1ー32 捕らわれのソーマ その2
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尚、前半はソーマ視点、後半はワイズ司祭の状況です。ご注意下さい。
2018/11/03
サブタイ変更しました。
結論から言うと、浄化の儀は行われなかった。
ユフィ達に触れ、犯そうとした男達が唐突に、なんの前触れもなく、八つに裂けた。その中にはボルドーも含まれている。
地下牢はむせるような強烈な血の匂いが蔓延している。
ユフィ達は血に染まり、いきなりの惨劇に顔を青くしている。アンナちゃんに至っては気を失ってしまった。無理もない。目の前で、いくら自分を犯そうとした者とは言え、無惨な死に方をしたのだ。また、ユフィ達に触れず、生き残った者は腰を抜かし、股を湿らせ、或いは泡を吹き気絶し、或いはほうほうの体で逃げたそうとする。
「……魔王の子、貴様一体何をしたのだ」
ユフィのいる牢に入り、これから犯そうとしたが、惨劇を目の当たりにし、触れるのを止めたワイズ司祭が尋ねた。
「……」
「何をしたと、言っている!」
俺も分からない。分からないが、ユフィ達の貞操は守れたのは事実。その代わりトラウマを植え付けてしまったかもしれないが。
「……バチでも当たったんじゃないか?」
「ふざけるなあっ! 敬虔たるルミナス教徒であるあやつらにバチだと? 大概にするでないわっ!」
俺のハッタリにワイズ司祭が怒鳴り散らす。思い通りにいかなかったからだろう、ワイズ司祭が青筋をたててキレる。
……キレてるのはこっちなんだがね。しかし一体全体何が起きたのか。
――契約魔法です。
契約魔法って、確か黒魔法に属する魔法だよな。けど使った記憶もないし、そもそも黒魔法はおろか、契約魔法すら習得していない。
――マスターは無自覚に契約魔法を発動したのです。覚えてませんか? 先ほど『彼女達に触れたら、八つ裂きにする』と。そしてワイズ司祭は『やってみろ』と答えました。これで契約が成されたのです。
いや、確かにそんなこと言ったけどさ。それが何で契約が成されたことになるんだよ。
――マスター、先の言葉には魔力がこもっていました。例え無自覚とは言え、知らず知らずのうちに契約魔法を習得してしまうとは。恐らく基礎だけは出来ていたのでしょう。
基礎って……確かに元の世界で取引先と契約を結んだりしてたけど。それが基礎だと?
――はい。マスターがこの世界に転移する時に、経験したことを祝福や技能として習得しました。その経験が契約魔法として顕れたのでしょう。今になって習得したのは適合に時間がかかったことと、今まで使うことがなかったからだと思われます。
そんなこともあるのか。なら今後もこういう事が、唐突に覚えるということがあるという訳か。
しかし契約魔法か――
強すぎないか? これ。低レベルの書面契約や紋章契約は兎も角、今使った言霊契約はあまり使わない方がいいだろう。
因みに、書面契約は商取引や金の貸し借り、婚姻等で使用する。紋章契約は従魔や奴隷との契約に、婚姻でも使うことがあるが、稀だろう。
――しかしそれはマスターの使い方次第でしょう。ただ、確かにめったやたらに使用するものではありませんので、自重した方が良いでしょう。
肝に命じておこう。あ、ステータスで確認したら契約魔法Lv4になってた。あり得ねえ……
「く、くくっ、そうか、そういうことか。魔王の子めぇっ! 貴様、呪いをかけたなあっ! 忌々しい、何処までも忌々しい奴よ!」
なんか、ワイズ司祭が思いっきり勘違いしてるんだが。まあ、奴等にしてみれば大差はないかもしれないが。
「ならば仕方がない。こやつに女を取られる絶望を与えるのは諦めよう」
おい、今『女を取られる絶望を与える』とか言ったな。寝取るつもりだったのかよ。
「代わりに、貴様を痛めつけるとしよう。死なない程度にな。おい、この魔王の子を拷問室に連れていけ」
ワイズ司祭が顔を歪ませる。あれは誰かを傷つけることで喜びを得る、嗜虐者の顔だ。
俺は引き摺られるように拷問室に入れられ、気を失うまで激しい拷問を受けるのだった。
拷問の内容? 凄惨すぎて言葉に出来んよ。
☆★☆★☆★
???
ルミナス教教会のとある一室。その部屋は王候貴族もかくや、というほどの、豪華な調度品をあしらった、良く言えば絢爛豪華、悪く言えば悪趣味な一室であった。
その部屋の主であるワイズは荒れていた。流石に調度品に八つ当たりはしていないが、庶民が手を出せないであろう高値の酒をグラスに並々に注ぎ、無造作に飲み干していく。
「くそっ、くそっ! 魔王の子め、我に呪いをかけ、我の邪魔をするとは! 今すぐに殺せぬのが腹立たしい!!」
ユーフォリアを抱き、我が物にし、絶望の淵に立たせるつもりだったが、大きく計算が狂ってしまった。尤も、その腹いせに魔王の子、ソーマをいたぶってやったのだが。
苛立たしげに酒を煽ると、ノックをする音が聞こえてきた。
「司祭様、イスカ様をお連れしました」
「……うむ。中に入れなさい」
そういうと、ワイズはイスカを部屋に促す。
「失礼します……荒れているようですが?」
部屋の中に入ったイスカが不機嫌に酒を飲むワイズを見、訊ねる。
「これが荒れずにいられるか。実はな……」
ワイズはイスカに先程の一部始終を打ち明けた。魔王の子が我らに呪いをかけたこと、その腹いせに拷問にかけ、痛め付けたこと全部を。
「それは……申し訳ありませんでした。まさかそのようなことになるとは。深く謝罪致します」
「良い、主のせいではない、信徒イスカよ。寧ろ良くやってくれた。ユーフォリアだけではない、我に楯突く女子共を得ることが出来たのだ。礼を言いたいくらいだ」
ぐふぉふぉ、と醜く嗤うワイズ。
「それにあの手の呪いは、かけた者が死ねば効果が消える。そう急くことも有るまいて」
とワイズは言うが、そんなことはない。ソーマは呪いをかけたのではなく契約をしたのだ。ソーマが契約を破棄しない限り効果は永続する。寧ろ逆にソーマが死ねば契約は永遠に破棄されることはない。だが、ワイズはその事に気付かない。呪いだと勝手に思いこみ、気付こうともしない。
「そうでしたか。では何故魔王の子を生かしておくのですか?」
「見せしめだよ。我らルミナス教こそが正義であるためのな。それに3日後の正午に火炙りの刑に処することを街に告知しておる。今殺す訳にはいかんのだよ」
「成る程、そうでございましたか」
「それに、ただ手をこまねいてるだけではない。あの女子共の食事には聖薬を混ぜておる。その内我を求めるだろうて」
無論、魔王の子には食事など与えぬがな、とワイズは付け加える。
聖薬とワイズは言うが、その実強力な媚薬である。それも依存性の強い麻薬のような物だ。それをこれからのユーフォリア達の朝夕の食事に混入させるのだ。ソーマの処刑執行日には、その事しか考えられなくなるだろう。そして、刑を執行した後、公衆の面前でユーフォリア達に浄化の儀を行う。それがワイズが新たに立てた計画であった。
「素晴らしい考えです。これでユーフォリア様もポーリーも目が覚める事でしょう。尤も、ポーリーは書類改竄と横領の罪で司祭様の奴隷になる訳ですが」
ソーマのランクが上がらない理由――なんてことはない、ソーマがこなした依頼の報告書をイスカが改竄し、失敗にしていたのだ。当然報酬は不当に渡したことになり、ポーリーがソーマに貢いだ形となる。
その事をギルドマスター及びサブマスターには伝えてある。今頃はポーリーの人気も失墜していることだろう、そうイスカは思っていた。
イスカがポーリーに辛く当たる理由、それは嫉妬だった。
「げに女の嫉妬とは恐ろしいものよな。……さて、信徒イスカよ、お前を呼んだのは他でもない。此度の働き、我らが神も大層お喜びになられたであろう。よって、褒美として我が聖液を授けよう。光栄に思うがよい」
「おお、この私に聖液を……有り難き幸せにございます、司祭様」
ワイズの言葉にイスカは喜びの声をあげる。瞳は潤み、顔はうっとりと蕩けさせている。
「さあ、服を脱ぐがよい。そして我が聖液を受け止めよ」
「はい……」
二人は服を脱ぎ一つに重なる。
この部屋にいるのは司祭と信者ではなく、快楽に溺れ、淫蕩にふける雄と雌、二匹の獣だった――。
果たしてワイズ司祭の計画は上手くいくのか。待て、次号!




