1ー39 長い1日の終わり その2
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次に来たのはポーリーだ。
髪の色に合わせたかのような赤く胸元の開いたドレスを着用している。
「えへへ、ソーマさん、似合いますか」
「ああ、良く似合ってるよ。てか目のやり場に困る」
「もう、ソーマさんのえっち。でもありがと」
褒められたのが嬉しかったのか、照れ笑いをするポーリー。
と言うか、えっちて……しょうがないだろ。あんなメロンサイズの胸の谷間を見せつけるような格好をすれば、世の男はどうしてもそこに目が行くわ。
それはそうとポーリーと一緒にいる一人、いや、二人の男。
一人は見覚えがある。ボルドーすらも上回る巨躯の持ち主で、服の上からも分かる程の筋肉。見せかけではない、実用性のある、がっしりとした筋肉だ。頭部は殆ど禿頭と言っていい程で、前頭部に薄茶色の髪が弱冠生えている位だ。カイゼル髭を生やしたその顔の彫りは深く、だが温和そうにも見える。と言うか、某錬金術師の少佐にそっくりだ。確か、冒険者ギルドのサブマスターだったか。
もう一人は、サブマスターの印象が強いぶん、かなり影が薄い。何処にでもいるような、中肉中背、丁寧に切り揃えられた茶色の髪に、翠色の瞳。整ってはいるが、これといった特徴もない顔立ち。正直目を離しただけで忘れてしまいそうだ。
「お楽しみのところを悪いが、我輩達の事を紹介させてほしいのである」
サブマスターが間に入ってきた。
「あ、すみません。えと、ソーマさん、此方の方達は……」
「直接話すのは初めてであるな。我輩はアルフレッド・アームストロング、冒険者ギルドユリシカ支部のサブマスターである。宜しく頼むのであるぞ」
「え、ああ、はい」
大きな声で自己紹介するサブマスターことアームストロング少佐……いや少佐はいらんか。
しかし家名持ち、つまりは貴族ということか。それにしてもアームストロングねえ……見た目まんまの家名じゃねーか!
「それと……初めまして? で合ってるのかな」
もう一人の男に挨拶をする。多分会ったことは無い筈……正直自信無い。
「合ってるよ。初めまして。自分はジョニー・マスタング。同じく冒険者ギルドユリシカ支部のギルドマスターなんてのをやっている。君のことはここにいるポーリー君や暁の面々から聞いてるよ」
はてさて、どんなことを聞いてるのやら。
「此度はうちの馬鹿のせいで大変なめに遇わせてしまい、すまなかった。それとこれはまだ正式にではないが、君はB級冒険者に昇格することが決まった。後日改めてギルドに来てくれ。正式に手続きを行うから」
ジョニーさんが謝罪と俺が昇格する事を伝える。自分自身の事なのに今一つ実感が湧かない。
「す、凄いです! こんなに早くB級に上がれるなんて! おめでとうございます!」
代わりにポーリーが喜んでいるのだが。
「と、ところで、ま、まさか歴代最速とか……」
というその期待はサブマスターの言によりあっさりと覆された。
「いや、登録して2時間でB級になった者がいるのであるな。確か最速は登録直後であるか」
なんだよそりゃ。まさか登録時にドラゴンでも見せたのか?
「その者はギルドにドラゴンの死体を引き摺って来たのである。レッサードラコンではあるが」
マジでドラゴンだった。
「と言うことでソーマさん、楽しみにして下さいね。わたしからも何かお祝いさせていただきますから!」
俺よりも我が事のように大はしゃぎするポーリーだった。
……でも頼むからその格好でぴょんぴょん跳び跳ねるのは止めてくれ。目のやり場が、てか俺のとある一部がヤヴァイ事に!
☆★☆★☆★
ポーリーと入れ替わりでリサさんとアンナちゃんが来た。
リサさんはいつもとそう変わらない服を着ているが、アンナちゃんは水色を基調としたエプロンドレスを着ている。恥ずかしいのか、リサさんの後ろに隠れるように立っている。
しかし不思議の国でも行きそうだな。
それはそうと……
「あれ? 旦那さんは一緒じゃないんですか?」
何故かリサさんの旦那さんがいない。因みにまだ名前を知らない。
だって誰も名前で呼ばないし。
「ああ、明日の仕込みがあるからってさっき帰ったよ」
なんとも真面目な人である。と言うか、厨房から殆ど出ないんだよな。日本人も真っ青のワーカーホリックぶりである。
「それよりも、ほら、アンナ。お客人に言うことあるんだろ?」
と、リサさんがアンナちゃんを前へ出す。
「アンナちゃん、可愛い格好だね。似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます。……元々はユーフォリア様がアタシ位の時に着ていた服だそうです。もう着れないからって、色々迷惑をかけたお詫びにってくれました……」
照れくさそうにアンナちゃんが言う。これは余談だが、今回迷惑をかけたということで女性にはドレスを渡したそうだが、リサさんは「そんなものより迷惑料寄越せ」と断り、金を貰ったそうで。
アンナちゃんのはユフィのお古だが、それでもかなり高価なものなので、かなり恐縮してしまっているようだが。
因みにポーリーのドレスはオーダーメイドである。仕立てる時間良くあったな、と思ったら実際は採寸だけ済んでなくて、ドレス自体は出来ていたのだとか。
伯爵抜かり無いな。
それはさておき。
「で、アンナちゃん。言いたい事って?」
「えっと、その……今日のソーマさん、とっても格好良かったです!」
「え、あ、ああ、ありがとう」
こう、なんと言うか、素直な賛辞は照れるな。
「そ、それでですね……えっと…………」
アンナちゃんが顔を赤らめてモジモジしだす。まさか愛の告白!? ……いや、ないか。
だがそれに近かった。
「これからはソーマさんの事、『お兄ちゃん』て読んでいいですか?」
と、アンナちゃんが上目遣いで言ってきた。
俺の身体に稲妻を受けたような衝撃が走った。
お兄ちゃん――なんと甘美な響きか。成る程、世の妹萌えな連中の気持ちが良く分かる。可愛い年下の女の子にそんなこと言われたら……悶え死ぬ!
「……駄目、ですか?」
アンナちゃんが上目遣いで目をうるうると潤ませる。反則だろ、これは……
当然、俺の答えは一つしかない。
「……いいよ」
「ホント? ホントに? ……やったぁ! お兄ちゃん大好き!」
「おやおや、お客人、うちのアンナを誑かすとは、結構プレイボーイだねえ」
アンナちゃんは喜び、それを見たリサさんが茶化す。
違うから。誑かすとかアンナちゃんをそーゆー眼で見ないから!
けどまあ、実際に妹がいたらこんな感じなんだろうか。俺一人っ子だからその辺よく分からないが。
「まあ、これからもどんどん頼ってくれていいからな」
と、アンナちゃんの頭を撫でようとするが、スッと後ろへ下がる。
ん? なんだ、今の動作は。だが、自分の動作に気付かないのか、アンナちゃんは満面の笑みを浮かべている。
「えっへへ~、お兄ちゃん、お兄ちゃん」
嬉しそうにお兄ちゃんを連呼するアンナちゃん。
先の動作に引っ掛かるものを感じたが、アンナちゃんのはしゃぎように、俺は直ぐに気にも止めなくなったのだった。
長くなってしまった。続きます。




