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気づいたら強大な魔法使いということになっていた

 結論から言おう。

 俺は何者かに攻撃されている。

 そう考えるしかない。いや、そう考えさせてくれ。


*


 バリウスから裏生徒会へと加入する話を受けた後、俺はすぐに件の噂について調べることにした。

 俺じゃない人が呼ばれるはずだったところに、間違って俺が呼ばれてしまった可能性が高いと考えたからだ。

 だったら、その噂のご本人様を連れてくれば、裏生徒会も間違いを認めるだろう。

 だから、俺はそこら辺にいた上級生に話を聞いてみることにしたのだ。


「ちょっとすみません。岩院ユウタって奴のこと知ってます?」

「えっ、ああ。なんか入学試験でものすごい成績を叩き出した1年だろ?」

「そいつを探してるんですけど、何組なのかわかりませんか?」

「1年4組って聞いたけど、間違ってたらごめんな」

「そうですか! ありがとうございました」


 1年4組、それは俺の所属する組だ。

 「もしかして、俺以外に同姓同名で岩院ユウタってやつが居るのか?」とも考えたが、いくらなんでも同じ組に同じ名前のやつがいるわけがない。


 さらに言えば、『岩院(がんいん)』は東方の国の名家である。

 それこそ、こんな落ちこぼれの俺ですらエリートの集う『グランヴァザーナ学院』へと入学できてしまうほどの影響力を持った家なのだ。

 いくら俺がその岩院家から絶縁状態で、僅かな手切れ金を貰って全寮制であるグランヴァザーナ学院に事実上捨てられたような立場であったとしても、そう何人も『岩院』の名を持つ人間がいないことはわかっている。


「あ、ユウタくん!」

 

 この不可解な状況に思考を重ねていると、廊下の向こうから一人の女子生徒がこちらに気づいて声をかけてくる。

 腰ほどまである黒髪を揺らして小走りで近づいてきたのは、幼馴染の無限院マホロだった。いつもつけている牙のような髪飾りも一緒に揺れている。

 幼馴染とは言ったが、”無限の魔力”とも称される無限院家の血筋を引くマホロは俺とは違い魔法技術に優れていて、将来も要望な期待の生徒の一人である。落ちこぼれの俺は、なんとなく肩身が狭い。

 さらに、無限院家の当主である無限院トオヒサは10年ほど前、巨龍を打ち倒しその力を知らしめた。東方の名家の中でも、特に影響力を持っている一族だ。


 昔は「マホロのことは俺が守ってやる!」とか言っていたのに、時の流れとは残酷なものだよな……


 その上、マホロは容姿も端麗で社交的だ。

 東方の生まれに多い黒髪も、マホロなら美人、俺なら根暗だ。

特徴のない顔に死んだ目で、可能な限り目立たないように人と関わりを避けている俺とは何もかもが正反対と言っていいだろう。

 同じ東方の名家の出身であるのに、どこで差がついたのやら。


「聞いたよ! ユウタくんの実力がやっと認められたんだってね! 嬉しいよ!」

「何の話だよ?」

「あ、大丈夫だよ。実は私は……」


 そう言ってマホロが取り出したのは、一枚の漆黒のカード。

 それは俺にも見覚えのあるものだった。


「お前、それ、裏生徒会の!」

「そうだよ! 実は私もメンバーなんだ。ユウタくんも来たと思うと心強いよ!」


 俺はあの時、バリウスから裏生徒会のメンバーであることを証明する一枚のカードを受け取っていた。それは今マホロがこっそりと見せてきたカードと同じものだ。

 真っ黒で何も書かれていないのだが、数字が刻印されているカードだ。

 裏生徒会のことは一般生徒には口外するなとバリウスからは厳命されていたが、身近に相談できる相手がいた事に安堵した。

 ただ、まぁ、今回の件に関しては、マホロに相談しても無駄かもしれないな……


「ユウタくんの実力だったら裏生徒会に入るのも時間の問題だと思ってたよ! というか、遅すぎるくらいだよね。もうユウタくんと私が入学してから、半年以上経ってるんだよ? 本来ならユウタくんには、すぐ声をかけるべきなのに」


 自分のことのように、俺の裏生徒会加入を嬉しそうに語るマホロ。

 これまでの流れを考えれば不自然に思えるかもしれないが、マホロに関してはこれで普通なのだ。

 なんて言ったって、コイツは昔っから俺のことを過大評価していた。

 「本当は実力を隠しているだけなんだよね?」なんてセリフは幾度となく聞いたものだ。


 嫌味なのかと思ったこともあったが、マホロの真っ直ぐな瞳がそれを否定する。

 ただ、マホロは俺が力を隠しているだけなのだと、信じているのだ。

 俺も俺で、それを否定しなかったから責任はあるのだが、俺だって幼馴染の前くらいでは良い格好をしていたかったし、マホロの期待を裏切りたくなかったのだ。


 まぁ、今となっては期待に応えるのは無理だと分かっているが、それでもせいぜい見栄を張りたいというのが俺という男で、本当にどうしようもない。

 だが、俺がこんな状況でも頑張れているのはマホロのおかげかもしれないな。マホロが居なければ、今よりもっと根暗でダメ人間になっていただろう。


作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。

当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。

というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。

約束ですよ。

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