2ー33 ガルド・バージェスとその結末
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気が付くと俺は男――ガルドを殴っていた。ガルドま鼻を抑え倒れている。何も考えずに殴ったからか、俺の拳が切れている。
「ぐ、が、てめえ、何しやがる!」
何しやがるって、それはこっちの台詞だ。こいつこそ人を何だと思っている。
俺は倒れているガルドに容赦なくボールを蹴るかのように蹴り上げる。技術も何もない、怒り任せの蹴りだ。
ガルドは転がりながら俺と距離を取り立ち上がる。
「このガルド様を足蹴にするたぁな、親父の客だからって知ったことか。いや、そもそも黒髪の奴に何したって問題なかったな。てめえは殺す」
ガルドはそう言うと腰に差していた剣を鞘から抜く。見覚えがあるどころではない。ワイズに取り上げられた、俺の剣、黒鉄の剣だ。
「そうか、貴様が盗ってやがったのか」
「盗った? 違うな。これはワイズ司祭から譲り受けた物だ。てめえこそ、俺様の奴隷を盗りやがってよぉ。返してもらうぜ、てめえを殺してなぁ!」
ガルドが無造作に剣を降り下ろす。素人の攻撃だ。当たる筈もない。俺は難なくかわすと、
「避けてんじゃねえ! この野郎!」
……斬られたら大怪我じゃすまないと分かっているのに何故当たる必要がある。馬鹿じゃないのか?
「御主人……」
オキュペテーが心配そうな顔をする。こいつ程度にどうこうされるつもりは無いが、俺はオキュペテーにあることを告げる必要があった。
「オキュペテー、そいつはダンとマリーを殺した」
「エ?」
「あいつは人間の屑だ。今のを聞いてオキュペテーも思うところがあるだろうが……俺に任せてくれないか?」
「……ヤダ。マリーチャンの仇ヲ討チタイ!」
「オキュペテー、これは俺がやるべき事だ。俺のちっぽけな善意で二人を死なせてしまった事への償いだ」
折角出来た友達の仇を討ちたいのは分かる。その気持ちが痛いほど伝わってくる。けど……
「ッ! …………分カッタ」
オキュペテーが俺の顔を見て渋々了承する。果たして俺は今どのような顔をしているのか。心底ガルドに憎しみを抱いているのは分かる。恐らくはワイズと同じくらいに。
「へっ、その魔物を使わなかったこと、後悔させてやるよ!」
ガルドが剣を無茶苦茶に振り回す。俺はそれをすべて余裕をもってかわす。
「おらおらどうした! 手も足も出ねえッてか? さっさと俺に殺され――」
「うるさい」
俺はベレッタをストレージから取り出し、ガルドの左足を撃ち抜く。バン! という音と共に硝煙の臭いが鼻腔につく。
「っ!? いぎゃあああああああ! いてえええええええ! 貴様、何しやがったぁ!?」
「答える義理はない」
次は右手。あまりの激痛にガルドは剣を手放し、その場でゴロゴロと転がり回る。
「あぎゃあああああ!! てめえ、この俺様を誰だと――」
「唯の屑」
次は右足。次いで左手を撃ち抜く。
あの奴隷の男を無力化させる為に撃った時とは違う。ただ痛みを与える為の銃撃。撃たれる度にガルドの絶叫が館内に響き渡る。
「ひい、ひいぃ! お、親父、助け、助けてくれ! ま、魔王の子に殺されるっ!」
ガルドが情けない声で父親であるブランドンに助けを求める。
流石にあれだけ騒げば嫌でも聞こえるだろう。ブランドンが降りてきていた。
「親父ぃ、助け――」
「おいガルド、おめえ、俺が育てたあいつらをヤク漬けにして廃人にしたってなぁ」
「は、いや……それは俺じゃねえ、シェーラがやったんだ。それよりもあいつを、魔王の子を――」
「て、言うかよぉ、あれだけクスリには手を出すな、口を酸っぱくして言ったよなあ」
「だから俺は使っちゃいねえ!」
「だが売りもんにしただろうが!! それと、スラムのガキを殺したってなあ?」
「あれは……俺の言うことを聞かねえから……」
「それで殺していい理由になるか! ガルド、おめえは俺の言うことを無視しただけじゃなく、商品を台無しにした。最早おめえは俺の息子でも何でもねえ。『死音』殿、この馬鹿に引導渡してやって下さいや」
スラムの子供を商品と言うのは些か気にくわないが、身勝手なガルドに愛想が尽きたのか、ブランドンは完全にガルドを見離した。
「嘘、だろ……なあ、親父ぃ!」
そんなガルドにブランドンは背を向け、自分の部屋へと戻っていった。
「ガルド、正直言うとな、俺は元々お前を殺すつもりは毛頭無かったんだ」
俺は冷たい声で言い放つ。自分でもここまで冷たい声を出せるとは思わなかったが。
「だったら……」
「けど、ダンとマリーを殺した事で生かす気も失せた」
俺はガルドの肩に銃口を向け、撃つ。ガルドの何度めかの絶叫が響き渡る。
「だが、楽に死ねると思うなよ。あいつらの受けた痛みと苦しみ、存分に味わえ」
「ひ、ひあぁぁぁぁぁあぁ! おい、てめえら! こ、こいつを、この魔王の子を何とかしろぉ!」
だが、ガルドの命令を聞くものは誰もいない。
「ガルドさん、悪いけど、あんたの命令は聞けませんや」
「ブランドンさんを怒らしちまったからな」
「巻き添えは御免でさあ」
部下はそれぞれ思い思いの言葉を投げ掛けると、その場から立ち去っていった。ここまでくると憐れだが、知った事ではない。というか人望無さすぎる。
「て、てめえら……」
「さて、再開だ」
「ヒィッ!」
俺は致命傷にならないよう急所を外しながら銃を撃つ。
「や、やめて、くれ……」
「お前はやめてと言った奴らに対して止めたことがあったのか?」
「ある! ちゃんと止めた」
「嘘ツキ。オキュペテーが止メテト何度モ言ッタノニ、止メズニ酷イコトシタ! 襲ワレタ!」
「……ふーん」
俺はガルドの股間を撃ち抜く。ガルドが声にならない絶叫をあげ、泡を吹く。股間部は血塗れになり、男としての部分が完全に破壊されたことを物語っている。これで強姦紛いの事は出来なくなった。尤も、端から生かすつもりもないからこれは唯の自己満足だけど。
泡を吹いて失神してしまったガルドを、今度は右大腿部を撃ち、意識を取り戻させる。
「んぎあぁぁああああ!」
「よう、目が覚めたか?」
「ひい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうしません逆らいませんだから殺さないで殺さないでぇえええええ!」
ガルドが子供のように泣きべそをかきながら許しを懇願してくる。そこには始めの荒々しい雰囲気は微塵も感じられない。
優しい人ならここで許してしまうのだろうが、当然、
「却下」
「うあああああああ! 鬼いいいいいいいい! 悪魔あああああああああ!」
「お前のような外道を殺すなら、鬼にも悪魔にもなってやるよ」
ただ、俺も面倒臭くなってきた。制裁もやった。果たしてダンとマリーにしたことに対して元を取ったのかは分からないが。
俺はガルドの頭部に銃口を向ける。
「あわわわわわわ、やめやめやめやめやめ――」
「灰は灰に、塵は塵に」
俺はガルドの頭部を撃ち抜き、愚かな男の全てを終わらせた。
色欲の粉の話がここまで長くなるとは……




