2ー3 ソーマ、B級冒険者になる
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思ったら評価やブクマ、感想等をしてくれると嬉しいです。レビューとかしてくれると狂喜乱舞します。
「おはよう。昨日は良く眠れたかい?」
「おはようございます、クリスト伯爵。まだ少し疲れが残ってますが、充分に睡眠は取れたかと」
俺は服を着替え、メイド(ヘンリエッタではない)に食堂まで連れてこられた。
中に入るとクリスト伯爵がテーブルの上座に腰を掛けていた。後ろには執事のウィリアムが控えている。ユフィは居ないようだが、恐らくまだ寝ているのだろう。
メイドに促され、席に座ると、俺を連れてきたメイドさんとは別のメイドが食事を運び、俺とクリスト伯爵の前に並べる。
オムレツに白パン、野菜サラダ、コーンスープ。飲み物は新鮮な牛乳。色鮮やかでどれも美味しそうだ。惜しむらくはオムレツとスープが冷えている事か。
「食事にしようか」
クリスト伯爵はそう言い朝食を食べ始める。俺も手を合わせ「いただきます」と言い、ナイフとフォークを手に取り食事を取る。
お互い何も喋らず黙々と食べる。どれもこれも美味だが、やはりオムレツとスープは温かい方が良かった。
取り終わるとクリスト伯爵が話しかけてきた。
「ソーマ君はこれからどうするんだい」
「これから、ですか。とりあえずギルドに赴こうかと。それに俺……自分の装備の件もありますし」
ワイズに没収された剣と鎧だが、ルミナス教会には無かったそうで、恐らくは売りに出されたのだろうとの事。表沙汰にならないよう、裏で取り引きされたのだろう。その事も含めギルドに確認する必要があった。
何よりもB級冒険者昇格にあたり、様々な手続きもあるのだ。
「ふむ、それなら僕も行こう。他の国は兎も角、フィグネリアではB級冒険者は一代限りとは言え貴族に相当するからね。昇格の際はその街の領主が王の代理として叙爵させるからね」
尤も、A級ともなれば王都へ行き、正式に王から爵位を賜ることになるのだかね、とクリスト伯爵は付け加える。
何でも、準男爵の叙爵程度では王の謁見は出来ないのだと。と言うか騎士は皆準男爵なので、それを考えると一人一人叙爵するには大変だろうな。
まあ別に会う気も無いけどな。
尚、準男爵とは言え貴族なので家名は名乗れるそうだ。家名は自分で考えても良いが、思い付かない場合は没落して誰も名乗ることのない家名を賜るとの事。
変な家名を賜るのも嫌だし、自分で考えるとしよう。
☆★☆★☆★
クリスト伯爵と馬車(ナビーさんが改良したやつだ)で冒険者ギルドに向かう。普段は宿屋から徒歩だったから少し落ち着かない。
とは言え、精々5分かそこらで着いてしまうのだが。ただ、その間全く会話が無い。ヘンリエッタも同乗していたが、流石に喋ろうとはしなかった。
ギルドに着き、馬車から降りるとクリスト伯爵が口を開けた。
「度々この馬車を使うが、殆ど振動がないな。おかげで移動がかなり楽になったよ」
何となくナビーさんが褒められているような感じがして、こっちも嬉しくなる。
「今度他の馬車も同じようにしてほしいのだが、出来るかい?」
「……ロハでですか?」
「まさか。然るべき報酬を出すよ、どうだい?」
「……考えときます」
良い話ではあるんだけどね。
――私は構いません。それほど大したことでもありませんし。それにマスターが私の事で嬉しく感じるのは、その心地好いと言いますか。
ん? ナビーさん照れてる?
――照れてません。
そう? でも照れてるナビーさんて、何処と無く可愛らしいと言うかなんと言うか。
――……
あらら、黙りしちゃったよ。
兎も角、ギルドの扉を開ける。内部の喧騒はいつもと変わらない。ただ、俺とクリスト伯爵が入ると、途端に静まりかえってしまった。
そのまま俺達は受付カウンターへと赴く。本来は割り込み厳禁なのだが、クリスト伯爵のおかげか、皆道を開けてくれる。
カウンターには生憎とポーリーは居なかった。代わりに白髪金瞳猫耳少女が受付席に居た。この娘も受付嬢で、確か名前は、
「フェ○シア」
「誰がフェリ○アにゃ。フェルミナ、フェしか合ってないにゃ」
とこっちのボケにツッコミを返してくる、なかなかノリの良い受付嬢だ。
彼女はフェルミナ、半獣人の猫耳族だ。カウンターに隠れて見えないが尻尾もある。
半獣人とは獣の耳と尻尾を持った人間、亜人種のことで、フィグネリアでは100人に一人の割合という、余り見かけない種族だ。更に言うと同盟国のローランディアには全くおらず、逆に敵国のグラスベルには人間と同じくらい居るそうだとか。
普段はポーリーが俺を受け持ってくれるが、休みの時は彼女が受け持つ。ポーリーの様に親密に接することは無いが、冗談を言い合う位には親しい。まあフェルミナが一線を引いてるので男女の仲には進展しないだろうが。
「て言うかフェ○シアって誰にゃ?」
「歌って踊れる猫耳シスター」
「何それ。ちょっと会ってみたいにゃ。何処にいるにゃ?」
「俺が居た国のゲームの中」
「それ無理にゃ……」
「あー、フェルミナ君。ギルドマスターに僕が来たことを伝えてくれないかな」
クリスト伯爵が俺とフェルミナの漫才の間に割って入ってくる。そう言えばその為にフェルミナに話しかけたんだっけ。
「おっとそうだったにゃ。ソーマのせいで無駄な時間を使ってしまったにゃ」
と、俺に対して毒を吐きながらギルドマスターに伝えに行った。いや、多分サブマスターの方かな。ギルマス存在感無さすぎて居るかどうかすら判断出来ん。
で、戻ってきたら案の定サブマスターのアルフレッドを連れてきた。
「これはこれはエドモン卿それにソーマ君、昨日ぶりであるな。ギルドマスターが待っているのである、我輩の後に付いてくるのである」
俺達は巨漢の背中を追いながら二階へと上がり、ギルドマスターの居る執務室へと向かった。
「マスタング、エドモン卿とソーマ君がいらっしゃったのである。中に入るのであるぞ」
アルフレッドはそう言うとノックもせずに執務室の扉を開けてしまった。無作法にもほどあるだろう。だが、ギルドマスターは別段気にしてないような素振りをみせる。
どうも日常茶飯事のようだ。
当のギルドマスターだが机の上にある大量の書類と格闘中である。
「ああ、すまない。まさか昨日の今日で来るとは思わなくてね。少し待ってもらえるかな」
と、俺達をソファへと促すと、また書類に埋もれる。しかし何の書類なんだ?
「全く、あの馬鹿から被ったギルドの被害総額、どれくらいになるんだ……差し押さえた分を差っ引いても足らないんじゃないか……」
イスカの横領額算出の書類だったか……
「はあ、とりあえず足りない分はルミナス教に払ってもらおう。……さて、とりあえず一段落ついたし、ソーマ君のB級昇格の件を片付けるとしよう。タグを交換するから出してくれないかな?」
ギルドマスターにタグを手渡すと、今度はそれをサブマスターに渡し、サブマスターはそのまま退出していった。そう言えばEとF級のタグは銅製だっけ。CとDは鉄、そしてBは銀。あとAは金でSは白金だとか。A級のタグはアルザードに見せてもらったことがあるが、流石にS級はない。因みにS級冒険者はフィグネリアには一人しかいない上に高齢だとか。
暫くするとサブマスターがトレイを持って戻ってきた。そのトレイには銀のタグが乗せられている。
「ソーマ君、昇格おめでとう。これで君は今日からB級冒険者だ。これからも頑張ってほしい」
「はい、ありがとうございます」
銀のタグを手渡され、首に掛ける。暫くは見せびらかせとけ、とギルドマスターに言われているのでそうしておく。
「さて、次は僕の――なんだか部屋の外が騒がしいな」
とクリスト伯爵との用事――準男爵叙爵の件を済ませようとしたのだが、廊下をバタバタ走る音が。それも一人じゃないな、二人だ。声も聞こえる。と言うか凄く聞き覚えのある声だ。
足音は徐々に近付き執務室の前で止まり、扉が豪快に開け放たれた。そこに居たのは――
「「嗚呼、間に合わなかったぁ!」」
俺の首もとに掛かっているタグを見て嘆く二人の女性、ユフィとポーリーだった。
残念! ユフィとポーリーは決定的瞬間に間に合わなかった!




