1ー7 野営での出来事 その3
何処だろう、ここは。
周囲を見渡せば、ただただ白い空間が広がる。
ああ、これは夢か。所謂明晰夢ってやつか。
しかし夢とはいえ、なんと殺風景なことか。面白味も何もない。折角の夢なんだから沢山の美女や美少女に囲われたハーレムとか、酒池肉林とか、そんなのが良かったのに。
「ハーレムじゃないけど、可愛い美少女ならいるよ」
何処からか聞き覚えのある声がした。見渡すと、一人の見知った女の子、りぃんちゃんがいた。
「久しぶり、て言うほど時間は経ってないかな」
そうだね。りぃんちゃんとデートしてから1日も経ってない。
「デート……ねえ、私とのデート、楽しかった?」
そりゃ勿論。そもそも生まれて初めてのデートだし、相手がこんな美少女なんだから楽しくない訳がない。
「そっか、良かった」
と、はにかむりぃんちゃん。夢の中でも相変わらず可愛い。
「えへへ、ありがと。ところで、さ、約束……覚えてる?」
約束?
「そう、約束と言うより契約なんだけど……」
契約? それって……
「この世界で私を見つけて。そして……」
思い出した。そして気付いた。俺何で銃を握ってんの? てか身体が勝手に……!
「私を、殺して」
銃口をりぃんちゃんに向ける。そして指を引き金にかけ、ゆっくりと――
☆★☆★☆★
「っ!!!!」
目が覚めた。なんて夢だ。悪夢にも程がある。暑くもないのに嫌な汗をかいている。
周囲を見渡せば、既に陽は落ち、深い闇の中。薪には火がくべられている。起きているのはヘンリエッタさんと銀髪碧眼、ポニーテールの女騎士エントゥアさんの二人だけ。
「大丈夫ですか? ソーマ様」
「大丈夫。夢見が悪かっただけだよ、ヘンリエッタさん」
あまり大丈夫とは言えないが、余計な心配はかけたくない。ストレージから水(500mlのペットボトル)を出し、一気に飲む。
しかし、俺いつの間に寝たんだ? その辺り記憶が無いんだが……
「食事を摂ったら直ぐにな。倒れるように眠りこけたぞ」
答えたのはヘンリエッタさんではなくエントゥアさんだった。
ヘンリエッタさんも美人だが、この人もかなりの美人だ。つり目で真面目そうな人だ。
「そう、ですか。実は俺、人を殺したの初めてで、それで気が昂っていたんだと思います」
「そうか、それで緊張の糸が切れて……か。ユーフォリアお嬢様が相当慌てて大変だったぞ」
自分で言ってて何だが、果たしてそうだろうか? 正直人を殺した罪悪感とかあまり無かったが、実際はかなりのストレスがたまっていたのだろうか。
「ところで状況を見るに、二人は見張りですか?」
「そうだ。二人づつ3交代で私達が最後の番だ」
「ヘンリエッタさんもですか?」
「はい。人手が足りませんので。ところでソーマ様、殺人を犯した後は無性に異性を抱きたくなるそうですが、その、私で良ければお相手を……」
ちょっと!? 何言ってんですかこの人は!? つかさりげなく服を脱ごうとしない!
「いやいやいや。第一エントゥアさんもいるでしょうが。何考えてんですかあんたは」
「あぁ、これは失礼。エントゥア様もご一緒に、ということですね」
「「んなっ!!」」
これにはエントゥアさんも驚く。いやしませんよ? 「わ、私も……一緒に…………」て何顔赤くしながらバカなこと言ってんの!? おかしいですよエントゥアさん!!
「だからしないってば。お誘いは非常に嬉しいけどさ」
「冗談です」
て冗談かい!
「ですが」
とヘンリエッタさんは俺の側に寄ると、俺の頭を胸に抱き寄せる。服の上からでも分かる位大きい。そして柔らかい。いやそうじゃなく。
「あ、あの……」
「ご自分では気付いていらっしゃらないかもしれませんが、酷く辛そうな顔をしていますよ。だから暫くはこのままで」
ヘンリエッタさんがそう言うからにはそうなのだろう。さっきの夢のこともある。やはり気が参ってたのかもしれない。
俺はヘンリエッタさんの厚意に甘えることにした。彼女は俺の頭を優しく撫でる。温かくて、そしていい匂いがした。
「ありがとうございます。大分落ち着きました」
「そうですか。それは宜しゅうございました」
あれからどれくらい経っただろうか、おそらくは十数分くらいか。ヘンリエッタは俺を離した。名残惜しくはあるが、このままだと劣情に身を任せとんでもないことをしかねない。
しかし、落ち着きはしたが、目が冴えてしまった。あとどれくらいで夜が明けるか分からないけど。
それはそうと、
「ところで二人は眠くないんですか?」
「眠くない、と言えば嘘になるが、我慢出来なくはない」
「メイドは朝が早いので。とは言え些か早すぎではございますね」
眠いらしい。ならば、と言うことで、二人に缶コーヒーを渡す。
「これは?」
「コーヒー。眠気覚ましにはなるよ」
二人は礼を言うと、
「あの、一体どうすれば……」
ああ、そっか、と開け方を教える。そして一口。
「苦っ」「これは……」
二人とも顔をしかめる。
「はは、慣れない人にはきついかもね。砂糖やミルクがあれば大分苦味を抑えられるけど、持ち合わせなくてさ」
砂糖とミルク加えるとあまり眠気飛ばないけどね、と付け加え、俺もコーヒーを飲む。
「こんな苦いもの、よく平気で飲めるな」
「慣れたからね。俺も最初はキツかった」
「お前な……もう少しマシなものは無いのか」
無くはないがさらにきついので(眠眠○破とか)敢えてスルー。因みにこの手の眠気覚ましや栄養ドリンクも一通りあり、やはり所持数無限大だったりする。
尚、ヘンリエッタさんは途中から普通に飲んでたが、エントゥアさんは苦い苦いと言いながら終始顔をしかめて飲んでいた。
「これでも彼の事が恐ろしいですか?」
「いや、先入観に囚われすぎていたようだ」
と、二人の会話が聞こえた。
夜の見張りの割には和やかな雰囲気だったが、ナビーさんの警告で終わりを告げる。
――警告。敵性反応有り。距離凡そ200m、数8、此方に気付き接近しつつあります。迎撃の準備を。
次回、戦闘です。




