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2ー30 膿を吐き出す

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思ったら評価やブクマ、感想等をしてくれると嬉しいです。レビューとかしてくれたら狂喜乱舞します。

 シェーラを拘束し、階段を昇り一階に戻ると憲兵隊が数名居た。

 はてさて、呼んだ記憶は無いのだが。しかしやけに剣呑な雰囲気だな。


「あ、この人達は――」


「魔王の子! 不当に押し入り従業員に暴力を奮うばかりか店主をこのような目に合わせるとは! こいつを拘束しろ!」


 説明しようとしたら、とんだ冤罪かけられた。確かに従業員の男に暴力奮ったのは事実だし、シェーラもがっちり縄で縛っているからな。だからと言って決めつけるのはどうかと思うんだが。というか、先の従業員の男が呼んだな。ならあること無いこと言われても仕方ないのだが……


「あのですね――」


「言い訳するな。犯罪者はそうやってすぐ言い訳する」


「いや、こいつら色欲の粉(ラストパウダー)を――」


「そんなものある訳が無いだろうが。でまかせも程々にするんだな」


 さっきから俺が何か言おうとすると憲兵の一人が被せてくる。少し痩せぎすの男だ。着ている鎧も少し違う。ひょっとして偉い奴なのか。


「そうだよ、ウェズリー隊長。何にもしてないのにこの魔王の子はアタシを縛りやがったんだ。早く逮捕してくれよ」


 ここでシェーラが如何にも善良な被害者風に憲兵隊長――ウェズリーというのか――に、助けを乞う。

 だがそうは問屋が卸さない。

 俺はスマホで録音していた先のやり取りを流す。


『その妖鳥の潤滑液を何に使った? 店で使用するため、なんてアバウトな返答は無しな』


『……ローションだよ。滑りをよくするための』


『他には?』


『……色欲の粉の素材に使った』


『色欲の粉は何に使った?』


『客に渡して娼婦に使うんだよ』


 ここで停める。


「……何だ今のは?」

「魔王の子とシェーラさんの声に聞こえたが……」

「ひょっとして会話の内容を記録するものでも持っているのか? だとしたら凄い魔道具だぞ……」


 憲兵が今のを聞きざわつく。はい、最後の人大正解。魔道具じゃないけどね。

 さて、シェーラの反応だが。


「違う! 魔王の子が無理矢理言わせたんだ! こんな根も葉もないこと、信じないでくださいよ!」


 悪びれもせず、俺が無理矢理言わせた事にする。まあ、そうなんだけど。


「何処までも卑劣な……貴様、ただですむと思うなよ」


 シェーラの言葉を鵜呑みにし、意地でも俺を逮捕しようとするウェズリー隊長。

 何かおかしい。未だ黒髪差別が残っているから、俺を悪者にしようとしているのだろうが、それでもやけにシェーラを庇うな。

 まだ首輪を着けた状態だし、もう一度シェーラに尋ねる。


「シェーラ、もう一度質問するぞ。正直に答えろ。彼女から採取した妖鳥の潤滑液を何の材料にしたんだ?」


「色欲の粉だよ。何度も言わせないでくれるかい?」


 俺の質問に何の澱みもなく答えるシェーラに皆驚く。特にウェズリーが狼狽える。本当便利だね、この首輪は。あと一つ持っているけど黙っとこ。

 しかし何で隊長のウェズリーが狼狽えるかね。まさかとは思うが――


「シェーラ、会員の中にウェズリー隊長はいるか?」


「いる」


 ……会員ということはここで色欲の粉が使われていたことは知っている筈だ。ある程度予想していたとは言え、本当に憲兵の、それも隊長がグルだったとは。


「何を言っておるか! 出鱈目だ!」


 ウェズリーはそう言うが。


「生憎とシェーラには俺の質問に正直に答えるよう命令しているんでね。それに」


 俺はカウンターに隠されているであろう鍵を探す。まさか常に従業員やシェーラが持ち歩いている訳でもあるまい。

 程なくして鍵を見つける。それが金庫の鍵かどうかは分からないが、それは鍵を填めてみれば分かることだ。

 従業員の男やシェーラが騒いでいるが、知ったことではない。俺は金庫の鍵穴に鍵を差し込む。そして、カチリという音とともに金庫の扉が開いた。

 実のところ、『アンロック』でもよかったのだが、あまり広めてほしくないので敢えて鍵を探しだし、普通に鍵を使った。後々要らぬ誤解とか受けそうだし。まあ、それはさておき。


 金庫の中には、幾つかの紙包みと何かの書類、それと幾ばくかのお金が入っていた。お金は置いとくとして、紙包みの中にあるのが色欲の粉、書類が会員の名簿と帳簿だろう。

 俺は名簿の方を手に取り、名前を確認する。


「ちょっと、何勝手に見てんだい!?」


「そうだ! 店の物を勝手に漁るとは、歴とした犯罪行為だぞ。おい、早くその魔王の子を捕まえろ!」


 シェーラが喚き、ウェズリーが部下に指示を出すが。


「御主人ニハ、指一本触ラセナイ!」


 俺と憲兵との間にオキュペテーが割って入る。流石にハーピークィーンには太刀打ち出来ないのがわかっているだろう、憲兵達は二の足を踏む。

 そうこうするうちに俺は確認し終える。


「なあ、これにはウェズリーって名前が確りと書かれているんだけど。あ、死んだワイズの名前もある。……で、捕まえるべき人間は果たして誰だろうね」


 憲兵達は暫し悩んだあと、矛をウェズリーに向ける。


「……ウェズリー隊長、貴方を拘束します」


「な、お前ら、俺は貴様ら憲兵隊の隊長だぞ! そのような事をしていいと思っているのか!?」


 だが憲兵達はそんなウェズリーの言葉を無視する。これだけ証拠が揃っていればどうしようもないだろう。尤も、ウェズリーの命令を聞き、俺を捕らえようとする可能性もあったが、たかだか数人、取り抑え無力化することが出来る。というか、襲ってきたら間違いなくそいつらもウェズリーと同じ穴の狢なのだが。

 しかし、改めて名簿を見ると家名持ち、つまり貴族が数名いるな。こうなるとギルドマスターではなく、領主のクリスト伯爵に報せた方がいいかもしれない。というか、恐らく本当の依頼主はギルドマスターではなく、クリスト伯爵だろう。俺に実積を積ませる為に。

 俺は憲兵の一人に、この事をクリスト伯爵に報せるよう伝える。

 程なくしてクリスト伯爵及び数名の騎士が到着した。


「ほう、この者達が色欲の粉を……おい、この者達を牢に繋いでおけ」


 クリスト伯爵が騎士達に指示を出し、憐れシェーラとウェズリーは御用となった。

 尚、証拠の品の会員名簿と色欲の粉をクリスト伯爵に渡し、色欲の粉は即時処分、そして名簿に書かれていた者達も敢えなく御用となるのだった。

 

 名簿にワイズの名があったことからバージェス一家とは何らかの繋がりがあった筈。恐らくは首謀者であるガルドの元に俺の剣がある筈だ。なのでガルドに関しては俺に任せてほしい旨をクリスト伯爵に伝えたら、元からそのつもりだったのか、あっさりと了承してくれたのだった。


 因みに、奴隷の男は自らお縄になった。情状酌量の余地もあるし、彼の犯した――無理矢理犯させた罪はシェーラ一人に行くことになるだろう。恐らくシェーラは犯罪奴隷として鉱山送りになるだろうとクリスト伯爵は言っていたが、それって鉱山の奴隷達の慰み者になるということでは……正に因果応報、自業自得である。

 それと、鳥姫館の娼婦達だが、行方不明になっていたギルドの元受付嬢もいた。やはり重度の中毒症らしく、こちらは俺が解毒の魔法を使ったが、社会復帰するのはかなりの時間がかかるだろう。


 これで後はガルドとケリーの兄弟のみ――

 

2章は思ったよりもかなり長くなりそうです。

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