スーサイドシティ
何も分からないまま自分が誰でどうしてここに居るのか知るために青年は魔王討伐の旅に出る
「スーサイドシティ…」
どこかで聞き覚えがあるようなその名を口にしてみる…
しかし、やはり何も思い出せない
-歩いているうちに森に入っていった、この森にもなにか見覚えがあるような気がするのだが…やはり思い出せない
「暗いな…何か灯りになるものは」
探してみると、老人から貰ったカバンの中にロウソクが入っていた
俺はすぐにロウソクに火をつけて、また歩くのを再開した
暫くすると急に広場のような場所に出た、不思議だ
「うっ、うっ…」
唐突に少女の鳴き声が聞こえてくる
音がする方を向いてみると、三角座りで長髪にボロボロの服を着た少女が顔を伏せていた
俺はすぐに駆け寄っていき大丈夫かと声をかけようとしたが、すぐに腐臭に気づき飛び退く
少女が顔を上げると、その顔は指くらいの大きさの芋虫だらけでその顔は今にも崩れそうに腐っていた
「くっ…コマンド1起動!」
何故かわからないが咄嗟に脳に浮かんだ言葉を口にしてみる
そうすると、前方に獅子のような業火が現れて少女だったものを焼き尽くした
「危なかったな…」
そして身の安全を確保したのを確認し、また歩き始める
-暫くすると10メートルはありそうな大きな門が見えてきた、その上には大きな看板がありこう書かれていた
『自殺志願者の街、スーサイドシティへようこそ!』
なにか不吉な予感がしたが恐る恐る近寄っていく
すると、また斜め前に赤髪をポニーテールにした豪勢な金ピカの防具を身につけて背中に剣を背負った小学生くらいに見える少女がいた
俺は警戒してまた少し飛び退き、双剣を構えさっき唱えた呪文のようなものを唱える準備をする
するとこっちに気づいたかのように少女が顔を上げる
「コマンド1起動!」
ビビー
謎の音がなり前方にErrorと言う文字が浮かんでくる
「お兄さん、ひょっとしてウチのこと攻撃しようとしてへん?
魔獣に寄生されてなんかないで?」
唐突に少女が声をかけてくる
というか生きた人間だったんだな、危ない危ない
とっさに心配だから声をかけようとしただけだと必死に説得する
「ふーん、そうなんや
ま、生きてるしええわ」
疑いを消しきってはいない様子をわざとらしくアピールしてくる
「そうや、ウチはヤマナカって言うんや
お兄さんは?」
切り替えが早いなと少し驚きつつ、伝説の勇者ですなんて馬鹿みたいなことは言えないので適当に考えた
「俺は哀川だ」
こんな簡単にこれから使っていく名前を決めていいのかという気持ちもあったが、名前が無いと不便なので背に腹はかえられぬってことで無理やり納得した
少女が答える
「哀川っていうんや、よろしくな!
ところで、今スーサイドシティに一人で入るのが怖かったからここに居たんやけど一緒に行ってくれへん?」
空気的に逃がしてくれそうにもないし攻撃しかけて負い目を感じていたのと断る理由もないので承諾すると、二人揃って門の横にある『入場受付所』という看板のある砦のような建物へと向かった
砦にいる30代くらいに見える''お兄さん''が話し始める
「ここは死を恐れぬもの達が集う街、スーサイドシティさ!
君たちも死を恐れぬ勇敢な冒険者達なのかい?
少し待っていてくれ、今入場手続きしてくるからな!」
男が建物の奥へと消えていくと、少女がまた話し始めた
「自殺志願者の街ってそういう事やったんや、別に怖いこと無かったわ
付き合わせてごめんな〜哀川」
俺は別に構わないと首を横に振る
-暫くして受付のお兄さんが戻ってくる
「さぁ、入りたまえ青年たちよ!
死を恐れぬもの達が集う街!スーサイドシティへ!」
開いた門をくぐり中へと入って行く
「ここがスーサイドシティなんや
テーマパークに来たみたいやで、テンション上がるわぁ」
ツッコミたかったがよく思い出せなくてなんのネタか分からなかったのでスルーした
それはさておき、辺りを見渡してみる
『訓練場!真の戦士よ来たれ!』
『もふもふ牧場、少し休んでいきませんか?』
『田島養鶏場、新鮮な卵販売中』
『石鹸ランド、夜のお供に』
色んな看板があったが直感でダメな予感がしたので最後の看板だけ見えないようにヤマナカの目を覆った
「なぁなぁ、まずは牧場行ってみぃへん?
ウチ動物めっちゃ好きやねん!」
いいぞ、と首を縦に振りヤマナカを連れて看板の指す方に歩いていく
暫くすると柵におおわれた場所に羊が大量に放し飼いされている牧場へと着いた
「わぁ!羊型魔獣がいっぱいやぁ!」
俺はそうそうに牧場の看板がある建物へと行き入場料を支払い(老人から出発前に少しだけお金を貰っていた)、ヤマナカと共に羊と戯れ始めた
-夕日が見えたので今日は宿に帰ることにした
部屋はもちろん別々だが、ヤマナカが羊の長い抱き枕を抱えて部屋へと入って来た
「なぁ、寝られへんねんけど一緒に寝てもええ?」
流石に小学生くらいの少女相手にそれは不味いだろう、いやしかし断って意識していると思われてもそれそれで不味いなどうしたものか…
!仕方ない、嫌われるか
「誘ってるのか?もう少し大人になったらな」
ヤマナカが少し顔を赤らめながら猛烈に反論してきた
「ウチはそもそも大人やし、誘ってないわ!!
で、でもどうしてもって言うなら…」
犯罪臭がヤバかったので悪化させておいてなんだがすぐに消化することにした
「ごめんな、俺熟女好きなんだ
それに、自分を殺しかけた相手にそんな簡単に気を許すなんて流石に気持ちが軽すぎると思うよ」
また顔を赤らめて小声で抱き枕に顔をうずめて反論してくる
「う、うるさいなぁ!
顔がすごいタイプなんや仕方ないやろ…」
俺まで照れそうになったのでとりあえず背中合わせに一緒に寝た
夜が更けていく…
読んで頂きありがとうございます!
まだ続きますのでよろしくお願いします!