1ー16 夕食と大惨事(喧嘩ではない)
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下の階に降りると、そこそこ賑わっているようだ。
俺以外の宿泊客か、或いはここの飯を食べに来たのか。同じテーブルで酒を飲み交わしている者もいる。
どうやら酒場も兼ねているらしい。てか宿屋兼酒場ってのは定番なのかね。
兎も角、空いてるテーブル席に座ると、アンナが注文を取りに来た。
「ご注文は何ですか?」
「うさ……いや違う。何かオススメはないかな?」
そもそも何があるのか分からん。分からんなら聞くに限る。
「そうですね……どれもオススメなんですが、どれがいいか迷ってるなら本日の日替わりメニューがいいかな?」
「じゃあそれで。あと、ビール……エールと何かつまむものを」
「はーい、日替わりとエールとおつまみですねー。ちょっと待っててくださいね♪」
アンナちゃんは注文を取り終えると厨房の方へ。そしてエールとお摘まみを持ってきた。
「エールとおつまみです。残りはもう少しお待ち下さいね♪」
そう言うと、他の客に呼ばれたのか「はーい、ただいまー!」と、別の客の所に。
一人で注文をとってんのかー、大変だな、と思いつつエールを口にする。
ぬるい。けど本場のビールもぬるいのが普通だし、不味い訳じゃない。いつも飲んでる缶ビールとはのどごしが違うが、これはこれでアリだ。嫌いじゃない。
ツマミはキャベツ?の酢漬けだ。ほどよい酸味と歯ごたえが口に合う。因みにキャベツの酢漬けは健康に良い。昔の船乗りにとってキャベツは救世主だったりする。
しかしやはりと言うか、この手のツマミは手が止まらんな。当然酒も進む。あっという間に無くなってしまったので、追加で注文することにした。
「お待ちどうさま、ご注文の日替わりディナーです。ごゆっくりー♪」
運ばれてきたのはボリューム感たっぷりのステーキに野菜サラダ、パンが2つに黄金色のスープ。何とも食いでがありそうだ。
「では、いただきます」
先ずはステーキ。ナイフがスッと通る。柔らかい。それに肉汁がすごい。口に入れる。
「!!」
美味い。ほどよい柔らかさに口いっぱいに広がる肉の旨味。日本ではまず食べれないだろう。それこそ高級店でない限りは。
スープも絶品だ。玉葱の甘味がしみてて大層美味い。パンが少々硬いのだが、これをスープに浸して食べると、スープがしみこんで程好い柔らかさになる。パン自体もそうだがスープを浸すことでえもいわれぬ味が口内を満たす。
サラダも瑞々しく、野菜自体の甘味を感じる。かかっているのはオリーブオイルと胡椒、所謂ペッパードレッシングというやつだ。胡椒のピリリとした辛さが野菜独特の味を引き立たせる。これがマヨネーズだったらなあ、これだけが残念だが、それでも充分に美味い。
こんなの日本で出されたらどれくらい金がかかるのだろう。考えたくもない。それにしても……
手が止まらない!
「うーまーいーぞー!!」
おっと、何処ぞかの味皇様っぽく叫んでしまった。
「だろう、アンちゃん。ここの飯は絶品だ。それだけでもここに泊まる価値はあるってもんだ」
近くの席に座っていた客が声をかけてくる。
「ホントに。俺、こんな美味いの食ったの生まれて初めてだ」
「そんな……お世辞でもお父さん喜んでくれると思います」
アンナちゃんが照れてる。どうやらここの料理はアンナちゃんの父親が作っているようだ。
「いやいやいや、お世辞じゃないって。なあ、皆もそう思うよな?」
「その通り!」「こんな美味い飯出すのはここくらいだっての!」「そうそう!」「アンちゃんもわかってるじゃねぇか! ここの飯は最高だ!」
皆ここの料理を誉めている。それほどなのだ、ここの飯の美味さは。ここを紹介してくれたガラフには感謝だ。
ところで、周りの客の皆が俺のことをあまり気にしてない、寧ろ好意的に接してくれている。
「そりゃあな、レン国にはアンちゃんみてえな奴が当たり前にいるからだよ。寧ろこの国にいる髪の奴の方が珍しい」
成る程。つまりここにいる人達はレン国迄行く行商人て訳か。
それにしても騒がしい。いや、こういう所だと寧ろこれが普通な気もするが。
暫くすると宿泊客以外の客も来だした。ただ、やはりと言うか何というか、俺を一瞥すると「何で魔王の子が……」とぼそりと呟く。中には「魔王の子がいる所で飯が食えるか!」と言って帰る者、酷い場合は「おい、こいつを追い出せ」と宣う者もいた。尤も、そんなことを言う輩はもれなく行商人達から罵声を浴びた挙げ句、
「あんたのような奴に食わせる飯はない! とっとと出ていきな」
と、リサさんに叩き出されている。リサさん、見た目によらず意外と肝っ玉がでかい。
☆★☆★☆★
「おうおう、今日はまた一段と騒がしいのう」
聞き覚えのある声がしたと思えば、ガラフだった。モーラもいる。
何かきょろきょろしている。何か探している様な感じだが、俺の方を見ると、こっちに向かってきた。
「ここにおったか。坊主、アレ、飲みに来たぞ」
「うんうん、おにーさんのアレ、とっっっっても美味しかったもん」
何気にモーラの仕草が色っぽい。てか、誤解されそうな言い方だな。
「おにーさんのアレ……」「まさかモーラたん……」「白くて濃厚なのを……」「下の口に……」「てかガラフにも……」「いかん、いかんぞ、幼女趣味は兎も角衆道はダメだ」「いやいやいや、アレは一部の層で人気がある。ただこの場合、どっちが攻めでどっちが受けかと言うことだ……」「それは勿論ソーマさんですよ。だって二人にアレ飲ませてんですよ」「「「おお、成る程」」」」
ちっげーよ! ほらみろ、すっげー誤解されまくってるじゃねーか! どっちの趣味もねーよ! つかアンナちゃん、勝手に変な解釈しないでくれます? そして皆も妙な納得してんじゃねーよ。
「ん? 何か誤解しとるのう。儂らはこの坊主が持っとる酒を飲みに来たんじゃが」
ガラフの言葉を聞いてホッとする一同。一部残念そうにしているのは何故だろう。敢えてつっこまないが。
あとアンナちゃんも、残念そうな顔をしない。
「それよりボクがロリってどーゆーこと? 確かにボクはドワーフだし、人間から見たら大人には見えないだろうけど、一応成人してるんだよ」
うんまあ確かに幼女と言うほど幼くは見えないけどね。ただ成人女性には見えないからな、所謂合法ロリだ。それならモーラに関しては勘違いしても問題ない。いや違うそうじゃない。
「いやここ酒場だし、ここのお酒飲みましょうよ」
「いやぢゃ、いやぢゃ、いやなんぢゃあ。アレぢゃないといやなんぢゃあ」
何処のノッカーさんだよ!?
「へぇ、ガラフがここまで欲しがる酒ねぇ。ちょっと興味が出てきた。俺にもそれくれねえか?」
客の一人が興味を持ち始めた。そうなると、なら自分も、と他の客も連鎖反応で要請してくる。
ちらりとアンナちゃんの方を見て助けを求めようとするも、どうしよう、と困った顔をしている。
じゃあリサさんの方を見ると、「任せろ」と言わんばかりに笑顔で頷いてくれた。
「お客人達、ここは酒場だよ。お客人にねだってどうすんだい。うちの酒を飲んでくれないとうちとしても商売あがったりなんだけどねえ」
リサさんの説得(?)にがっくりする一同。だがしかし、
「とは言え、アタシもちょっと気になるねえ。ここは一人一杯ずつ出しちゃくれないかい、お客人」
ちょっと待てぇぇぇぇい!?
「よっ! 流石姐さん、話が分かる!」
「と言うわけでアンちゃん、俺らにもその酒くれや」
「当然、儂にもじゃ」
「ボクもー」
「アタシにもね。美味しかったらうちに卸してくれないかい?」
「あたしにも下さい」
周囲から歓喜の声が。
嗚呼、リサさんとアンナちゃんまで……もうどうにでもなれ!
因みに、ホントに卸すことになりました。それとガラフがビールの空き缶にも興味を持ち、メッキ加工に使えると言ったら思い切り食いついたのは言うまでもない。
「おーい、そのビールとやら、後で自分にもくれないか?」
奥の厨房からやたら素敵ないい声が聞こえたのだが。無視する訳にもいかんよなあ。
どうしてこうなった。はあ……
――ドワーフに酒を渡すからです。
ごもっともで。
ストレージの中にはビールの他にも鬼ころしとかペトリュスとかスピリタスとか元々所持してなかったものも入ってます。何故でしょうね。当然これらも所持数∞……ペトリュス大暴落w