1ー21 Aランクパーティ『暁』
今回一部の方に不快な表現が含まれております。ご了承下さい。
ユリシカに戻ってきた。
ポーションのおかげか、血は止まっていたものの、左腕の痛みはじわじわきて正直辛い。
「次……黒髪かよ。身分証明出来る物は?」
門番の兵士に冒険者とタグを見せる。依頼を終わらせたので、と伝える。
「そうか……ちっ、死ねばよかったのに」
後のは小声で言ったつもりだろうがしっかりと聞こえたぞ。
「はいはい、死ななくて悪うござんしたね」
悪態を吐くと兵士は黙ってしまった。俺はそのまま街の中へ入り、ギルドへと向かった。
カウンターには、依頼達成の報告に来た冒険者が列を作っていた。そういう時間帯なのか、冒険者達でややごった返している。因みにカウンターは4つ、男性と女性の受付が二人ずつ、四人とも美男美女なのは敢えてそうしてるのか。ただ、何故かポーリーの姿は無かった。仕方なく列の短い方へ並ぶと、その列の受付がイスカだった。
この人嫌いなんだよなー。
――なら並び変えればよいのでは?
いや、他はかなり並んでて時間かかりそうだしね。仕方ないよ。
そうこうする内に、俺の番に。
「はぁ、貴方ですか。それで、なんの用ですか?」
うわ、露骨に嫌そうな顔しやがった。
「依頼の報告と換金に来たんだけど」
と言ってキシャル草とゴブリンの魔石を出す。
魔物は体内に魔石を持っておりその用途は様々だが、電池のようなものとして使うのが大半だ。例えば街の街灯に設置したりとか。ゴブリンの魔石で大体一月ほどもつ。
因みに魔石はストレージ内で自動剥ぎ取りである。と言うかナビーさんがしてくれる。
「何ですかこれは?」
「いや見て分からない? これを換金してほしいんだけど」
いちいち言わなきゃ分からないほど馬鹿なのか、と危うく口にしそうになったが辛うじて引っ込める。
「分かりました。ではこの魔石は全部で20ディールです」
は? いやいや、死ぬ思いをしたのにそれがたったの20ディールっておかしいでしょ。
「それとこの草は何ですか? ただの草を換金しろと言われても無理な相談です」
「いやどう見てもキシャル草でしょう」
「何を言ってるんですか? これはキシャルモドキという、ただの草です」
は? そんなのあるの?
――ありません。断言できます。これはキシャル草です。
「嘘は吐かないでくれます? とある信頼出来る人に調べてもらったけどこれはキシャル草だよ」
「貴方の信頼など信用ありません。誰がどう見ても私の方が正しいです」
おい、俺のことは兎も角ナビーさんを蔑ろにするとはどういう了見だ? お前の方が信用無いっての。
「それに身形からするとたかだかゴブリン20匹程度でそうとう苦戦したようですね。無能にも程があります。辞めた方がいいのではないですか、冒険者」
言いたい放題言ってくるイスカ。確かに苦戦したのは確かだし、死にかけもした。だがそれは……
「へえ、ゴブリンリーダー率いる群れを一人で苦戦して倒すのは無能なのか、知らなかったぜ」
そうそう、ゴブリンリーダーが……てあれ?
声がした後ろを振り向くと知らない5人組のパーティがいた。誰?
「『暁』……」
「『鬼斬』のアルザード……」
「『灼熱姫』のエレナもいる……」
「『鷹の目』のシンシア……」
「『大鎧』のドルトス……」
「『白神官』のマシューまでいるのかよ……」
暁? アルザード? えっと誰なん? まだよく分かってない俺に隣にいた冒険者が教えてくれた。
「アルザード、A級冒険者だ。奴の持つ大剣の一振りでオーガを討ち取ったことから『鬼斬』の称号を持っている。そして『暁』は彼が率いるAランクのパーティだ」
アルザードを見る。身長は俺より若干高い位だ。赤茶色の髪、つり目の紫色の瞳、左頬に一文字傷のある野性味溢れた顔をしている。
「見た限りだと一人でゴブリンの群れと戦ったんだろ? それもゴブリンリーダー込みの、お前すげぇな。普通一人なら死んでるぜ。あの女の言うことは気にするな」
「は、はあ……」
なんというか、豪放磊落な人物のようだ。
「というか、ゴブリン1匹が1ディールなんて知らなかったわ。私達も30匹程狩ってきたとこだけど、報酬は30ディールってことね」
金髪を後ろで束ねた気の強そうな女性が言った。
「エレナ様、それはあの魔王の子だけでございます。貴方様からは適正の……」
「全部で30ディールなのよね?」
「いえ、それは……」
「30ディール」
「……」
笑顔で迫るエレナの押しの強さにイスカは黙ってしまう。
「イスカ、これはキシャル草ではないのか?」
今度は長い緑色の髪で切れ長の目をした女性だ。よく見ると耳が少し尖っている。ひょっとしてハーフエルフだろうか? 背中には弓を掛けている。
「はい、シンシア様。似てはいますが全くの別物です」
エレナのプレッシャーから逃れたかったのだろう、イスカがシンシアの質問に答える。
「そう、けど私の『眼』にはキシャル草にしか『視えない』のだけど」
「シンシア様、確かに見た目はキシャル草ですがそれは……」
「イスカ、私は『鑑定』してキシャル草にしか『視えない』、と言ったつもりだけど。それとも私の『眼』がおかしいの?」
「うぐっ…………わ、分かりました。確かにキシャル草ですね、謝罪致します」
「私にじゃない、謝るなら彼に」
シンシアは俺への謝罪を促すが、
「彼に? 必用ありませんね」
イスカは謝罪を拒否した。
「何故魔王の子に謝罪しなければならないのですか? 魔王の子は絶対の悪です。悪に謝罪をする? シンシア様はおかしな事を仰いますね」
イスカはルミナス教の信者だ。狂信者と言ってもいい。そんな彼女が俺に謝る事などまず有り得ないだろう。
「彼は魔王の子じゃない、人間」
「いいえ、魔王の子です。人間ではありません」
なんか俺よりもシンシアの方がヒートアップしてるような。と言うか他の『暁』のメンバーも怒ってるような……何でだ?
まあ、俺の為に怒ってるんだろうな。他にも要因があるかもしれないけど。
「いいよ。こんな気違いに謝罪されても許す気も起きないし」
「なっ!?」
「そうか、お前がそれでいいならそれでいいさ。確かにこんなの相手するのは無駄な労力だったな」
さらりとアルザードも酷いことを言う。こんなの扱いされたイスカが顔を真っ赤にしている。
「気違い? こんなの? ふざけ――」「ちょっとイスカ先輩、仕事を押し付けるって酷いじゃないですかー」
イスカの抗議を被せるように聞き覚えのある声がした。声のした方を見ると、そこには見覚えのあるメロン……もとい、ポーリーだった。
「もー、イスカ先輩、この書類整理とか先輩の仕事でしょう? 何でわたしがしなきゃいけないんですか?」
おい、自分の仕事を後輩に押し付けんなよ。俺が勤めていたあのブラックな会社の上司みたいな奴だな。
「私は貴方の為を思ってやっているのです。兎も角今は貴方に――」「あっ! ソーマさんじゃないですか! 依頼はどうでした?」
またも被せてくるメロン、じゃなくてポーリー。それにしても、何かする度にたゆんたゆんと揺れてるんですが。すっげー目のやり場に困るとゆーか。
「ポーリー、ここは私に任せて貴方は自分の仕事に戻りなさい」
「その事ですけど、サブマスターから『本来の仕事をやりなさい』と言われまして。それとサブマスターが呼んでますよ、先輩。すっっっっっごく怒ってましたけど」
「なあっ!?」
途端に顔を青くし、席を立つイスカ。そのまま奥へと走り去っていった。どこの世界でも上司には逆らえないものなんだな、と改めて思った。
「えー、では改めまして。ソーマさん、ご依頼の報告と換金ですね。清算しますので少々お待ちください」
と、笑顔で対応するポーリーだった。
「ところで、わたしを胸で判断するの止めてくれます?」
ばれてーら!
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