1ー27 修羅場 その3
修羅場って書いてて楽しいよね。当事者になるのは嫌だけど。
2018/12/04
一部内容を変更しました。大筋は変わりません。
俺は、ユフィ、ヘンリエッタと共に黄金の林檎亭に戻った。
今更だが、街の往来で告白とか大胆なことをしたと思う。一体どれくらいの人が見ていたかと思うと、考えただけで恥ずかしい。
なので、努めて平静を保とうとしたのだが……
「おつ~。おんや~、お嬢、何か良いことでもあったのかなぁ」
スピキオに速攻でバレました。ユフィの顔に出てたっぽい。しかもすぐに看破されたことでユフィの顔が真っ赤になる。
「はい、それはもう。街の往来で『ユフィ! 好きだー!』『ソーマさん、私もです!』と激しく抱き合い……」
「わーわーわー!!」
言ってねえ! 好きとは言ってねえし! 嫌いじゃないとは伝えたけど叫んでねえ! アンナちゃんはトレイで顔を隠しながら「キャーキャー!」言ってるし、ポーリーとシンシアもなんか落ち込んでるし! というかポーリーさん、目のハイライト消えてませんか?
「そんなことより! そっちはどうなったんだよ」
何とか誤魔化そうと話題を振る。
「ん? あー、どうかねぇ。後はお嬢次第ってとこかな」
スピキオがそう言うとシンシアを顎で促す。
シンシアは席を立ち、俺達に、厳密には俺に対して、だが、
「ごめんなさい」
頭を下げて謝った。
俺は、はあ、と溜め息を吐く。
「シンシア、謝る相手が違う」
シンシアは肩をビクリと震わせると、ユフィの方を向き、改めて頭を下げ謝罪する。
「ごめんなさい。言い過ぎた」
んー、何だろう。シンシアが妙におどおどしている。反省してるのもあるだろうけど、怖れてる、とかそんな感じもするんだが。それは兎も角ユフィは謝罪を受け入れる。
「いえ、私も少し調子に乗りすぎてました。確かに身分の差はありますし、それに大事なのはソーマさんがどう想われてるか、ですから」
許してもらえたからか、シンシアはホッとした様子を見せた。
「良かったね、シンシアちゃん。犯罪者にならなくて」
と、スピキオがそんなことを宣うが、おい、シンシアに何言った?
☆★☆★☆★
これで一段落、と思いきや、そうはならず。
「言い過ぎたのは謝ったけど、ソーマは譲らない」
「ソーマさんは私の事を嫌いじゃないと言ってくれました。好きになることを諦めるなとも言いました。邪魔をしないでくれます?」
「わ、わたしだって! ソーマさんとつき合う権利はあると思いますっ!」
うん、そもそも根本的な問題が解決してないよね。ユフィとシンシアとポーリーの三人が俺を巡って言い争っている。
スピキオは当然この状況を楽しんでいる。ヘンリエッタはやれやれと呆れ返っている。アンナちゃんも「うわぁ、修羅場だあ……」とか言う始末。
修羅場の中心人物たる俺は何も言えない。何か言おうとすると三人で睨むんだぜ。「誰を選ぶの?」って感じでさ。怖いよ……
――モテモテですね。
そーだねー。皆それぞれ可愛いし。ユフィはお嬢様然とした、淑やかさがあるし、シンシアもエルフの血を継いでるからすっごい美人だ。ポーリーだって十二分に可愛いし、あの胸は最早凶器だ。
――男冥利につきますね。
うん、とても喜ばしい事なんだけどね。修羅場じゃなければ。それにどんどんヒートアップしてるし。
「第一、ソーマは、私の裸を見た。責任取って、私とつき合うべき」
ちょ、シンシアさん!? あんた何言っちゃってんの!? だが、それに触発されてか、ユフィまでとんでもないこと言い出した。
「わ、わわ、私だって! ソーマさんにおっぱい見られました! だ、だから、ソーマさんは責任を取って私と結婚するべきです!!」
ぐはあっ! 今の一言で思い出しちゃったよ! いやとても素晴らしいものだったけど、だったけどさあ。何もカミングアウトしなくてもいいじゃないか。スピキオなんかさっきから笑いを堪えるのを我慢してるし。
だが、爆弾はまだあった。それも超ド級の。
「わたし、胸を揉まれました。それも思いっきり……だからソーマさん、責任取ってください」
ぎゃあああああ! ポーリーさんもうやめてえええええ! 俺のHPはもう0よ! しかも今のポーリーの一言でスピキオが腹を抱えて大爆笑している。畜生、他人事だと思って。スピキオは後でしめる。
「もっ、もももも、揉まれましたって……ソーマさん! それは破廉恥過ぎます!」
「大丈夫、直じゃない。けど不公平だから、私のも揉んで」
なんでじゃあああああ!!
「だ、だったら! 私のも! 私のも揉んでいいですから!」
待て落ち着け! 揉みたくないと言ったら嘘になるけどさ!!
「ならわたしはおっぱい見せなきゃ駄目なんでしょうか……」
見せなくていい! 凄く見たいけど見せなくていいから!! と言うかどうして俺ばっかり精神攻撃受けてんだよ!
――全て事実ですし。
デスヨネー。けど全然収集つかないんですが。スピキオ――は役に立たないのでヘンリエッタの方を見遣ると、任せて下さいとばかりに頷く。
「お嬢様、それにポーリーもシンシア様も。少し落ち着いて下さい。そもそも一つ重要な事を忘れておられませんか?」
重要な事? 何かあるのか?
「我が国、そして他の国も一夫多妻制が認められております。つまりソーマ様の所有物になれば何も問題ありません」
ぶほあっ! 蒸せた。それはもう盛大に蒸せた。つまりアレか。ハーレムOKてことか。
「「「成る程、確かに」」」
そして納得しちゃう面々。いいのかなあ、そんなんで納得しちゃってさ。特にユフィは身分の問題があるし。だが、それすらもヘンリエッタはひっくり返した。
「ですが今のままではポーリーやシンシア様は兎も角、お嬢様を娶る事は出来ないでしょう。なのでソーマ様にはB級、出来ればA級冒険者になってもらいます」
「えっと、イマイチ理解出来ないんだけど」
他の人は納得したみたいだけど、俺には全く分からない。B級以上になるのとどう関係があるのか。
「ソーマさん、冒険者はB級まで上がると貴族待遇になるんです。一代限りなので名誉貴族扱いですが……」
ポーリーが説明してくれた。成る程それなら納得だ。
「それとA級になれば正式に貴族となります。男爵ではありますが」
つまりアルザードとエレナも貴族なのか。ん、待てよ?
「ならシンシアも貴族ってことだよな。ユフィに身分どうこう言っても、それ全部自分に跳ね返ってくるんじゃ……」
「それは違う。確かに私は貴族だけど、それは名ばかり。普通に、平民と結婚出来る。けど、名ばかりだけど、一応貴族だから、貴族とも結婚出来る」
なんだそりゃ。
「まあ一代限りですからね。普通は一般の方と結婚しますよ。けど中には貴族と結ばれる方も居ます。特に女性の方がそうですね。所謂玉の輿です」
ソーマさんの場合は逆玉ですけどね、ポーリーが付け加える。確かにそうだが。
しかし、確かに一番マシな解決方法かもしれない。俺の感情は別として。
俺も男だし、ハーレムには憧れるが、やはり日本人の俺としては些か抵抗がある。けどこんな魅力的な女性の中から一人を選ぶことはちょっと無理っぽい。
「はあ、別に上に登り詰める気はなかったんだけどなあ。けど目指してみるか」
と、まあこんな訳で俺は上を目指すこととなった。
――動機は不純ですけどね。
ほっとけ。
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貴族の爵位は公爵→侯爵→伯爵→子爵→男爵→準男爵です。捻りも何も無いですね。




