2ー10 ユリシカ迷宮第一層 魔物部屋その1
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迷宮内を歩く。時々魔物と遭遇してはそれを倒していく。皆等級に相応しい実力の持ち主で、その中でもアルザードが抜きん出ていた。
二つ名は伊達ではない様で、オーガを一刀両断してみせた。武器もそうだが、その膂力が凄まじい。そんな彼が持つのは幅広の大剣で、魔法の剣、魔剣だそうだ。名前はそのままズバリ、オーガキラー。何の捻りも無いがオーガを始め、悪鬼系特効の剣だそうだ。
尚、魔剣を始めとした魔法の武具は滅多にお目にかかるものではない。少なくとも現在では造られていないそうなので、その技術は失われているのだろう。尤も、付与魔法のLvを5まで上げれば永続付与なる魔法が使えるので、それを使えば魔法の武具は出来るのだが。
因みに魔道具と魔法の武具は全くの別物である。
それにしても、さっきから出会すのは悪鬼系、つまりゴブリンとその亜種、オーク、オーガばかりだな。他の魔物は出ないのだろうか。
「第一層は、悪鬼系の魔物しか出ない。だから第一層は、悪鬼の巣窟、とも言われる」
シンシアが説明する。何でもここ、ユリシカ迷宮は層毎に出る魔物の系統が違うらしい。それとここだけに限らず、迷宮の特徴として、踏破――ボスを倒した階層は次からは通る必要無く、次の階層に行ける事が出来るのだとか。要するに入口で階層を選べることが出来るのだ。今回は俺が居るから第一層からだが、彼ら暁の面々は第五層、現段階の最終層まで行けるとのこと。なんか色々申し訳ない気分だ。
「それにしても、それ、オーガ相手にも充分通用するんだな」
アルザードが話しかける。それ、とは勿論ベレッタのことだ。
「当たり所が良ければ、だけどね」
実際に腕とか肩に当たっても死ぬことは無い。これはゴブリンでもそうだったが、適格な場所に当てないと絶命しないのはどの武器でも同じだ。要は慣れである。それでも相応のダメージを叩き出すのだから、攻撃力は相当なものだ。
「……使ってみたい」
「私も、護身用に欲しいわね」
シンシアとエレナがそう言うが、後日、俺しか使えない事が判明した。二人とも引き金が引けなかったことから、指紋認証や生体認証でもしてるだろうか。
暫く歩くと木の扉があった。別に初めて見つけた訳じゃないが、洞窟みたいな壁に木の扉があること自体不自然なのだが。その事で尋ねたたら、迷宮だから、一言で片付けられた。
「ここだここ。寄り道するぞ」
どうやら寄り道の目的地らしい。
「で、何ですか、ここ」
ここまで来ると、流石に気になるので尋ねる。アルザードも頃合いとばかりに答えた。
「魔物部屋だ」
☆★☆★☆★
魔物部屋。
罠の一種だ。部屋に入ると無尽蔵に魔物が湧きだ出し、中に入った者が死ぬか、或いは湧き出すのが止まるまで部屋の扉は開かない。初心者にとって最も危険な罠であるが、相応の実力者ともなると、金稼ぎの穴場と化す。ゲームでも定番化しつつあり、某デスゲームな小説では主人公の友達以上恋人未満の娘がこれに殺られている。
それにしても、部屋なのにハウスとはこれ如何に。
「大丈夫とは思うが、出てくる魔物によっては危険度が跳ね上がるからな、注意しとけよ」
俺の下らない疑問は置いとくとして、俺達は魔物部屋へと入る。
中は大体高校の教室くらいだろうか、それなりに広い。
全員が部屋に入ると、扉が閉まり、鍵が掛かる。木の扉だから破壊出来そうなものだが、実際は見た目が木の扉であって、材質は全くの別物だ。少なくとも手持ちの武器では壊れないそうだが……
ゲパードならいけそうじゃね? いや、やらないけどさ。
俺達は扉を壁にして陣形を整える。俺、アルザード、ドルトスが前衛、その後ろにエレナとシンシア、更に後ろはマシューと、マシューを中心とした半円陣をとり、皆各々武器を構える。
「来るぞ!」
アルザードの掛け声と同時に魔物が湧き出る。出てきたのはゴブリン、凡そ30匹。ただ、迷宮内ではリーダーやアーチャー、メイジ、ライダーといった変異種は出てこない。正に烏合の衆である。
「またつまらないのを引いたな……」
アルザードがぼやく。尤も、ここの魔物部屋で一番出るのがゴブリンだから仕方がない。オーガの群れとかあまり相手にしたくない。女性陣も、いくら迷宮ではそういう行為をしないとは言え、オークを相手にするのは忌避感があるだろう。
だからといって30匹ものゴブリンを相手にするのは面倒臭い。と言うわけで。
「私が魔法で一掃するわ」
と相成った。別に俺でもいいんだが、エレナが買って出た。俺に見せたい魔法があるらしい。エレナのオリジナル魔法だろうかと思ったら違った。
「『ファイアレイン』!」
ぶ!? まさかのファイアレインかよ。それも無詠唱。元々は俺が編み出した火属性範囲魔法だ。天井から数多の火矢がゴブリン達に降り注ぐ。火属性適正持ちのエレナだ、威力も高く、瞬く間に殲滅してしまった。
「どう?」
エレナ、ドヤ顔である。
「使えたの? てかいつの間に使えるようになったの!?」
俺のオリジナル魔法だった筈だが。だが、エレナはあっけらかんに答えた。
「魔法自体を見た。詠唱も聞いた。Lvの条件もクリアした。後は無詠唱で出来るまで反復練習あるのみよ。それにしても便利ね、この魔法。制御もしやすいし、ソーマには感謝しかないわ」
と、エレナは満面の笑みを浮かべた。まあ、うん。役に立つならいいか。因みにこの魔法、後々教本に書かれる事になり、発案者として俺の名が載るのだが、それは俺の預かり知らぬ所である。
と、まあ、それは置いとくとして。
「……まだ出てくる」
シンシアが警告してくる。
「まだって……そういうことあるのか?」
「たまにな」
アルザードが答える。エレナが一掃したので終わりかと思ったのだが、後続があるらしい。
そうこうしてるうちに新たに湧き出てきた。普通のゴブリンと赤い帽子を被ったゴブリン。手斧を手にしている。
「レッドキャップか……」
ドルトスが唸る。
レッドキャップ。
ゴブリンの亜種で驚異度はE。見た目赤い帽子を被ったゴブリンだがオーク並に強い。残忍で殺した者の血で帽子を赤く染め、色が濃い程強いのだとか。しかも質が悪いことに群れる。そんなのがゴブリンを含めて30匹程。
「ちっ、厄介な」
アルザードが舌打ちする。オークと同程度と言えど、素早さは遥かに上。だが――
「数多いなら纏めて一掃するか。『ファイアレイン』」
今度は俺がファイアレインを唱える。本家だけあり、火矢の数が圧倒的に違う。これでMP消費量同じである。
それを見たアルザードはひゅうと口笛を鳴らしエレナは「流石本家ね」と称賛する。マシューとドルトスも絶賛し、シンシアが「流石旦那様、さすだん」と無駄に褒めちぎる。だからそのさすだんはヤメロ。
あっという間に一掃されるゴブリンとレッドキャップ。これで終わりかと思ったら――
――警告。第三波、来ます。
ナビーさんの警告と同時に三度、魔物が出てくるのだった。
レッドキャップが噛ませ犬な件について。
これが今年最後の投稿となります。読んでくれた皆々様、良いお年を。




