1ー33 捕らわれのソーマ その3
まさかの連日投稿!
前半にちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、艶かしい描写があります。
気が付くと牢の中にいた。
苦痛耐性を持っていても、今まで受けたことのない激痛だったため、ブレーカーが落ちるように気を失ったのだ。
鞭で叩かれるのはなんとか耐えられた。その鞭も棘の付いた、傷を抉る代物だったのだが。
だが焼きごてとか皮剥ぎとかは無理だった。根性焼きとかされたことがあったけど、あれの比じゃねーわ。
気が付いたのもあまりの激痛からだ。俺はすかさず『ハイヒール』を唱え傷を癒す。ただの『ヒール』だと傷が完全に治らないからだ。
傷が癒えることで徐々に痛みが退いていき、だいぶ楽になった。
しかし、今は何時頃になるのだろう。陽の光が射し込まない地下牢で、しかもさっきまで気絶していたのだから、時間の感覚がつかない。
「あぁ……おにーさん。目が覚めたんだ……」
不意に、モーラが声をかけてきた。はあ、はあ、と息が荒い。若干体調が悪そうだ。それも仕方がないだろう、こんな牢屋に放り込まれては。
「大丈夫か? なんか調子悪そうだけど」
「ユーフォリア様達、に比べれば……ボクはまだ大丈夫だよ……」
ユフィ達の方を見る。モーラも含め、身体に浴びた血は洗い流され、質素な麻の囚人服みたいなのを着ている。勿論肉片となった遺体も処理されている。だが問題はそこじゃない。しゃがみこみ、下腹部を手で押さえている。顔は紅潮し、息を荒立てて、瞳も潤んでいる。身体が優れないのはすぐに分かった。他の、ポーリーやリサさん、アンナちゃんも同様だ。
「あ……ソーマ、さん。その……あまり……見ないで、くら……さい……」
ユフィが舌を出し、息も絶え絶えに言う。しかも俺のある一点、要は下半身の一部をずっと見ている。何かがおかしい。
「多分、だけど……食事に、媚薬の、効果のある……毒を盛られたんだと、思う。それも依存性の強いやつを、ね……」
「毒、だと……!?」
「ボクはドワーフ、だから、毒物には、ある程度耐性が、あるけど……これ、かなりキツいよ。次は、耐えれる、自信、ないや……」
事実、モーラも顔を紅くしている。
しかし、媚薬効果のある、依存性の強い毒薬か。なら早い内に対処しないと大変な事になる。
……ナビーさん、『キュアポイズン』は効くかな?
――はい。『キュアポイズン』は身体に害を及ぼす毒や薬を排出させる魔法なので、効果があります。これがただの媚薬でしたら効果はありませんでしたが……
成る程。下手に依存性が強いから毒物と認識されるのか。そういえば病気の元になる細菌やウィルスにも効果あるんだっけ。
なら話は早い。
「キュアポイズンを唱えるよ。症状が重い順にかけていくから、モーラ、暫く我慢しててくれ」
この中では耐性のあるモーラが一番症状が軽い。彼女を一番最後に、反対にかなりまずそうなアンナちゃんを最初に『キュアポイズン』をかける。
「うん……けどなるべく早くね……正直かなりキツいんだ……」
俺は焦らず、慌てずに一人一人『キュアポイズン』をかけていく。毒が排出されたのか、はたまた浄化されたのか、兎も角、皆顔色が良くなり、息も整っていく。
終わった時には全員すっかり回復していた。
「恥ずかしい姿を見せてしまいました……もうお嫁に行けません」
と、わざとらしく訴えかけるユフィ。
「わたしも……責任取って下さい」
それに便乗するがごとくポーリーが被せてくる。
責任て。どうとればいいんですかね。定番の結婚ですかね。
「あはは、若いってのはいいねえ。けど目下問題なのは、今後ここでの食事を摂ることが出来ないってことさね。どうすんだい?」
リサさんが今現在、差し掛かっている問題を指摘する。が、それは大して問題にならない。ユフィもその事に気付いているのか、余裕の表情を浮かべている。
「それならソーマさんが持ってますよ。ね?」
「まあな。飯の事は気にするな」
俺はそう言うとユフィに水のペットボトルとお気に入りのチョココロネを放り投げる。勿論他の人達にも。何が好みなのか分からないのでパンの種類は適当に選んだのだが。
因みに、俺のいる牢とユフィ達のいる牢の間の通路の幅は凡そ3m程。鉄格子の幅も20cm位だから問題なく向こうの牢に投げ入れることが出来る。
「成る程、心配することもなかったって訳さね」
「おおー、ねえねえ、だったらビール出してよ、ビール」
「誰が出すか!」
ビールをねだるモーラに思わずツッコミを入れる。
……俺、この世界に来てからツッコミを入れてばかりのような気がする。
――強ち間違いではないですね。周囲の人達がボケばかりなので仕方が無いことですが。
いや、ナビーさんもどっちかと言うとボケだからね。
――解せぬ。
話がそれてしまった。とりあえず、食事に関してはさして問題が無いだろう。寧ろ問題なのは、アンナちゃんだ。
例の凄惨なシーンを間近で見てしまい、表情が冴えない。それどころか、俺に恐怖心を抱いてしまっている節がある。現に話しかけても「ひっ」と怖がって牢の壁際にまで下がってしまうくらいだ。アンナちゃんはまだ子供だから仕方の無いことかもしれないが……今まで普通に接してくれた分、結構傷つくモノがある。
因みに、ユフィは以前にも目の前で人が死ぬのを見ているので、凄惨ではあったがあっさりと立ち直っている。モーラも鉱山での採掘時に落盤で死んだ人達を多数見ているそうで、割と平気な顔をしている。流石にポーリーは人が死ぬところを直接見たことが無いので未だ顔色が悪いが気丈に振る舞っている。以外なのがリサさんで、何事も無かったかのようにケロッとしている。
「これ程じゃないけど、嫌なものを見てきたからね……お客人と同じ、黒髪の人が生きたまま火炙りにされたのを見たこともある」
何でも20数年前にも俺と同じ黒髪の人がこの街に来たらしいが、捕らえられ、すぐさま火炙りの刑に処されたという。その後、数千人もの人が黒い斑点が浮き出て死に至るということがあり、魔王の子の呪いと噂されたそうだが……それ、黒死病だよな。なんか当時は衛生面に問題があったらしいし。
しかし今の問題は嘗てあったことを詮索することではない。アンナちゃんをどうするかだ。
「ご、ごめんなさいっ。べ、別にソーマさんが悪い訳じゃないんです。助けてくれたんだろうなってことも分かってます。でも、でも……あたし怖いんです。男の人が! 触られたらその人がバラバラになりそうで! 怖いんです! だから、だからソーマさんもあたしに触れたらバラバラに、バラバラにっ……! だから、だからぁ!!」
アンナちゃんが泣きながら謝る。そして何に恐怖してるのかも。やはりアンナちゃんの心に相当深い傷をつけてしまったらしい。例えお互いが触れる距離でないとしても、余計に距離を取りたくなるのだろう。
「ごめん……」
俺には謝る事しか出来なかった。が、
――催眠術、ヒュプノシスを使えば何とかなるかもしれません。
ナビーさんが打開案を出してきた。
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