1ー28 訓練
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あれから数日経った。
あの後、ユフィは俺の身体を慮ってか、そのまま帰路につき、ポーリーも自宅へと帰っていった。俺とシンシアはマシューにしこたま怒られ、特にシンシアは暫くは俺への接触禁止を言い渡された。
元の世界ならネットとかで暇を潰していたのだが、無論この世界にそんなものは無い。手持ち無沙汰な俺はストレージに入っていたトランプで、たまに遊びに来たアンナちゃんとするくらいだった。
そしてマシューからOKの返事がきた。これから俺は本格的に強くなる為の戦闘訓練を行うことになる。
☆★☆★☆★
冒険者ギルドの裏には訓練場がある。一辺約50mの大きめな体育館みたいな施設だ。俺達の他にも利用している冒険者がいる。
「それじゃ、さっさと始めるぞ。先ずは素振り1000本な」
アルザードから木剣を手渡され、正しい剣の握りを教えてもらい、素振りを始める。
竹刀位手にしたこともあるが、剣道なんか習ってないので振り方とかおかしいのだろう。その都度注意され、一からやり直し。結果、1000本どころか倍近く振っていた。
その後、小休止を挟んで、今度はアルザードとの手合わせ。普通の剣とは違い木剣なので、重大な怪我を負うことは無いが、それでも当たると痛い。何度も攻撃をくらい、全身が痛い。それでも苦痛耐性のおかげか、或いはそれのせいか、限界ギリギリまで手合わせを行うこととなり、終わった頃には心身ともに疲れはて、どうやって帰りついたのか、いつベッドの上で寝たのか全然記憶が無かった。
それとこれは後から聞いたことだが、昼から魔法を習う予定だったのが丸一日剣の訓練に使ってしまい、アルザードがエレナから怒られたとかどうとか。
で、次の日。
昨日は一日中剣術の訓練に使った為、今日は丸一日魔法の訓練となった。実は剣術よりも魔法の方が楽しみだったりする。ファンタジーな異世界では定番だからね。使えるなら使いたい。適性があるかどうかは置いとくとして。尤も、魔法適性の祝福持ってるから使えるのは分かりきっている事だし、既に生活魔法は使えるんだが。
「先ずは基本的な事からね。魔法は大きく分けて3種類あるわ。白魔法、黒魔法、そして属性魔法。流石にこれくらいは知ってるでしょ?」
首肯する。この世界に来たときにナビーさんに教えてもらったからな。
「じゃあどの魔法がどのカテゴリに入るかは分かる?」
「これも分かる。白魔法は回復や強化、付与、魔族やアンデッドに効く神聖魔法等。黒魔法は呪術に召喚、死霊魔法、精神に作用する魔法等。そして属性魔法は土、水、火、風の四大属性に氷や雷、光に闇。他にも泥や溶岩といった複合属性等、世界を構成する属性を扱う。で、良かったかな」
「はい、良くできました。概ねその通りよ。因みに契約は黒魔法に属するわ。これは召喚した魔物を抑えるために必用だからよ。奴隷契約にも使われたりするわね」
その契約魔法だが、中には自分に誓約を立てて身体能力を底上げするものもあるそうだ。ルミナス教ではこれは白魔法に属する、と嘯いているが、誓約は黒魔法である。他にもそういう魔法があるらしい。天候操作は神の御業、とされており、神聖魔法、つまり白魔法になるとか。無論これは属性魔法である。ただかなり難しいのか使える者自体いないのだが……
「私は属性魔法、とりわけ火属性魔法に適性があるからそれ中心に教える事になるわ。言っとくけど、他の属性が使えない、という訳じゃ無いんだからね!」
まさかのツンデレ発言。思わず笑みを浮かべてしまった。
「ちょっと、何が可笑しいの?」
「いや、ツンデレ発言が出てきたのでつい……」
「ツン、デレ? 何よそれ?」
「いや何でも」
どうもツンデレという言葉は無いらしい。
「それよりも、魔法を習いたいって事は何かしらの適性があるってことよね。差し支えなければ教えてくれないかしら」
「魔法適性ですが」
別に隠す事でもないし正直に答えた。
「だからなんの魔法の適性が……てちょっと待って。魔法適性?」
「はい、そうですが」
「それ、全部の魔法に適性がある祝福なんだけど! とんでもないもの持ってるわね……」
エレナが呆れる。どうもこの祝福、所持してるのは100年に一人いるかいないかレベルだそうだ。とんでもないレア祝福でした。
「まあ、無くても魔法は使えるんだけどね。それに適性はあっても得手不得手があるし。しかし魔法適性かぁ……羨ましい」
「適性はあっても得手不得手がある?」
エレナが少し気になる事を言ったのでその事を聞いてみた。
「ああ、それね。私の知り合いに適性があっても制御出来ない、と言うかしようともしない人がいるのよ」
何でもその人はエレナと同じ火属性適性を持ってるが、制御しようともせず、無駄に被害が拡大させるのだそうだ。オーク一体倒すのに山火事を起こしたこともあるとか。
「そんな歩く危険物の事は置いといて、始めるとしましょ。生活魔法は使えるみたいだから体内の魔力の感知は出来るわよね。だからそれはすっとばすわね。それで、魔法を発動させるには本来は呪文と魔法名が必要になるの」
呪文は、その魔法をイメージしやすくする為のものだとか。一方の魔法名はそのままズバリの意味だ。「尤も、呪文を唱えなくても魔法は出せるけどね」とエレナは付け加える。
「まあ、モノは試しよ、見てなさい。『火よ、矢と成りて、敵を射て。ファイアアロー!』」
エレナの手から見覚えのある魔法が放たれる。あの時のゴブリンメイジが使ってきた火矢の魔法、ファイアアローだ。火矢は的に命中し、的を弾く。
「と、まあこんな感じね。じゃあソーマ、やってみて」
俺は右手を前に掲げ、軽く深呼吸、体内の魔力を右手に集中させる。
「『火よ、矢と成りて、敵を射て。ファイアアロー』」
生成された火矢は的に向かい、命中する。
「で、出来た……!」
初めての(生活魔法以外の)魔法を放つことが出来た。その事に俺は感動にうち震えた。剣術はその気になれば元の世界でも習うことは出来る。使う機会があるかどうかは別として。だが、魔法は違う。絶対に使えない、使うことが出来ないものだ。これは、この感じはハワイで銃を初めて撃った時のそれに似ていた。
「へえ、初めてにしてはやるじゃない。威力も中々。あとは反復練習あるのみね」
「はい!」
俺は暫くファイアアローを射ち続けた。何度も使うとどんどんと慣れてくる。折角だし、呪文なしの無詠唱で放ってみよう。
何度も放ったからイメージはしやすい。そして、
「『ファイアアロー』」
的に飛んでいく火矢。そして命中する。
「……え、もう無詠唱出来たの!?」
「そう、みたいですね」
エレナは驚愕する。
「はあ、これじゃ教えること殆ど無いじゃない。なんて教え甲斐のない……けど筋は良いわね」
「ええと、ごめんなさい?」
「謝らなくてもいいわよ。私も楽でいいし。ほら、どんどんやる! 使えば使うだけ上手くなるんだから」
俺は改めMPが尽きるまで魔法を、ファイアアローを放つのだった。
アルザード「なあ、オレとエレナ、扱いにだいぶ差がありすぎねーか」
エレナ「その方が受けがいいからに決まってるじゃない!」
アルザード「えー……orz」




