試合が決まる……
3人、これからどうなりますか・・・
ジムを引っ張って欲しいですが・・・
3人はいつもの様にジムで練習している。
池本が居なくなって1週間が過ぎていた。池本が何処に行ったのか、これからどうするのか渡辺さんに聞き、改めてボクシングに集中の3人であった。
練習が終わり3人は帰ろうとすると、会長に呼び止められた。
「お前達、5月21日に試合だ!」
『はい!』
「徳井、防衛戦頼むぞ!」
「はい!」
「手塚、日本ランクに入るぞ!」
「勿論です!」
「喜多、日本タイトルだ!」
「!?……タイトルマッチ…………はい、絶対取ります!」
「みんな勝つぞ!」
『はい!』
3人は帰って行く。
会長は石谷トレーナーと話しをしている。
戸締りを石谷トレーナーがする事で、篠原トレーナーと西田トレーナーは帰って貰ってある。
「石谷、3人どうだ?」
「いい感じですね!」
「そうか……次に勝ったら、先のステージの話が来てるんだが……」
「心配ですか?……あいつ等は池本の後輩ですよ!」
「そうだな……気合い入れてやらせるか?」
「それがいいと思います!」
「次の試合が終わったら、徳井を東洋太平洋に挑戦させる。手塚も日本タイトルに挑戦だ……喜多が今回日本タイトルを取れば、トリプルタイトルマッチだ……こける訳にはいかないぞ!」
「はい、気合い入れていきます!」
「そこでだ……徳井は石谷、喜多を篠原、手塚を西田でどうだ?」
「いいですね、特に手塚は池本に戦い方が近い……西田は適任ですね!」
「よし、明日から頼むぞ……篠原と西田には連絡しとく!」
「そういえば、西田が居た佐々木ジム……ボクシングジム辞めてスポーツジムになったらしいですね!」
「びっくりだよ、所属選手とトレーナー全員移籍だからな……色々有るんだろ?」
石谷トレーナーは戸締りをし、会長とジムを後にした。
翌日より、それぞれに担当が付き、ジムワークに熱が籠っていく。3人はウェートが近い為、スパーリングには困らない。3人で切磋琢磨出来る環境である。それぞれがそれぞれを意識し、確実に集中力が増している。スパーリングも当然熱が籠る。
3人の練習は、日に日に凄みを増していく。
3月最終日曜日、3人は息抜きの為に出掛けた。
工藤さん豊本さん金田さんの3人も一緒である。
「「「お待たせ!」」」
「遅いよ、とっ君!」
「キータンも遅い!」
「手塚さんが来てくれて良かった……」
「何々?俺に会いたかった?」
「それは無いですけど……私だけだとお邪魔かなって……」
「ああ、そういう事……」
「え~、邪魔じゃないよ!」
「手塚さんと付き合っちゃえばいいじゃん!」
「手塚さん……軽そうだし……」
「まぁ、手塚は捻くれてるからね。無理には大丈夫だよ!」
「そうそう、今日は楽しもうよ。手塚はおまけでさ!」
「「「そうだね!」」」
「そうなの?……」
とりあえず6人は遊園地に向かった。
遊園地でジェットコースターや迷路等と楽しんだ。なかなか楽しい息抜きとなった。
帰りに、豊本さんは疑問をぶつけた。
「ねぇ……とっ君もそうなんだけど、何で池本さんにそんなに拘るの?」
「私も思った!……確かに凄い人だけど、拘り過ぎじゃない?」
「いや、あの人みたいになりたくてさ!」
「池本さんみたいにでしょ!……池本さんにはなれないよ……でも、みんな池本さんになろうとしてる!」
「でもさ……池本さんは俺達の憧れだから……」
「都合がいいんじゃない?……何だか、池本さんのせいにして進もうとしてる感じ……」
「自分の人生なんだよね?……池本さんもがっかりだね……」
「待てよ、誰が池本さんのせいにしたよ!」
「してるじゃん……ここに居ない池本さんの名前出して、勝手にやらなきゃって言ってるじゃん……」
「池本さんて……誰かのせいにしてボクシングしてたの?……嫌々ボクシングをしてたの?」
3人の脳裏に、ニヤッとした池本の顔が浮かぶ。
そして、その時は決まって追い詰められた時である。オーバーワーク気味の練習中や試合中のピンチの時、トレーナーから激を飛ばされた時である。
「俺、自分を見直さないと……」
「そうだよとっ君、池本さんはとっ君らしく強くなって欲しいんだよ!」
「キータンもそうだよ!……キータンから最近、ボクシングの楽しい雰囲気が全く無い!」
「手塚さんは良く知らないけど、何か都合良く池本さんの名前出してる気がする……」
「俺はどうせ知られてないですよ……しかし……きついな……」
「確かに……池本さんのせいにして……現実から逃げてたな……」
「全くだ……自分の彼女の方が、池本さんを理解してんだもんな……何してんだか……」
「俺は彼女じゃねぇけどな!……」
「少しは分かってくれた?」
「分からなかったら、ビンタでもしようかと思ってたけど?」
「少しは覚悟が出来たかしら?」
「「「おう!」」」
「だけど、何でそんな事言うの?」
「本当、どうして?」
「気になるな!」
「渡辺さんがね、池本さんがしっかりリハビリ出来るようにって……」
「昨日、連絡が有ったの……池本さんの心配は、あの3人だからって……」
「3人が覚悟出来る様に協力して欲しいって……池本さんが託した3人が、しっかりジムを引っ張る様にって!」
「参ったな……渡辺さん、池本さんに似てきたな……」
「ジムにまで来て、怒られそうだ……」
「ああ、どうやら池本イズムを1番理解してるのは、渡辺さんだな……」
「「「やるか!」」」
「「「その粋!」」」
3人は久しぶりにすっきりであった。
空は本日も晴天であり、突き抜けるくらいの青空である。この空は池本と繋がっている。3人は改めて、しっかり歩く事を決意した。
試合も決まり、気合いも入った。
後はやるだけ・・・
頑張れ!