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2ー31 スラム

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思ったら評価やブクマ、感想等をしてくれると嬉しいです。レビューとかしてくれたら狂喜乱舞します。

 鳥姫館を後にした俺達は一度ギルドに戻ることになった。クリスト伯爵が言うには何でも、魔物を従魔した場合、色々と必要な届出がいるそうだ。ついでに言うと魔物を奴隷にすることは出来ない。その点でもシェーラは違反していたことになる訳だ。

 まあ、そんな訳でギルドに戻り、オキュペテーを従魔登録した。従魔紋を見せればいい話だが、場所が場所だし、それに間違われて狩られる、なんて事にもなりかねない。なので一目で従魔と分かるよう首輪を着ける事になっている。

 因みに何の変哲もない、ただの皮の首輪だ。別に無理矢理従えるような契約文は書かれていない。

 これは余談だが、この従魔と首輪と奴隷が着ける首輪は単に色違いなだけで、普通の借金奴隷は青、犯罪奴隷は赤、従魔は黒の首輪である。

 ただ、この事で、ちょっと一騒動ありまして――


「ソーマさん、まさか魔物の女の子まで誑しこむなんて……」


「あの、ポーリーさん? 俺、別に女誑しとか、そんなんじゃ……」


「わたしとユーフォリア様とシンシアさんを囲っといて、よくそんなこと言えますね」


 ……ぐうの音も出ねえ。


「ナアナア御主人、コノ雌モ御主人ノ番ナノカ?」


「めすっ!? つがいっ!?」


 オキュペテーよ、そんな雌だの番だの生々しく言わないで欲しいなあ。


「オキュペテー、他ノ雌ノ番ガ居テモ問題ナイヨ。雌ガ強イ雄二惹カレルノハ当タリ前」


「当たり前って……いやそれよりも、本当にソーマさんの従魔なんですか?」


「ソダヨ。ホラ」


 と、オキュペテーが服をたくしあげて件の紋章をポーリーに見せる。見せてしまう。


「どぉぅわぁぁぁぁぁあ! オキュペテー! 見せんでいいからぁぁぁぁぁあ!!」


 俺、魂の叫び。多分血涙モノ。


「……ソーマさん、破廉恥です。いくらなんでも破廉恥すぎます!!」


 俺か!? いや確かに、無意識とは言え不味いところ(下腹部)に紋章刻んだのは、そうだとは思うよ。けどさ、俺にハニートラップ仕掛けたポーリーが言えることだろうか?

 いやそれよりも、


「見えたか?」

「見えた」

「下着着けてなかったな……」

「そういう趣味とか……」

「けど眼福だったな……」

「良いもの見た……」

「ソーマには感謝してもしきれないな……」

「ああ……」


 一部の冒険者に見られてしまいました。こんなんで感謝されたくない。それどころか、


「ン? 見タイノ? ホラ」


「だから見せんなぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 後に、いつも裸で暮らしているから羞恥心なんてものが無い、というのが当のオキュペテーとナビーさんから語られることになるのだが、正直全然慰めにならない俺だった。



 ☆★☆★☆★



 半ば精神崩壊しかけた俺とオキュペテーはスラムにやって来た。

 この手のスラムは如何に善政を敷いても出来てしまうものらしく、現にこの街にも存在する。多額の借金を抱え、それから逃げてきた者や犯罪者。孤児等。そういう者達が集まってスラムが出来上がっていく。そしてそそんなスラムの一角にバージェス一家の邸宅がある。これで決着が着ければ良いのだが、最悪場所と外からの間取りを知っておきたい。

 問題は通路が迷路みたいになっていることか。おかげで辿り着けそうにない。


「なあ兄ちゃん、こんなとこに何しに来たんだい?」


「ほら、いつものアレじゃない? どっかの貴族様が飼ってる猫探しに来た人」


「えー、でもいつもの人と違うじゃん」


 二人の子供、男の子と女の子に声をかけられた。二人ともボロを纏っている。


――この子達に道を尋ねてみてはどうでしょうか?


 確かにその方がいいだろう。こういうのは土地勘のある人に頼るに限る。


「なあ君達、バージェスさんの家に行きたいんだけど、どう行けばいいのかな?」


「なんだい、兄ちゃん迷子? だっせえ」


「こら、恐らく初めて来た人なんだからそんな事言わないの」


 女の子が男の子を嗜める。まあ、女の子の方が精神的な成長は早いと言うし、背伸びしたいお年頃なのだろう。

 あと俺の事を見ても何とも思わないんだな。例の騒ぎの前は、子供は俺の事を怖がって近寄ろうともしなかったんだが。


 まあ、今もあまり近付かないが。


「迷子で間違ってないよ。正直今もどの辺にいるか分からないし」


 実際はナビーさんのオートマッピングで、どの辺にいるかは分かるけどね。バージェス一家の邸宅までの道のりは分からないのも事実なので迷子というのも強ち間違ってはいない。


「ほらみろ、やっぱ迷子じゃないか」


「だからって、そんな馬鹿にすることないじゃないの!」


「まあまあ、喧嘩しないで。それで、知ってるなら教えて欲しいんだけど」


「ん、いいけど、タダじゃあ出来ないね」


 男の子がニカッと笑う。どうもスラムの子供達は強かだ。



 ☆★☆★☆★



「うんめー! こんなうめえもん食ったの初めてだ」


「それにこの飲み物も。シュワシュワして美味しい! ありがとう、お兄ちゃん」


 俺は今、二人の子供(男の子はダン、女の子はマリーという)に道案内をされている。そして二人が口にしているのはメロンパンとコーラ。子供は甘いもの好きだろうと言う理由のチョイスだ。

 本当はおこずかい程度のお金――5ディール程を渡すつもりだったが、二人のお腹の虫がなったことで食べ物にしたのだ。

 喜んでいるところを見ると、正しいチョイスと言えよう。


「なあなあ、これもっとないのか?」


「ん? おう、たくさんあるぞ。欲しいならいくらでもやるぞ」


「ホントか!? やった、これでチビどもにも食べさせられる」


 ダンが満面の笑みを浮かべる。

 話を聞くと、時々やってくる冒険者の手伝い(主に猫探し)をしてこずかい程度のお金を貰うそうだ。そしてそのお金で二人よりも小さい子供達の食事を買ったりするらしい。なのでタダで食べ物が手に入るのは彼等にとって正に僥幸と言えよう。


「兄ちゃん、ブランドンのじーさんと同じくらいに優しいんだな」


「ブランドンのじーさん?」


 確かブランドンってバージェス一家の頭だよな。マフィアみたいに犯罪者の元締めみたいな、そんなイメージなんだが。


「じーさんはな、時々俺達に文字の読み書きや算術を教えてくれるんだ。それに御飯くれる時もあるんだぜ」


 うーむ。まさか慈善事業でそんなことするような善人とは思えないんだが。恐らく何か裏があるのだろう。けどそれでこの子達が助かっているのは事実だし。


「けどガルドのおっさんは嫌いだ。あいつ、すぐ蹴るし、稼いだ金取ってくし。けど何も言えねーんだ。あいつ、ブランドンじーさんの息子だから」


 反対にガルドの評価は頗る低かった。というか子供の金を巻き上げるとか屑の極みだな。


 因みに、マリーはオキュペテーと話し込んでいた。


「お姉ちゃん、手が羽根なんだあ。お空も飛べるの?」


「飛ベルヨ。オキュペテーハ、ハーピークィーンダカラネ」


「凄いなあ。それにお姉ちゃんの羽根、とっても綺麗……」


「欲シイノ? ジャア、ハイ。アゲル」


 オキュペテーが自分の羽根を一枚抜くと、マリーに渡した。


「え、いいの!?」


「ウン、スグ生エルカラネ」


「やったあ! お姉ちゃん、大事にするね!」


 向こうは向こうでいい感じだ。見ていて心が和むようだ。

 そして、そうこうするうちに目的の場所まで辿り着いた。


「着いたぜ。兄ちゃん、食いもんこんなにくれてありがとな」


「ありがとうございました」


「おう、他の奴に取られないように気を付けろよ」


 二人の子供は俺に礼を言うとそのまま立ち去っていった。

 改めて見ると、とてもスラムには似つかわしくない立派な豪邸だ。あばら家だらけのスラムの中に石造りの屋敷が一軒。凄い違和感がある。恐らくは自分の力、財力を誇示したいのだろう。しかも三階建て。


「さしずめユリシカの裏のボスってところか……さて」


 俺は意を決し、目の前の屋敷の門戸を叩いた。

 

 

 

ギルドの裏話的なアレ


「オキュペテーちゃん、可愛かったなあ」

「そうだなあ」

「また来てくれないかなあ」

「ソーマの従魔なんだろ。だったら一緒に来るだろ」

「それもそうだな……」

「……」

「なあ」

「なんだ?」

「ポーリーちゃんといい、お姫様といい、何でソーマの所ばかり可愛い娘が集まるんだ?」

「知るか」

「……」

「……」

「やっぱムカつくな」

「ああ……」

「……」

「……」

「なあ」

「なんだ?」

「オキュペテーちゃん、頼んだら見せてくんねーかなあ?」

「何を?」

「ナニを」


……オチは無い。


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