2ー39 アンナ 精神世界 その1
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2019/05/13 サブタイ変更しました。
アンナ視点
あたしは今、ルミナス教から魔女の嫌疑をかけられ、牢屋に投獄されている。ソーマさんと一緒にいたから、という理由で。
確かにソーマさんは髪が黒く、魔王の子と呼ばれ、蔑まされているが、あたしには優しい、あたしにとってお兄ちゃんみたいな人だ。それにユーフォリアお姫様とも仲が良い、と言うかかなり親密な関係だと思う。
何が言いたいかというと、ソーマさんは普通の……普通かな? まあいいや。普通の人間だということ。
何故か色んな女の人にもてるけど。それも皆美人。
兎も角、だからあたしは魔女じゃないし、同じように捕らえられたお姫様やお母さん、ポーリーさんにモーラさんも勿論魔女なんかじゃない。
そのソーマさんだが、ポーリーさんと同時に牢屋に入れられ(当然別々だ)、暫くすると複数の足音がした。内一人はワイズ司祭、お母さんに色目を使ってた記憶がある。あたしに対してもいやらしい目付きで見ていた。
こんなのが司祭とか、世も末だ。
そう言えば前にソーマさんにそのようなことを話したら、「絶対そいつには近寄るな。そいつはロリコンという名の変態だ」とか言ってたっけ。
ロリコンって何だろう?
それは兎も角、何でも『浄化の儀』なるものをあたし達にするらしい。話を聞く限りでは、あたし達を犯してルミナス教の信者にするとかどうとか。訳が分からない。
と言うか、そんなことされたら絶対に信者になんかならないと思う。
だが、そんなあたしの考えている事などお構いなしに男が数名牢屋に入ってきた。皆一様にいやらしい目付きをあたしに向け、下卑た笑みを浮かべている。物凄く気持ち悪い。
これからされることを思うと恐ろしくなり、あたしは後ずさるも、この狭い牢屋ではすぐに背中に壁が当たる。
あたしは怖くて、縮こまり、目を瞑る。だがそんなことをしても何にもならず、男達は逃げられないようあたしを押さえつける。
「い、いや……」
あたしは恐怖に震えた。これからされること、そしてあたしがどうなるか。だが、そのようなことにはならなかった。
あたしを押さえつけていた男達がバラバラになったのだ。
頭、腕、足、胴体――まるで人形が壊れるみたいに。けど人形と違い、バラバラになったと同時に鮮血が迸る。押さえられていたあたしは真っ赤に血に染まり、視界が赤くなっていく。
「え? あ……いやあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
目の前で人が死んだ。あたしに触れて死んだ。あたしは有らん限りの声で悲鳴をあげる。そして、あたしの記憶は一旦ここで途切れる、筈だった。
不規則に転がった男達の頭が一斉にこちらを向く。数多の手はあたしの四肢を押さえつけ、大の字に広げる。首が宙を浮く。あたしを睨み付けながら。
こんなことはあり得ない。あり得ないからこそ恐ろしい。
「ひいっ!」
あたしは恐怖に顔を歪ませ、短い悲鳴をあげる。
『よくも』
『よくも殺したな』
『お前のせいだ』
『お前が殺した』
『許さない』
『許せない』
『死ね』
『俺達に犯されて死ね』
『犯されてバラバラになって死ね』
その声はバラバラになった男達の怨嗟の声。首があたしの回りをぐるぐると回り出す。怨嗟の声を投げ掛けながら。
「ひ、あ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、許して、許してえ……」
あたしは恐怖に怯えながらも謝罪の言葉を口にする。
『駄目だ』
『許さない』
『死んでも許さない』
『犯す』
『死ぬまで犯す』
『死んでも犯す』
『殺す』
『死ぬまで殺す』
『死んでも殺す』
怨嗟の声は止まらない。いくら謝っても、泣いても止まらない。
怨嗟の声をあげながら、バラバラになった肉塊が一つにまとまっていく。
出来上がったのはおぞましい程の化け物。頭は一つにくっつきまとまり、それぞれの口が怨みの声をあげる。胴体も、足も、そしてさっきまで押さえつけていた腕も。ただ無造作に引っ付いただけの気持ち悪い肉塊の化け物。
「ひ、あ、ああ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
あたしは何度も謝る。けど、
『許さん、死ね』
肉塊の化け物はあたしに巨大な拳を降り下ろした――
☆★☆★☆★
俺はクロマリアの協力の元、アンナちゃんの精神世界へとやって来た。アンナちゃんの精神世界は海中をイメージしたら分かりやすいだろうか。周囲にはバレーボールサイズの泡のようなものが浮かんでいる。泡の中から何やら景色が見える。どうやらこの泡の一つ一つがアンナちゃんの記憶のようだ。
ちょっと覗いてみたい気もするが――
――プライバシーの侵害です。
ですよねー。
それはそうと、今の俺はクロマリアと魔力が繋がっている状態だ。所謂命綱だ。ところでアンナちゃんを助けられず、もし失敗したらどうなるんだろう。
――良くてこの精神世界から弾き出されます。場合によってはクロマリア様との魔力のパスが切断し、戻ることが出来なくなります。
うわぁ……洒落になんねえ。
――また、現実世界のマスターが死亡しても戻れなくなります。
確かに今の俺の本体は無防備だ。それがどれだけ危険なことか。だからこそシンシアに守ってもらっているのだが。
――悪戯されているかもしれませんね。
……シンシアならあり得るな。
――尚、精神世界で死亡した場合、廃人になります。身体は生命活動していますが心、魂が死んでいます。それ故、ここでは気を確り保つ事が何より重要です。
要は心を強く持て、ということか。
――その通りです。ところでマスター、いつまで裸でいるのですか?
……うおぃ!? ナビーさんに言われて初めて気付いたよ。マジでまっぱじゃねーか! どうすればいいんだ?
――イメージしてください。
あ、そう。とりあえず、服と武器と防具をイメージ。服はいつも着ている麻の服で、武器は黒鉄の剣を、防具は取られてしまったが火鼠の革鎧と小手とブーツと、まあ所謂いつもの格好だ。それをイメージして……おお、ちゃんと着てるな。性能なんかも変わりはない。あとは念のためデザートイーグルだな。これはガンホルダーに。割とイメージしやすいのか、あっさりとガンホルダーは造れた。
装備を整え、今度は問題の記憶だ。闇雲に回ってもそうそう見付かるものではない。と言うか、一々一つづつ記憶を覗いていくのは面倒だ。なにかしら特徴でもあれば良いのだが。
――マスター、箱のようなものを探せば良いのでは?
そう言えば催眠術で記憶を箱で閉じ込めて鍵したんだっけ。ここがアンナちゃんの精神世界ならきっと何処かにある筈だ。
俺はくまなく周囲を見渡す。すると少し離れた所に壊れた箱のようなものを見付けた。その場所へ移動すると、箱の中に記憶の泡が入っていた。
軽く覗いてみると、何やらアンナちゃんが妙な化け物に襲われている。その化け物は人間のパーツを無造作に繋げたグロテスクな見た目をしている。
化け物がアンナちゃんに拳を降り下ろそうとしている。恐らくはこの化け物を何とかすればアンナちゃんのトラウマを治せる筈だ。だがどうすればいい?
――その泡に触れれば中に入ることが出来ます。ですが気をつけてください。恐らくあれはアンナ様が産み出した恐怖そのもの。その恐怖心が如何程のものか分かりかねますが、相当の強さを有しているでしょう。心を強く持たないと下手をしたら死亡する可能性があります。気をつけてください。
触るだけでいいのか。俺はナビーさんの忠告を胸に止め、泡に触れて問題の記憶の中へと飛び込んでいった。
恐らくこれが平成最後の投稿となります。




