2ー14 ユリシカ迷宮第2層 ボス部屋 VS騒霊
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俺の激励のおかげで、シンシアが無双モードに突入し、第2層の攻略はあっという間だった。たまに背後からの奇襲染みたのがあったが、それもマシューのターンアンデッドであっさりと文字通り昇天させた。
ただ、俺の精神ダメージはゴリゴリと削られていったが……
アレって言う方にも精神ダメージ来るのな。皆の俺を見る目が生暖かい。
「好きな人に、声援を送られると、あんなに気持ちいいの、知らなかった。もっと、送っても、いいんだよ?」
シンシアが恍惚な笑みを浮かべて言った。その表情と発言が何とも如何わしく思えるのは俺だけですかねえ!?
因みに、シンシアとマシュー以外は魔石の回収でした。だってすること無いんだもん。警戒はしてたけどすぐにシンシアが撃ち抜くし、マシューが昇天させるし……
結局一時間とかからずに目的地に着いてしまったよ。
「それで、ここで出るボスだが――」
アルザードが言うにはスケルトンナイトかレイスナイト、騎士というだけあってガッチリと鎧を着込んでいる。勿論盾も装備している。そのせいか、厄介なことに聖光弓の光の矢が鎧や盾に阻まれて通りにくい。
この世界の魔法は抵抗以外にも防ぐ事が出来るので、ドルトスのように全身鎧に大盾というのも割りと理に叶ってるのだ。尤も、それも魔法の種類によるのだが、それは兎も角。
ボス戦ではマシューが鍵になっている。俺もターンアンデッドは使えるのだが、イメージが上手く沸かないのか、無詠唱で発動させることは出来ない。これはマシューも同じだが、慣れているのか詠唱が頗る早い。
「それじゃマシュー、任せた。頼むぜ」
「はい、アルザード。任されましょう」
マシューが自信満々に頷き、俺達は第2層のボス部屋である館の中へ入る。
中は大きな広間となっていた。洋館宜しく、様々な調度品が置かれている。壺や額縁に納まった古めかしい絵画等の美術品。幾つものテーブルにはナイフにフォーク、皿等の食器、燭台。当然椅子も設置してある。そして天井には巨大なシャンデリア。今から晩餐会でも始まるかのような雰囲気だ。
「邪魔なものが多いな……」
アルザードが愚痴る。確かに絵画とかは兎も角、テーブルや椅子は邪魔だ。いつもこうなのだろうか?
「こんなの、前入った時は無かったのに。これは大分動きが制限されるわね」
エレナの発言でこれがいつもと違うことが分かった。動きを阻害するため? 否、なにか他に理由がある筈だ。
そうこうしている内に魔物が湧いて出てくる。鎧を着込んだ骸骨と、中身の無い鎧、スケルトンナイトとレイスナイト。それぞれ三体ずつ。
「来やがったな……ちと多いが手筈通りにいくぞ」
俺達はマシューを中心に円陣を組む。ターンアンデッドは自分を中心とした半径5mのアンデッドを浄化する。ある程度近づいたところをマシューのターンアンデッドで一網打尽にする、というのが今回の作戦だ。
徐々に近付くアンデッドの騎士。範囲に入りきったところでマシューが詠唱を開始――と同時に何かがマシュー目掛けて飛んできた。それを俺がマジックバックラーで弾く。
飛んできたのは一本のナイフ。それと同時に部屋に置いてあるものがガタガタと揺れ出す。そしてテーブルや食器等が宙に浮き、俺達に目掛けて飛んできた!
「ちょ、何だよこれは!?」
「こんな状況でマシューを守りながら!? 自分の身を守るだけで精一杯じゃない!」
「こんなの、初めて……っ!」
とてもではないが、これではマシューを守りながら――ああ、いや、一つあるわ。俺はプロテクションをかける。プロテクションは対象を攻撃から守る範囲型魔法だ。丸い半球状のバリアみたいなものと言えば分かりやすい。因みにある程度ダメージが行くと某ロボットアニメのバリア宜しくパリンと割れる。
それにしてもこの状況、ホラー映画で観たことあるぞ。
「ポルターガイスト……」
俺が呟くと皆俺を見る。
「ポルターガイスト!? ……って何?」
って、シンシア知らんのかい。マシューを見ると首を横に振る。どうやら皆聞いたことがないようだ。
ポルターガイスト、何か物が動く現象で、一説によると多感な子供が起こすとかどうとか。この辺うろ覚えだが、無論ここに子供はいない。となると何らかの霊体が引き起こしていることになる。皆の様子を見るに、レイスナイトが引き起こしてる訳ではないだろう。つまり、ここのボスはスケルトンナイトでもレイスナイトでもなく、この現象を起こしているもの、となる。
「あー、つまり何だ。そのポルターガイスト? を倒せばいい訳か。ならやることは変わらんな」
アルザードの言う通り、確かにやることは変わらない。ただ、問題が一つ。
「ですがそのポルターガイストがどこにいるか分かりません。ターンアンデッドの範囲外かもしれませんし……聖域を使うしか無いですね」
マシューの言う通り、ポルターガイスト(正体不明の魔物、アンデッドだがそう呼称する)がターンアンデッド範囲外にいる可能性が高い。それにしても聖域か。
聖域はかなり有名な神聖魔法だ。ターンアンデッドの上位互換ともいえる魔法で、範囲がやたらと広く(少なくともこのボス部屋全部が効果内)、アンデッドなら浄化、悪魔は弱体化、そのうえ俺らは能力向上という、ある意味チート魔法といえる。必要なLvは4、当然俺は使えない。欠点は無詠唱はほぼ無理且つ詠唱が長いこと、そして消費が激しいこと。コントロールウェザーに匹敵する消費量である。それをマシューが使える。ならば使わない手はない。
「どうせ今日はここで終いだ。MPに気にせずやっちまえ!」
アルザードがそう言うと同時に詠唱に入る。俺がかけたプロテクションは強固なのか、食器やテーブルは勿論、スケルトンナイトとレイスナイトの攻撃も防ぐ。これならなんとかなると思い、ふと天井を見上げると、シャンデリアが激しく揺れていた。
おいおい、まさか……やな予感がしたと同時にガキン、と何かが外れるような音。そして――
「全員、その場から離れろぉっ!!」
俺は叫び、マシューを抱えその場を離れる。アルザード達も俺の言葉に疑問も持たずにすぐさまその場を離れ、そして俺達がさっきまでいた場所にシャンデリアが落下した。
「うわ、あぶねー……」
「良く気が付いたな。あのままだと全員あの世行きだった」
「本当、間一髪だったわ……」
「すみません、ソーマ殿、助かりました」
「今度は私を抱えて」
最後のシンシアの発言は置いとくして、本当にギリギリだった。後少し気付くのが遅れていたら助からなかっただろう。
だが、これでプロテクションの効果は無くなった。と言うかプロテクション範囲外に出たから効果も何もないのだが。そして襲いかかる調度品の数々。元の状態に戻ってしまった。
「ああくそっ! またプロテクションかけ直すのか!?」
アルザードが声を荒げる。それでもいいが、またあのシャンデリアをぶつけられたら意味が無い。
「なあ、MP消費はもう気にしなくていいんだよな? それなら俺が何とかする」
「何とかするって……出来るんだな?」
俺は首肯する。
「なら任せる!」
さて任された。今から使う魔法は、本来そこまでMPを消費することはない。ただ効果を上げると消費量が増えるのだ。その魔法は――
「くらえ、『グラビティ』!」
グラビティ。闇属性魔法Lv2。闇は名前の通り闇を司るが、それと同時に重力も司る。名前の通り重くしたり軽くしたり出来、その消費は2とたかが知れるが消費量を増やすことで効果が上昇する。2倍、3倍と消費量を増やすごとに、効果は2倍、4倍と上昇する。今回の消費量は32。ざっと65536倍である。
今まで飛び回っていた調度品全てが床に叩きつけられる。シャンデリアに至っては完全にひしゃげている。スケルトンナイトとレイスナイトも潰れている。尤も、レイスナイトは本体が霊体なので本体は無傷なのだが。勿論、俺やアルザード達は対象外。
「マシュー、早くしてくれ……あまく長くもたないっ」
グラビティは効果を持たせるその間、MPを消費し続ける。凡そ10秒で効果分、今回で言えば32ものMPを消費する。第1層で消費したぶん、30秒くらいしか持たない。
マシューが詠唱を始めるが、重力とか一切関係ないレイスが俺とマシューに襲いかかる。だがそれをシンシアが撃ち抜く。
「貸し」
「グラビティで飛び回ってるの動かなくしてることでチャラにならないかねえ?」
シンシアの言葉に軽口で返すが、実際は魔法に集中してないといけないので余裕はない。それに体感時間も長く感じる。まだか? まだか!? もうもたないぞ。
そんな心の声が届いたのか、詠唱が終わる。そして――
「神聖なる領域よ、ここに。『聖域』!」
部屋全体が淡い光に包まれてゆく。それはとても清らかな、清浄な光だ。そして何者かの叫び声が聞こえると同時にこの部屋のアンデッドは全て浄化されたのだった。
ポルターガイスト自体はそこまで強くないです。ただ、目に見えないのが厄介でしょうか。あとポルターガイストがいる場所の置いてある物によって危険度が増します。




