空間の支配者2
エメスは立ち上がると、ゆっくりとこちらに近づきながら、語りかけてくる。
「我の目的は、魔力を全く通さぬその身体の研究じゃ。だから、取引をしようではないか。我がお主に求めるのは積極的な研究への協力。代わりに、我からは天理外道教団の情報を提供しよう。これでどうじゃ?」
願ってもみない提案だ。
手がかりが全くない状態から、一気に調査の足がかりを作れることになる。
しかし、タイミング的にも、少し話が出来すぎな気がした。
思い切って、俺は真正面から疑問をぶつけてみる。
「なんで、そんな都合よく天理外道教団の情報を持っているんですか?」
「疑っておるのか? まぁ、当然じゃな。ただ、我は目的達成のためにあらゆる情報を集めておる。その中の一つに、天理外道教団のものがあったというだけの話じゃ。別に、天理外道教団の手の者というわけではない」
そう言うと、エメスは少し間をおいて、ため息を吐き、そして話を続ける。
「実を言えば、我としてもこの状況は予想外だったのじゃ。本来、お主に取引を持ちかけるのはもっと後にするつもりじゃった。こうやって怪しまれてしまっては元も子もないからのう。ただ、それでもお主が死ぬのだけは防がねばならん」
「俺が死ぬと?」
「言ったであろう? 幻覚系魔法が学院のすべての人間にかけられておると。おそらくは秘匿魔法……まぁ、そんなことはどうでも良いな。何にしても、その術者の目的が全く読めないのじゃ。お主は、学院から天理外道教団の調査を単身で依頼されたことに、違和感を抱かなかったのか?」
「この状況ではあり得る話なのでは?」
「そもそも、統一国交会議が開かれるからと言って、グランヴァザーナ学院の教師が一人も動けない……そんなことあるわけがないじゃろう。その上、今回は裏生徒会のメンバーが拉致されるという前代未聞の事態じゃ。この事態の収束に裏生徒会のメンバーを向かわせるなんてこと、普通はおかしいじゃろうが!」
「確かに……」
「我は、幻覚系魔法をかけた術者が、まだ何かやっているのではないかと踏んでおる。そして、これだけ大それたことをしておきながら、目的は岩院ユウタ……お主一人のような気がするのじゃ。認識改変もお主に関することじゃったし、天理外道教団の調査に乗り出すことになったのもお主一人じゃ」
「でも、誰が何のために?」
「そこなのじゃよ。それが、我にも分からぬ。最初は……お主がやっているものだと思っておった。しかし、そうでない可能性を考え、お主の身に何か起こる前にこのように接触しておくことにしたのじゃ」
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
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