2ー15 模擬戦と『百年の孤独』
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あれから俺達は迷宮から戻ってきた。元々その予定だったし、それに俺とマシューのMPが心許ない。
因みに、第2層ボスがドロップした宝箱からは、快魔の護符という装飾品が出てきた。装備してると徐々にMPが回復(凡そ3分で1回復)するという効果があり、これはエレナが持つことになった。
それにしても、転位魔法は存在しないとか言いながら、各階層へ転位する魔方陣はあるんだよな……最初から無いのか、はたまた失伝してしまったのか。
――転位魔法は存在します。ただ使用出来る人間が居ないだけです。
あるのか。便利だろうからその内覚えたいところだ。
兎も角、俺達はユリシカの街に帰ろうとしたのだが。
「ちっ、生きてやがったか」
迷宮の入口を見張る衛兵が悪態を吐く。って入る時と同じやつじゃん。
「おい、魔王の子。どうせ暁の皆さんの後ろに隠れてただけなんだろう」
「そんなことはない。ソーマは凄く貢献した。勝手な憶測を言わないで」
シンシアが擁護するも、衛兵は一切信じようとしない。それどころか俺に肩入れするシンシアにも悪態を吐く。俺の事は兎も角、シンシアを貶すとは流石にカチンときた。
「そんなに言うなら今ここで模擬戦でもしようか?」
と、俺が言うと、衛兵はあっさりと了承した。
「いいぞ。魔王の子の化けの皮を剥がしてやる。おい! 誰か審判を頼む」
なら俺が、とアルザードが買って出ようとするも、それは魔王の子を贔屓するから駄目だと衛兵が言ってくる。だったらと交代要員の別の衛兵が引き受けることになった。
ただ、その衛兵は俺の事を知っていたらしく「おい、止めとけ」と俺と模擬戦をする衛兵に制止を促すが、全く聞く耳を持たず、それどころか「何だ? 俺が魔王の子を殺しちまうから止めろって言うのか」という始末。処置なしと諦めたのか、審判の衛兵が俺に「痛い目にあわせてやって下さい」とか言ってきた。
そのつもりなんだけどね。
ところで、模擬戦とか言いながら、むこうは刃引きしないハルバードなんか使うんだ。殺す気満々じゃねーか。それなら俺はホブゴブリンが落とした剣を使うか。
それと何気にギャラリーが増えているんだが。しかもどっちが勝つか賭けてやがる。一番最後に賭けたアルザード始め、暁の面々を見て、衛兵に賭けた面々はがっくりしている。或いは一縷の望みに賭けているのか。
俺と衛兵が相対する。距離は10mも無いか。互いに構える。
「では各々準備宜しいですね。では、始めっ!」
☆★☆★☆★
まあ、結論から言ってしまえば俺の圧勝だった。技量、身体能力、どれをとっても俺の方が高く、それにほぼ毎日実戦と訓練をしていたのだ。負ける要素が無かった。ただあっさりと勝負が終わってしまったので、衛兵が「納得いかん!」と何度も吹っ掛けてきたので、その都度返り討ちにした。しかも途中からは俺は素手である。
最後は立つこともままならず、「すいませんでした、もう勘弁してください」と謝ってたっけ。因みに途中からは俺が吹っ掛けた。大人げないとは思うが反省はしていない。
「鬼かお前は」
とはドルトスの言である。
銃と魔法を使わなかっただけまだ優しいと思うぞ。
さて、ここで買い取りするにはあまりにも多すぎるので(主に魔石が)、時間も遅くなるだろうからと、街に戻り後日ギルドで売る事にし、黄金の林檎亭へと戻った。
で、まあ、後は最早定番となりつつある暁の面々との宴会である。
仕事終わりなのか、ガラフとモーラ、それと珍しい事にウルフリードも居る。混んでいるので彼らと相席する事になってしまったが、知った仲なので別に問題は無い。そう言えば、良くラノベではエルフは菜食主義者だっりするので、その事についてウルフリードに聞いてみたら、
「普通に肉は食うぞ。第一、だったら何故エルフは弓を使うのだ。あれは外敵から身を守るだけでなく獲物を狩るためでもあるのだぞ」
とのこと。正論過ぎて納得したわ。
「そう言えば、例の黄色い箱の携帯食、結構売れてるんだな」
「そうだな。やはり保存食と比べて固くなく、食べやすいから手頃に済ませられる。味も悪くない。三種類しかないが、売れ行きは好調だ。補充が少なくなってきたからまた仕入れたい」
ならまた後日持ってくるということでその件は話がついた。因みに、アルザードとエレナはチーズ、マシューはフルーツ、ドルトスはチョコがお気に入りで、シンシアは満遍なく買っている。どうでもいいけどシンシアよ、「ソーマの愛を感じる」と言いながら、アイスキャンディを舐めるように舌を這わせ、口に咥えたブロックを前後に動かしつつ食べるの止めてくれませんかねえ。俺もだけどアルザード達もドン引きしてたぞ。てかどこで身につけた。
あとガラフにも後日伺う事を伝える。
「良い素材が手に入ったから、防具を作ってほしいんだ」
「一応聞くが、その素材はなんじゃ?」
「灰鬼の皮」
「ほう! そいつはなかなかに良いものを。いつでも持ってくるがいい。こいつは久々に腕の振るい甲斐がありそうな仕事じゃ」
ガラフはそう言うと、手にしたビールを一気に煽る。やはり根っからの職人気質なのだろう。
「というわけで前払いぢゃ。何か強い酒を出してくれ。あ、スピリタスは駄目ぢゃからな」
スピリタスを出そうとするも、ガラフに先手を打たれてしまった。以前強い酒はないかと聞いてきたので、ならばとスピリタスを出したのだが……まさかラッパ飲みするとは思わなかった。流石に酒に強いドワーフでもぶっ倒れた。あれ以降をスピリタスだけは手を出そうとはしない。
――カクテル用ですからね。さしものドワーフでもアルコール97%は耐えれませんか。
まあ普通に火を吹くしな。ならあれか、と、酒を一瓶取り出す。ラベルには『百年の孤独』と書かれている。アルコール度数40%の焼酎だ。ペトリュス程じゃないが、これもなかなか手に入らない一品だ。てか元々は誰が持ってたんだ、これ。
――課長です。
あー、課長かー。どうしてるんだろうね。今となってはどうでもいいけど。それはさておき。
俺はここに居る人数分のグラスを持ってきてもらい(そういやそこそこ高価だけど硝子在るんだよな)、一人ずつ注いでいく。流石にラッパ飲みで二度も酷い目にあったのでガラフも大人しい。
「俺達もいいのか?」
「感想とか聞きたいし。好評なら黄金の林檎亭に卸そうかな、と」
「それならアタシにも一杯貰えないかね?」
話を聞いてたのか、リサさんがねだってきた。まあ予想してたし、こちらとしても調度いい。という訳でリサさんにも注ぐ。
「ところで、何て名前の酒なんだい?」
「焼酎っていう蒸留酒です。銘柄は『百年の孤独』」
「それはまたエルフにピッタリな名前じゃのう」
「どういう意味だ、それは」
ガラフの冗談にウルフリードが噛みつく。この世界のエルフとドワーフは然程仲が悪い訳では無いのだが、どうもこの二人は仲が悪いらしい。或いは喧嘩するほど仲が良い、というやつだろうか。
兎も角、全員に注ぎ終わり、乾杯の音頭をとる。
「そんじゃ改めて乾杯!」
と、グラスをチンと合わせ、一口。
「ほう、これは美味いのう」
「まろやかで、口当たりが良いわね。これならまだいけそうね」
「うん、これはイケる。お客人、頼めるかい?」
概ね好評のようだ。特にエレナが気に入った模様。リサさんも気に入ったようだ。その内この店にも並ぶ事だろう。ただなあ。
「あ、この酒結構強いから。あんまり飲みすぎると足が立たなくなるぞ」
「そうなの? ……じゃあ一杯だけにしとくわ」
エレナは少し残念そうな顔をしながらもゆっくりと味わう。
「その方が良いだろうな。いつアルザードが狼になってもおかしくない」
「おいドルトス、そりゃどういう意味だ?」
「良いではないですか。お互い愛し合っているですし、好きな者同士の子孫繁栄は悪いことではありませんから」
「おい!」
「ちょっと! アルとはそういう関係じゃないんだからね!」
アルザードとエレナがドルトスとマシューに良いようにあしらわれる。酒のせいでもあるのだろうがエレナは顔が真っ赤だ。
それにしても、中々に珍しい光景だな。てか何気にエレナはアルザードの事を『アル』と呼んでいるんだが気付いているのだろうか。しかも発言が……やはりエレナはツンデレか。アルザード限定の。
しかし、ふーん。アルザードとエレナはそういう関係だったのか……ふーん。
「もげろ」
「ソーマにだけは言われたくねーよ!」
実は百年の孤独は飲んだことありません。飲みたくても機会がありません。まあ焼酎が駄目で忌避感があるのも飲まない理由の一つですが……




