2ー16 黄金の林檎亭の今日の朝御飯
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目が覚めた。
外は陽は出てないものの東の空が徐々に明るくなっており、もう間もなく夜が明けようとしている。
――おはようございます、マスター。地球時間で言えば5時半といったところでしょうか。
なんとも早い起床である。社畜時代の頃とほぼ同じ時間に目が覚めたことになる。尤も、寝不足という訳ではない。この世界に来てからは夜にすることが何もない為、早く寝てしまうからだ。おかげで元の世界と比べて健康的な生活を送れている。
それにしても何でこんな時間に目が覚めてしまうのか。
服を着替え、一階に降りると、食堂は灯りを落としておりまだ暗い。一方で厨房は灯りが灯っており、良い匂いがした。どうやらアンナちゃんのお父さんが朝食の準備をしているようだ。俺以外の宿泊客には朝が早い人もいるからその為だろう。
リサさんとアンナちゃんは居ない。多分朝市に行っているのだろう。まあ、暫くすれば戻って来る筈だし、待つとしよう。
ライトの魔法で手元を明るくし、本を取り出す。この世界のものではなく、俺が元々持っていたもの――要するに元の世界の小説、というかラノベだ。一度完読しているのだが、暇を潰すには調度良い。
因みに内容は、女勇者の奉仕奴隷になるよう脅されたショタ主人公が、勇者パーティを離脱し、その後何故か褐色エルフを奴隷にしてご奉仕(意味深)される話である。
……これ、某小説投稿サイトに続きが投稿されてるんだけど、続きどうなったのかなぁ。投稿されてる分は読んだけど、続きが気になる。もう読めないけど。
スマホを始め、様々な家電製品がストレージ内に入っているけど、電気が通ってないから全く使えない為、死蔵している状態だ。スマホは使えるけど、当然電波が届いてないから圏外である。カメラ機能位しか使えん。しかも電池が切れればお終いである。
この世界に来て最大の弊害がこれなんだよな。ネット繋がらないかなぁ……繋がらない?
――繋がりません。
とほー。仕方ないから本読んで暇潰しだ。
「ただいまー。あ、お兄ちゃんおはよー」
暫くするとアンナちゃん達が帰ってきた。俺は読んでる所に栞を挟み、ストレージに直す。
「ねえねえ、何読んでたの?」
「俺が居た国の小説」
「え、読んでみたい」
「……多分読めないと思うよ」
「ちぇー、残念」
それに挿絵が些か過激というかなんというか。女の子にはちょっと見せられないかな。一般書籍だから一応は健全なんだけどね。KENZENなんだけどね!
因みに、他に持っている本は激強魔物の幼体(見た目は猫)に生まれ変わった主人公がエルフとにゃんにゃん(意味深)する話とか。
意味深ばっかだな、おい。
☆★☆★☆★
アンナちゃん達が帰ってきて、朝市で店を出していた行商の人が戻ってくると、朝食が運ばれてきた。
本日の献立はエッグベネディクトにポテトサラダ、パンが二つ、そしてオレンジジュースだ。尚、パンとオレンジジュースはお代わり可。
この宿屋の朝食は何故か卵料理が多い。残念ながら日本人のソウルフードである卵かけご飯は無い。
まあ滅菌処理しないとサルモネラ菌とかで腹壊すから仕方ないけど。
TKGで思い出したが、この世界にも米はあるし、米を使った料理もある。リゾットとかドリアとか。ただ、やはりパン食が主流なので、そう食べる機会がない。
理由は麦より米の方が高いからだ。主に麦を生産しているし、米は大半が隣国(といっても砂漠を挟んでいるからかなり離れているのだが)であるレン国からの輸入品。その為どうしても値がはってしまう。日常的に食べるには向いてないのだ。
それは兎も角、エッグベネディクトねえ……
別に嫌いじゃないんだが、と言うか好きな方だが、何でニューヨーク発祥の料理が普通に出てくるかね。
――勇者の誰かが伝えたのでは?
多分そうだろう。前に朝食でハンバーガーが出たときは思わず「ジャンクかよ」とツッコミいれたこともある。
いや美味いから良いけどね。
ビバジャンクフード。
ともあれ一口。相変わらず美味い。そこまで舌が肥えてる訳じゃないので美味いとしか表現出来ないのが口惜しい。
あっという間に食べ干してしまった。冒険者を生業としてるから些か足りないのでパンとジュースはお代わりした。
「御馳走様、相変わらず美味かったよ」
「そうかい、そりゃ良かった。朝食が不味いとそれだけで今日のやる気が削がれるからね」
リサさんの言う通り、朝食は朝の活力だ。味の良し悪しでやる気に差が出るのは仕方がないことだ。だからこそ、美味い朝食を出してくれるのだろう。その心遣いに感謝である。
「おはようございます。おや、かなり早いですね」
朝食を食べ終わるとマシューが降りてきた。そう言えばマシューも普段から朝が早いんだっけ。
「やっぱり朝のお祈り?」
「はい」
神官らしく朝のお祈りは欠かさないそうだ。
「今日の朝食はエッグベネディクトだよ」
「ほう、それは楽しみです」
マシューが席につく。それから運ばれる前に色々と話をした。
マシューは神官だが肉も食べる。これは白神教に限らず、黒神教やルミナス教にも言えるのだが、別に食肉は禁じられていない。普通に肉を食べるそうだ。中には菜食主義者もいるそうだが。
暫くするとドルトス、シンシアの順で降りてきた。
シンシアが俺の膝の上に座ってもたれかかる。
「ん、私の、指定席」
マシューが生暖かい目で俺達を見ている。ドルトスは……全身鎧姿なので分からん。
「仲が良ろしいようですな。大変結構」
「ん。相思相愛」
シンシアさんや、勝手なこと言わないでくれます? いや嫌いじゃないけどさ。
しかしこれは他の人の目に入ってしまう。シンシアは気にしないだろうが俺は気にする。
俺は調度良い所にあるシンシアの頭、そのこめかみに拳を当て、
ぐりぐりぐりぐり。
「痛い痛い痛い痛い」
「ならさっさと降りて席につけ」
「ここが私の――」
ぐりぐりぐりぐり。
「痛い痛い痛い痛い。降りる、降りるー」
と、漸く俺から降り、隣の席に座る。
このぐりぐりーってやつ、ガキの頃にやられたなー。結構痛いんだよ。まさか自分がする方になるとは思わなかった。
「うう、ソーマに傷物にされた。責任とって」
なんでやねん。
「ソーマ殿、そのこめかみに拳を当てて、ぐりぐりーってするのは」
マシューが聞いてきたので、俺の実体験を語った。
「成る程、悪さをした子へのお仕置きで、ですか……」
「ああ。大抵はこれで言うこときく。今のシンシアみたいに」
「ほう、それはそれは」
マシューが良いことを聞いたみたいな顔をする。誰か躾るような悪ガキでもいるのかね?
今なら体罰! とかで騒がれるんだろうな。けど痛みで分からせなきゃいけない時もあると俺は思うんだ。でも虐待は駄目だぞ。躾と虐待は全くの別物だからな。
まあ、それは兎も角。
シンシア達にも朝食が運ばれ、皆が食べ終わった頃にアルザードとエレナが漸く降りてきた。
「おはよー……頭痛い」
「飲みすぎだ。ソーマの忠告はちゃんと聞くべきだったな」
「だってぇ、美味しかったんだもん……あ、いたた」
エレナ、どうやら二日酔いの模様。
実は昨日、エレナはやはり一杯だけでは足りない、とか言ってその後も二杯、三杯と飲んだ。口当たりの割りに酒精の強い酒だから案の定足腰が立たなくなっていた。その後、アルザードが部屋まで送っていったのだが……
「やったな」
「やったね」
「やりましたな」
「やった、な」
俺含め四者皆同じ意見だった。なら言うことは一つ。
「「「「昨晩はお楽しみでしたね」」」」
「んなっ!?」
「ちょ、違っ!? いや違くないけどっ! アルがっ!」
「さ、誘ってきたのはエレナの方じゃないか!」
「酔ってたから覚えてませーん」
嘘だな。やはり他の皆も同意見のようだ。二人の様子を微笑ましく見遣る。特にエレナに。
「ち、違うんだからね!? アルとはそういう関係じゃないんだからね!?」
エレナ、ツンデレ乙。
この話、ちょっと難産した。
あと、ちゃっかりとある作家さんの書籍がタイトルこそ出してないものの本文中に出てますが、面白いですよ。
あまり人様の作品を出すのはアレかなー、とも思いましたが、しっかりと許可は得てます。
ありがとうございましたm(_ _)m




