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娼婦の不在





軽快にノックをする。

「入れ」

一言言われ、折り目正しく入室し、敬礼をする。

「スカーレット様、お願いがあります」

総司令官とは呼ばず、名を呼ぶ事で私的な内容であると暗に告げる。

スカーレットは多少身を崩し話しの先を促す。

「ルイーシュ嬢に面会させていただきたく」

短く伝えるとスカーレットが僅かに身を乗り出す。

「やっと決心してくれたのだな?」

スカーレットの問い掛けにユースは僅かに頷く。

「はっ!ルイーシュ嬢との婚約を解消するにしても、きちんとお会いすべきだと、そのおー、ジルバが……」

後半に向かうに連れ、恐ろしくデレデレと締まりを無くしたユースの状態にスカーレットはズッコケる。

「まあ、もういいから。とにかく面会の申請は直ぐに取り付ける。ルイーシュめっ、こやつをこんな腑抜けにしおって……」

ユースはスカーレットの言葉を聞き、はて?と首を傾げてから訂正する。

「閣下。それは違います。私を誑かしたのはジルバです。ルイーシュ嬢とは全く関係ありません!」

スカーレットは溜息を吐きながら日程は追って伝えると、まるで野犬を追い払うようにシッシッ!とユースを追っ払った。

ユースはやっと婚約解消に向け、一歩踏み出した気分で浮かれていた。


そして、職務停止中ではあるが、鍛錬をしてからジルバの居る娼館へと足を向けた。












「ジルバが居ない?」


ジュリエッタといつか名乗った女は申し訳なさそうに頭を下げた。

「はい。当娼館では月の物の間は部屋を下がらせていただく決まりになっております。申し訳ありませんが、六日の間はジルバは居りません」

今日も、ジルバがいる時には必ずいる支配人は居らず、代わりにジュリエッタがユースを対応した。

「ジュリエッタと言ったか?貴様は娼婦では無いのか?何故受付のような真似を?」

ユースの問いにジュリエッタは答える。

「はい。娼婦ではありますが、支配人や女将が不在の場合には取りまとめ役を仰せつかっております。大切なお客様方に失礼が無いように、作法を習得した私が恐れながら勤めております」

更に深く礼をしながらジュリエッタは述べる。

フンと鼻を鳴らしユースはスゴスゴと娼館を立ち去った。

……六日か。

ユースの浮かれていた気分は一気に急降下した。


ユースは宿舎に帰宅し、報われないジルバへの思いを発散すべく、鍛錬場へと向かうのであった。








ジルバが休みの二日目、ユースは朝も早くから鍛錬場で模造刀を用いた訓練を行っていた。

すると、鍛錬場の側に設置されている休憩所で若い貴族の騎士団員達が話しをしているのが聴こえてきた。


「あの、なんとかと言う娼婦、噂通りなかなか良かったぞ」

休憩所は下品な笑い声に包まれる。

「へえ、君行ったのかい?やっぱり名器だったのかい?」

「ああ、流石というより無かったな。しこたま搾り取られたよ」

わははっと笑い声が上がり、大いに盛り上がっている。

「見目も大変麗しく、鮮やかな赤毛と、豊満な身体付きが名に良く似合っていた」

ーーーけしからん!お前らの腐った性根を正してやろうか?!

完全な八つ当たりにユースが貴族の騎士団員らに近付こうと考えていると団員らは驚きの言葉を口にする。

「その名器の名はなんだったかな?」

「ああ、ジルバと言う」






ジルバーーー?





ユースは驚いた。


ジルバは赤毛では無い。


豊満な身体?


ジルバはどちらかといえば細身の女だ。


陽の透けるような柔らかな髪に、華奢な身体。



それがユースの知るジルバだ。

ジルバはあの娼館街に二人いるのか?


名器だと噂の同じジルバと言う娼婦が?

ユースの頭は混乱した。














ユースはスピアの居室へ向かっていた。


先程の貴族騎士団員に声を掛け、確認すると、ユースが通っている高級娼館のジルバと言う女で間違いないと言う事だった。

そして、その娼館にはジルバと言う名の娼婦は赤毛の女、唯一人であるとの事だった。

では、スピアが会った娼婦は?

ユースが愛を捧げた娼婦は?

ユースは疑問を解決すべく、すぐにでもユースの知るジルバに会いたかったが、それは叶わないので、取り敢えずスピアの元へ向かう事にした。


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