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2ー4 家名と二つ名

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思ったら評価やブクマ、感想等をしてくれると嬉しいです。レビューしてくれると狂喜乱舞します。

 ユフィとポーリーはガックリと項垂れている。特にポーリーの落ち込みようが酷い。

 まさかポーリー自ら俺にタグを着けたかったのだろうか。


「わたし自らソーマさんに銀のタグを着けたかった……」


 まさかだった。何か悪いことしたなー。


「まさか、叙爵も終わって……」


「それはまだだけど」


 それを聞いてかユフィが顔を明るくする。だが。


「なら、私が。私がお父様の代わりに……」


「いくらユフィの頼みとは言えど、無理な相談だ。これは王の代理として僕が受け持つことになっているからね」


「そ、そんな……」


 クリスト伯爵の言葉に膝を落とし、床に手を着く。確かに重要な公務を実の娘とは言え、領主ではない者に任せる訳にはいかないだろう。いくら親バカと言えど、その辺の分別はついていたか。

 俺はクリスト伯爵と対面しひざまずく。一応ここに来る前に最低限だが作法を教えてもらったのでそれに倣う。

 一方のクリスト伯爵も儀礼用の短剣を手にする。これを受け取ることで、俺は正式に貴族(一代限りの名誉貴族だが)になるのだ。


「ではソーマ君、国王の代理として君に準男爵の位を授ける。これからも国と民のために尽くすように」


「はっ」


 クリスト伯爵は俺に短剣を手渡す。これで叙爵式は終わりだ。これが男爵位以上だともっとめんどくさいのだが。

 それにしてもクリスト伯爵の先の文言、本来なら「国と王と民のため」なのだが、「王」を外してたな。何か含むところでもあるのだろうか。


「さて、これでソーマ君は晴れて貴族になった訳だけど、家名は決めているのかい?」


 俺は短剣をストレージに仕舞い、再びソファに腰掛けるとクリスト伯爵に訪ねられた。それを聞いたのかユフィが再起動する。


「それなら私がソーマさんに良い家名を――」


「ごめん、もう考えてあるんだ」


「そ、そうですか……」


 再び落ち込むユフィ。色々考えてくれただろうに、何かユフィには悪いことをしたな。後で慰めるとして、俺は一発の弾丸を取り出す。50口径(AE)弾、デザートイーグル用の弾丸だ。それをテーブルに置く。


「なんだい、それは?」


 クリスト伯爵が質問してくる。ユフィもポーリーも、そしてギルドマスターも気になったのか、それに目をやる。


「これがワイズ――レッサーデーモンの頭を吹き飛ばしたものの正体です。これを銃で放つんです」


「なんと、こんな小さな物がか……そして銃と言うのはソーマ君が手にしていた武器の事だね。それで?」


「それでですね、これは弾丸(ブリット)というのですが。そのブリットを家名にしようかと」


「成る程、ブリット、ソーマ・ブリットか。……悪くないな。僕は良いと思うんだけどユフィはどうだい。それとも他に何かあるかい」


「え!? あ、はい、良い家名だと思います。なんと言うかソーマさんに合っている、そんな気がします」


 ユフィは急に振られて少し慌ててしまったが、ユフィも肯定的な意見を出した。これで「そんなのより私の考えた家名が良いです」とか言われると少し凹むとこだが。


「さて、後は二つ名だが、こればかりはソーマ君自身で付けることは出来ない。今ここに居る自分らで決めなければならないのだが……何かあるかね?」


 確か二つ名はB級以上の冒険者に付けられる、称号みたいな物だっけ。アルザードの『鬼斬』とかエレナの『灼熱姫』とか。

 中にはかなり厨二臭い二つ名を持つ者も居るらしいが……頼むからあんまり厨二臭いのは止めてくれよ。正直かなり恥ずかしいから。


「単純に『銃使い』で良いのでは?」


「いや、その銃を知らない者が圧倒的に多い。……悪魔を倒したのだから『悪魔殺し』で良いんじゃないか」


「ギルドマスター、それは既にいるのである」


「むう……」


 一同、ああでもない、こうでもないと、中々決まらない。中には『黒眼の断罪者』とかあった。しかも候補として残っている。止めてくれ、それだけは止めてくれ。

 それはそうとユフィそポーリーは黙ったままで、話し合いに参加していない。何も案が無いのか、それとも単に入りづらいのか。

 その二人が何も発言してないのに気付いたヘンリエッタが話の間を割って言った。


「ところでお嬢様とポーリーは何か無いのですか?」


「む、そうだな。この場に居るのだから、何か良いのがあるなら言ってほしい。このままだと『黒眼の断罪者』になるが……」


 ……マジか!? それだけは勘弁してくれ!

 その思いが通じたのか、二人はにこりと微笑み、二人同時に声を揃えて言った。


「「『死音』」」


「ほう。理由を聞いていいかな?」


 ギルドマスターが理由を聞きにきた。二人は自身満々に答えた。


「私は以前にも見たのですが、その銃を向けられて、発砲音? ですか、それを聞いた者は絶命しました。絶対という訳ではありません。ですが死なずともかなりの深手を負いました」


「わたしはあの悪魔の頭が吹き飛ぶのを見ました。その時の音は相対者にとって正に死をもたらす音だった、だから『死音』と。わたしとユーフォリア様で考えたんですが……」


「ふむ、死をもたらす音、『死音』か……」


「我輩は良いと思うのであるぞ」


「僕もそれで良いんじゃないかな」


「私も異論は御座いません」


 何か『死音』で決まりそうな雰囲気だな。後はギルドマスターだが、「却下。『黒眼の断罪者』でいく」とか宣ったら迷わずギルドマスターに引き金を引く。当てはしないが確実に引き金を引く。

 しかして、ギルドマスターの答えは……


「分かった。『死音』でいこう。『死音』のソーマ、良い響きじゃないか」


 だった。良かった、本当に良かった。いや、『死音』も厨二ぽいけど、それでも『黒眼の断罪者』に比べたら遥かにマシだ。今回ほど二人に感謝したことはない。


「どうですか、ソーマさん。気に入ってもらえました?」


「ああ、良い二つ名だよ。二人ともありがとうな」


「えへへ、そんな……」


「良かった……気に入ってもらえなかったらどうしようかと……本当に良かったです」


 ポーリーは照れ臭そうに笑い、ユフィはホッとしている。少し怖かったのかもしれない。もし嫌だったらと思うと……自信たっぷりの割りに中々言い出さなかったのは案外それが理由なのかもしれない。


 兎も角、これで家名と二つ名が決まった。


 B級冒険者、ソーマ・ブリット準男爵。二つ名は『死音』。


 今日からこの肩書きで毎日を送ることになるのだ。


「ところでヘンリエッタも何も上げてなかったけど何かなかったの?」


「『女誑しのハーレムマン』」


――一番あってますね。


 冗談ではない!

 


 


自分には厨二病なセンスはないようです。

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