2ー26 鳥姫館
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娼館は原則『○○館』という感じの店名だ。そして店名に因んだ出で立ちの娼婦がいる。
例えば『白猫館』だとフェルミナの様な半獣人の白猫人か、白い猫耳カチューシャに尻尾を着けている娼婦がいる。個人的に尻尾をどうやって固定しているのか凄く気になるところだが、永遠の謎としておこう。
――お尻の……
言わなくてよろしい。因みに、何故一度も足を運んだ事が無い俺が知ってるかと言うと、宿屋に宿泊してる行商人に聞いたからだ。
それはさておき、何故娼館の店名の説明なんかしたかというと、今、歓楽街の娼館区画に来ていたりする。それも真っ昼間から。
別に夜でも良かったのだが、余計な被害が出ないよう、客が少ない昼の方にしたのだ。一応娼館は昼でも経営している。まあ、真っ昼間から客引きはしていないのだが。
『サーチ』で調べた結果、この娼館のどれかに色欲の粉があるのが分かった。ただ『サーチ』では大まかな場所しか分からない。なのでナビーさんのオートマッピングで埋まった脳内の地図にもマーキングしている。こっちは宛らGPSといった所だろう。
それで色欲の粉の反応がある娼館の前に来たのだが。ここで合っているのか?
――はい、マスター。この娼館から反応があります。
鳥姫館。
看板にはそう書いてある。名前からして鳥の羽をあしらった服装の娼婦がいるのだろうか。
……派手派手しいな。某カーニバルの衣装が頭の中に過った。
まあ、どうでもいいか。それに中に入れば分かる事だろう。俺は鳥姫館の扉を開け、足を踏み入れる。
中は昼間にも関わらず薄暗い。何か独特の甘い匂いもする。
「いらっしゃいませ、お客様。ここは会員制となっております。会員証、または会員からの紹介状はありますか?」
この娼館の従業員であろうか。身なりの良い服を着た壮年の男が俺に尋ねてきた。口調は丁寧だが、どこか剣呑な雰囲気を醸し出している。この段階で真っ当な店でないのが分かった。
「へぇ、会員制なのか。生憎どちらも持ち合わせてはいないな」
「ならばお引き取りを」
「いや、ここに用があるんでね。通らしてもらうよ」
従業員の制止を聞かず、奥に入ろうとする俺だが、従業員が道を塞ぐ。
「困りますな。その様なことを勝手になされては。おい! このお方を外に連れ出しなさい。丁重に、な」
従業員の男がそう言い、踵を返すと同時にガタイの良い強面の男が現れた。用心棒か何かのつもりだろう。拳を鳴らしながら俺に迫る。
「おら、痛い目見たくなけりゃさっさと帰んな」
強面の男が俺を威圧するが……正直その手の奴には慣れてしまった。元の世界の俺だと確実に足がすくんで動けなかっただろうが。それにこの男見かけ倒しだし。
俺は溜め息を吐く。そして、
「邪魔」
用心棒の男にボディブローをかます。その一撃は綺麗に鳩尾に入り、男は悶絶し倒れる。
「……ほう。そういえば貴方は魔王の子でしたな。それもかなりの腕利き、彼程度では太刀打ち出来ませんか」
俺と用心棒とのやり取りに従業員の男が感心したような口を開く。
「なら素直に通してくれない?」
「生憎と貴方のような不躾な者を追い出すのが私のもう一つの仕事でして」
従業員の男がそう言うと戦闘体勢をとる。武器は手にしてないようだ。何らかの格闘術でも学んでいるのか徒手空拳で俺に相対し、拳を繰り出す。
「シッ!」
顔面にむけての鋭い一撃。俺はそれを紙一重でかわす。舐めてたり、実力の足りない者は避けられると驚いたりするのだが、彼は違うようで、攻撃をかわされても「ほう、流石ですな」と言うだけで連打を繰り出す。時には蹴りも混ぜるが、全てを避け、受け止める。
「なかなかに強いね、あんた」
「お褒めに預かり恐悦至極っ!」
そう言いながらも蹴りを入れる。俺はそれに合わせてカウンターで脛を蹴る。
「ぐ! っー!」
その痛みに男は動きを止める。その隙に俺は懐に入り込み、左手を鳩尾に、右手を下顎に添え、同時に掌底を放つ。
「があっ!」
男は悶絶し、そのまま動かなくなる。今まで受けたことの無いようなダメージだったのだろう、立ち上がる事も出来ない。
「ぐ、うぅ、ま、待て……」
このような状況で、待てと言われて待つ馬鹿はいない。俺は『シーク』を発動させる。『シーク』は有効範囲が狭い代わりに精度は高い。反応はカウンターの奥の扉から。扉を開けると、金庫と地下に降りる階段。
反応は金庫内からだが、それよりも地下が気になる。俺は意を決して地下に続く階段を降りていく。
階段を降りきると木製の扉があった。地下室とかますます怪しい。開けようとするも鍵が掛かっているようだ。とりあえず俺は扉に耳を近付けると――
『……ヤダァ……コト…………デェ……』
女の子の声が聞こえる。扉に阻まれてよく聞こえないが、酷いことを受けている、というのは理解出来た。
あまりモタモタしてられない。強引な手だが、俺は扉を思いきり蹴破った。
案の定、中は地下室になっており、中には男が一人、女が二人居る。いきなりの闖入者に皆動きが固まる。
男の方は殆ど裸のような出で立ちで、俺よりも背は低いものの筋肉が凄い。そして猿轡を噛まされ、首輪を着けている。女の内一人は真っ赤なドレスを着ている。髪と瞳は藍色、かなり我が強そうな、と言うかきつそうな感じだ。
「ちょっと!? あんた何者だい! 勝手に入ってこないでくれるかい!」
赤いドレスの女がいち早く我に帰ったのか喚きたてる。だが、そんなことはどうでもいい。
何しろ、もう一人は男に襲われそうになっていたのだ。あられもない姿で鎖で吊られ、固定されている。足は大きく広げられ、裸体を惜しげもなく晒している。青いショートカットの髪に大きな金色の瞳、細い眉。美女、というより美少女だ。形良い、程よく膨らんだ胸、細い腰。だが彼女は人間では、人ではなかった。
腕は鳥のような翼、膝から下も鳥の鉤爪を有している。腰からも鳥特有の尾羽根が生えている。
鎖に繋がれて泣いている女の子はハーピーだった。それも、
「……タスケテ……モウ……ヒドイコト、シナイデ……」
――マスター、この娘は……
ハーピーの上位種、ハーピークィーンだった。
実は出す予定が全く無かったハーピークィーンです。
急に頭に浮かんだんだよ……そういうことあるだろ……




