表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

娼婦に対する不満

評価、ブックマークありがとうございます!





翌朝目覚めると、ユースの腕の中でジルバが身動ぐ気配がした。


「ユース様、おはよう。今日はもう仕事に行かれるかしら?」

ユースは少し迷ったが、事実のみを完結に伝えた。

「十日間休みだ」

嘘はついていない。

つまり格好付けたのだ。

「あら、お休みなのね……」

「そうだ、休みだ。ジルバ、君は娼館街の外には出られないのか?」

ユースが問うと、ジルバは少し考えてから、こう言った。

「いいえ、大丈夫よ。では、お昼過ぎに迎えに来てちょうだい」

ユースは満足そうに頷き、娼館街を後にした。







ユースは浮足立っていた。

ジルバとデートを取り付けたからだ。


基本的に、ユースの国にいる娼婦は二種類いる。

なんらかの理由で借金の形に娼館街から出られない奴隷娼婦と、本人の意思で娼婦をしている者か。

恐らくジルバは後者なのだろうとユースは検討を付けた。

自ら進んで娼婦をしている者は、娼館街から自由に出られる。

自由意思で娼婦を続けている者は好き者か、金が大好きな女か、いくらか金を貯めて何かをしたい者かだが。

きっとジルバは夢があるんじゃないか。

ユースはそう思った。

ユースが求婚しても靡かなかったのは、きっとそのせいだ。

ーーージルバの夢ならば、全力で応援するのに。

ユースはあれこれ考えながら宿舎の割り当てられた自室の扉を開けた。

ユースは、部屋に置いてある桶を取り、食堂でたっぷりとお湯を貰ってきた。

騎士宿舎では、この時間はバスルームには湯は張られていない。

身体を拭いたい場合は、食堂に行き湯を貰わなければならない。

それは例え副官や高位貴族であっても同じことなのだ。

ユースは食堂を出て、裏庭に回り、上衣を脱いだ。

鍛え上げたユースの筋肉質な肉体の美貌に、裏庭で野菜の皮剥きをしていた下女が顔を赤らめ溜息を吐いている。

ユースは気にせず、布巾を湯に浸け、身体を拭く。

汚れた水をもう一つ準備していた桶に絞る。

数回続けて身体がさっぱりしたら残った湯で顔を洗った。

後始末を付け、自室に下がる。


ユースは部屋に備え付けの洋箪笥を開け、少し考えてから襟と袖口にレースのあしらわれた生成色のプールポワンを選び、鮮やかな紺色の脚衣を選んだ。

そして、腰には脚衣と幅広い飾り腰帯を結んだ。

ブラウンと迷ったが、結局ブラックの編み上げ式の長靴(ちょうか)を選ぶ。


ユースが宿舎を出る頃、丁度昼時を知らせ鐘が鳴った。



娼館にユースが到着すると、ジルバは既に娼館の入り口に白いフリルの付いた日傘を差して立っていた。

ジルバが纏うドレスは淡い紫色の落ち着いたドレスだったが、貴族の女性程豪奢なものではないが、非常に良いドレスだと一目でユースは見抜いた。

そして何と言っても一番ユースを感激させたのは、昨夜ユースが送ったレースのグローブと、帽子を身につけていてくれた事だ。

「ジルバ!とても似合っている」

ユースはお世辞では無い賞賛を述べてから、ジルバをエスコートした。

「貴方程の美丈夫に褒められると悪い気はしないわね。さあ、どこに行きましょうか?」

ジルバは小さく笑いながらユースを上目遣いで覗き込む。

ーーージルバめっ!計算なのか?その上目遣いは計算なのか?!

ユースはドクドクと脈打つ心臓を右手拳でギュッと押さえた。







二人は城下を優雅に歩きながら取り止めも無く話しをした。

そして、ジルバおすすめのカフェで楽しく会話をした。

なんと素敵な日だろうとユースは溜息を吐く。

ずっと続けばいいのにとユースは思うが、何度愛を囁こうが、ジルバは躱してしまう。

ユースはジルバの総てに夢中だったが、それだけは不満だった。

一度小さな不満があると心の中でどんどん膨れ上がり、ユースは不安になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ