1ー23 宴の席にて
やはり予定通り進まない。
「え~、では、オレ達との出会いと」
「ソーマさんの初依頼達成を祝して」
「「「「「「「かんぱ~い!」」」」」」」
ポーリーの仕事がが終わった後、俺達は『黄金の林檎亭』で一緒に夕食をとることになった。
だいぶ夜も耽ってしまった為、かなり遅めの食事となってしまったが。それでも酒盛りしてる人が多いんだけどな。
「くっは~~~~っ、うっめ~~~~! リサさん、いつの間にこんな酒仕入れたんだよ?」
例のビールを一気に飲み干し、アルザードがリサさんに質問をぶつける。
「ああ、それ? そこのお客人からさね。病みつきになる美味さだろ?」
「へぇ、じゃあこいつがいる限り、この酒には困らないってことだな。こりゃますます死なせない様にしねえとな」
「ホント、冷たいエールなんてどーよって最初は思ったけど、案外いけるわね」
アルザードだけでなくエレナにも好評でなにより。
ところで凄く気になってたんだけど、ドルトスは何で兜被ったままなのかね? てかよく被ったままで飲み食い出来るな。
「さて、ここで改めて自己紹介といこう。オレはアルザード、A級冒険者にして『暁』のリーダーだ。主にアタッカーを務める。よろしくな」
「同じく、A級冒険者のエレナよ。サブリーダーでパーティ内ではキャスターを務めるわ」
「自分はマシュー、B級冒険者です。ヒーラーを務めさせていただきます」
「シンシア。同じくB級、主に斥候を務める。よろしく」
「ドルトスだ。同じくB級、見ての通りタンクだ」
成る程、バランスのとれたチームと言える。それも全員がAないしBとは、個人でも相当な実力の持ち主なのだろう。
「俺はソーマ、髪の毛以外は普通の、F級の駆け出し冒険者です。よろしくお願いします」
当たり障りのない自己紹介をする。普通の、のところでシンシアが首を少し傾げる。
「普通? ……んん?」
あれ? 何でだろう。思いきり訝しんでるんだけど。
「はいはーい、ポーリーです。受付嬢やってまーす」
ポーリーが挙手して自己紹介をする。なんかテンション上がってません?
「うん知ってる」
「アルザードさんひどっ!」
アルザードがツッコミをいれる。それを聞いて皆和やかに笑うのだった。
☆★☆★☆★
宴もたけなわ、といったところか。皆だいぶ酒が回っている。……筈なのだがあまり酔ってる感じがしないな。他の人たちもそうだったけど、この世界の人は酒に強いのかね? いや、ポーリーは結構顔を赤くしてるからそういう訳でもないのか。
まあそれは置いとくとして、さっきから凄く気になっていることを口にした。
「ところでドルトスさんは兜とらないんですか?」
「む……」「あー、それは……」
アルザードとエレナが言い淀む。あまり聞いてはいけないことだったろうか。酷い火傷を負っているとか。だとしたら失礼なことを聞いたのかもしれない。
「すみません、失礼なことを聞いちゃいましたね。今のは忘れ――」
「いや、いい。これは俺らが君のことを馬鹿にしたイスカ嬢に怒ったことの理由でもある」
ドルトスがそんなことを言う。今イチよく分からないんだが。
エレナが「いいの?」とドルトスに言うが、
「ここなら問題はないだろう。君も、それとポーリー嬢も他言無用に願う」
ドルトスは頷き、ゆっくりと兜をとった。
五分刈りの髪にギョロっとした目、低い鼻、分厚い唇、だが何よりも一番の特徴は、
「うそ……」
「髪と肌が、黒い……」
そう、彼は黒色人種、つまり俺と同じ『魔王の子』だった。
「オレとエレナ、それとドルトスは元々、ここより南に位置する港町『ポートセリア』の出身でな、そこはドルトスのような人達は普通にいるんだ」
「尤もそこでは彼等のような人は奴隷として扱われていたんだけどね」
アルザードの説明にエレナが捕捉する。しかし奴隷か。居るんだな、そういうの。
「言っておくけど、奴隷と言ってもちゃんと人間扱いされてるからね。それとポートセリアではルミナス教は殆ど浸透してないわ。寧ろ白い目で見られるわ」
「じゃあどうして……」
「人間扱いされてはいても自由は無かったからな。そう思えば俺を買い取ってくれたアルザードには感謝している」
「止せよ、俺はお前が戦力になると思ったら買い取ったんだ。しかし、ルミナス教があそこまで酷いとは思わなかったけどな」
それに関しては俺も同意だ。実は俺もガラフに貰ったフードを被ってギルドからここまで来ている。
「因みに、私もそう。ハーフエルフだから、迫害を受けてきた」
シンシアがそう言ってきた。これはやはりアレだろうか。エルフには蔑まされ、人間には妬まれ、とかそんな感じの。
「ハーフエルフは、子を宿せない。一代限り。だから、ハーフエルフは、男女関係無く、性奴隷として扱われてきた」
現に今でも娼婦や男娼として娼館に勤めている者がいるらしい。子を孕む、或いは孕ませられる心配はないからそういう扱いを受けるのだろう。それにエルフ譲りの美形でそのくせエルフよりも肉付きがいいらしいから人気も需要もある。
「因みに、私は、娼婦の仕事は、してない。まだ見開通」
なんかさらっととんでも発言が聞こえたような気がしたが、ここはスルーしよう。
「見開通。なんなら、する?」
……聞こえない、何も聞こえないんだ。
「わらひも処女れすよー。わらひのもぉ、貰ってくらさ~い」
うわ、ポーリーが絡んできた。そうか、ポーリー処女か……じゃああの時は間一髪だったのか。てかだいぶ酔ってそうだけど大丈夫なのか?
「そう言えばマシューって司祭か何か? けどルミナス教徒にしては……」
なんか変な方向にいきそうだったので話を切り替える。
「ああ、違いますよ。確かに自分は司祭の地位にいますが、ルミナス教ではなく白神教です」
白神教? 初めて聞くな。
「白神教は、まぁ名前の通り白き神を奉る宗教、ですな。ルミナス教は白神教から分家したものです。まぁ自分たちからすればアレは異端なのですが」
マシューが言うには、人の身に有りながら白き神にルミナスという名を付ける厚顔無恥な者の集団、だそうだ。それと嘗ては黒神教というのもあり、こちらはルミナス教から弾圧を受け、今では殆ど見ないとか。
因みに白き神と黒き神は表裏一対で白き神が生命に成長、繁栄を司るのに対し、黒き神は静寂と安息、そして死を司る。死を司るからと言って、別に邪神でも無ければ邪教でもなく、そもそも葬儀は黒神教が執り行っていたとのこと。それをルミナス教が邪教認定させたのだそうだ。
うーむ、聞けば聞くほどルミナス教ってロクでもないな。
「ところで、ソーマ君も、何か隠してるよね?」
シンシアの発言にギクリとする。そりゃ色々とありますよ、色々と。けど言える訳ないし言っても信じないでしょうに。
「ソーマ君、祝福何個持ち?」
ん? 普通って言ったからそっちを疑ってるのか。
「3つ、ですけど」
「「「「「はあ!?」」」」」
シンシア以外の皆が驚く。
「すっごーい! 3個持ちとか初めてです! すっごーい!」
今ので酔いが覚めたのか、やたら「すっごーい!」を連発するポーリー。貴女は某ビーストな友達のサー○ルか!?
「そりゃ普通とは言えねえな」
「ポーリーじゃないけど、凄いとしか言えないわね……」
「いやはや、驚きました。居るものですなあ」
「シンシア嬢以上か……」
他の面々も騒ぎたてる。だがシンシアは更に爆弾を投下した。
「違う、8個」
ぶふっ! 何故バレた!?
あと皆唖然としている。
「ん、ソーマ君を『視た』から」
視たって……そう言えばギルドでのいざこざでもキシャル草を『視た』とか言ってたな。
「あー、シンシアは『完全看破』の祝福持ちなんだ。それでオレ達は何度も助けられた訳だが……」
いち早く我に返ったアルザードが説明する。
――『完全看破』……あらゆるモノを鑑定、看破する祝福です。
うわなにそれ。チートどころかズルじゃん。
――マスターがそれを言いますか?
そうでした、俺も大概ズルでした……いやそうじゃない。つまり俺のステータス筒抜け?
――おそらくは。
「じー……」
「あのー、シンシアさん? てか素で『じー』って言う人初めて見ました」
「今ソーマ君と、会話してたの、誰? と言うか、何?」
マジかよ!? ナビーさんも『視え』てるのかよ!?
――まさかここまで強力な祝福とは……
「お褒めにあずかり、恐悦至極?」
――聞こえている、と?
「うん、ばっちり」
これはもう開き直るしかない、か。因みにナビーさんの声が聞こえるのはシンシアだけの模様。他の皆はシンシアの言動でポカンとしてるし。
――聞こえてるなら仕方ありません。シンシア様、私は祝福:ナビゲートシステム、名前はナビーさん、マスターのサポートをさせていただいております。それと、私の声が聞こえるならば言葉に出さず、頭の中で会話されても大丈夫です。でないと奇異の目で見られますので。
『おー、こうかな? ナビーさん聞こえる?』
――はい、問題ありません。
……俺にも聞こえるんだけどなー。けど俺の心の声は聞こえないのか。最近よく口にしてたから気をつけるようにしているのだ。
「アルザード、提案がある」
「お、おう」
あ、アルザードがなんか引いてる。
「ソーマ君仲間に入れよう」
なんかスカウトされました。
暁メンバーの性格
アルザード:豪放磊落。熱血漢。
エレナ:勝ち気。ツンデレ(アルザードに対してのみ)
シンシア:不思議ちゃん。
マシュー:おおらか。ルミナス教は邪教。
ドルトス:たまに奴隷気質が出る。
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