
しかし、岩の壁は次の瞬間には消え、中からすでに次の魔法を詠唱しているマホロが現れた。前に伸ばした腕に沿うように、炎の槍が形成されていた。
「ファイア――」
マホロは様々な魔法をそつなく使いこなす優等生だ。
ただ、それだけではない。
無限院――出日三院に名を連ねるその血筋。
一族の者は例外なく”無限の魔力”と言われるほどに膨大な魔力総量を誇り、魔法使いとしての高い素質を備えている。
さらに、出日三院の中でも特に魔力の操作技術に優れているのが無限院であり、力も技も兼ね備えているのが特徴だ。
おそらく、マホロが使おうとしている魔法はファイアランス。
炎の槍を投擲する、基本的な炎の攻撃魔法である。広く知られている魔法というだけあって難易度は低く、その分威力も低い。
しかし、これが無限院の魔力が為せる技か……
形成された炎の槍は俺の身長ほども大きく、強い熱を放っていた。
パパパパン!
その時、マホロの周囲で何かが弾ける音が鳴り響く。
突然の音にマホロは驚き、詠唱を止める。
実は、俺はさきほど椅子を蹴り飛ばすと同時に、とある植物の種子を撒いていた。
この種子は、強い衝撃を与えたり、熱を加えることで破裂して大きな音を鳴らす。
魔法が使えない俺が考えた小細工の一つだったが、マホロが炎の魔法を使うという運も味方し、予想以上に効果があった。
マホロは、俺のことを強大な魔法使いだと誤認している。だからこそ、ただの破裂音でも必要以上に警戒させることができた。
俺は、その隙にマホロとの距離を一気に詰める。
マホロの周囲の魔力の軌跡を見ると、次の魔法の準備を整えているようだ。
渦巻く魔力は、リージアよりも強力に見える。
「アクア――」
マホロが次の魔法の詠唱を始める。
しかし、いくら強大な魔法であれど、0をかけてしまえば問題はない。
俺は魔力の軌跡を冷静に見極めると、その魔力を断ち切るように手を差し込む。
「――バレット」
その魔法が放たれることはない。
魔法が出ないことに驚くマホロ。
それでも、マホロの動きは早く、俺から距離を取るために後ろへと下がる。
しかし、そこでマホロが体勢を崩したのを見逃さなかった。
「すまない、マホロ!」
俺が使うのは、リージアに使ったのと同じ”背負投げ”だ。
ドスン!
地面に叩きつけられたマホロは、動かなくなる。
想像よりも、早い幕切れだった。
思い返してみると、マホロは戦闘中、一歩たりとも動いていない。
それに、階段を降りてくるときの足音がおかしかったような気もする。怪我はないと言っていたが、もしかすると、足を怪我していたのかもしれない。
下がろうとして体勢を崩したのも、おそらくはそれが原因だ。
マホロがもう少し移動しながら魔法を使っていれば、厳しい戦いだっただろう。
俺はマホロを寝かせて立ち上がり、リージアの様子を見に行こうとする。
その時だ。
「サンダーボルト……ッッ!!!」
俺の横を閃光の弾丸が過ぎていく。
「ユウタくんは……ッ!! 私と居るべきなのッ!!!」
すでに気絶していたはずのマホロの、執念の一撃だった。
マホロはそれだけ叫ぶと、倒れ伏してしまう。
リージアに向かって放たれた魔法は、台座へと一直線に飛び――
バリバリバリ!!
激しい光に包まれた。
光が止むと、俺は急いでリージアに駆け寄って、状態を確認する。
……リージアは無事だった。
相変わらずリージアは酷い状態ではあるが、息をしている。
そして、台座の手前側には砕けた水晶が散らばっていた。
俺は、ほっと胸をなでおろす。
実は、リージアが狙われていると感じたときから、リージアが拘束されている台座にエメスから貰った水晶を置いておいたのだ。
マホロの放った魔法は水晶を砕き、結果として水晶に込められていた魔法が発動したのだろう。
俺は部屋の隅に投げ捨てられた鍵を拾うと、リージアの拘束を解き、抱きかかえて馬車へと運んだ。
同様にマホロも馬車へと運ぶと、学院へと急ぐのだった。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
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約束ですよ。




