1ー12 冒険者登録
今回短め。
「読めん」
用紙には何か書いてあるが全く読めない。言語理解の祝福があるにも関わらず、だ。そのせいで何処に何を記入していいかも分からない。
取り敢えず言語理解を調べてみよう。
言語理解:フィナレアスのあらゆる言語が理解出来る。但し文字の解読は出来ない。
……突っ伏した。文字の解読もセットにしてよ。
「おや、どうしました? まさか字が読めない? 代筆しましょうか?」
受付嬢のイスカさんが蔑んだ目をしながらそう言った。嫌な予感しかしないが背に腹は変えられない。頼もうとするが、
「それなら私が代筆します。いいですよね?」
ユフィがそう言うと、用紙とペンをとった。イスカさんは如何にも不機嫌な顔をしている。これ絶対違うこと書こうとしただろ。
「えっと、名前はソーマ、年齢は?」
「さ…………じゃなかった、16」
「あ、同い年ですね、えへへ……」
危うく本来の年齢言うとこだった。尤も、ステータスでは16になってたし、間違ってはいない。しかしそうか、ユフィ16歳か。そしてなんか嬉しそうだな。
「あとこれは任意ですけど祝福と技能もですね」
む、なら無記入でもいいんだが……
「ソーマ様、全てを記入する必要はありませんが、なるべく記入した方がよろしいかと」
ヘンリエッタさんからのアドバイスがあったので、問題無さそうなのを選んで記入してもらおう。
「祝福は、『苦痛耐性』に『精神耐性』、それと『魔法適正』。技能は『体術』と『応急手当』、『アイテムボックス』で」
「はい、……え? 祝福3つも持ってるんですか!?」
ユフィが驚いて声をあげる。因みに応急手当はいつの間にか覚えてた。アイテムボックスは勿論アイテムストレージの代わりである。
「マジかよ……」「すげー、初めて見た」「何者だよあいつ……」
周囲がざわつき始めた。ん? 3つ持ってるのそんなに珍しいの?
――はい。大抵の方は持っていません。多くて2つです。
……ナビーさん、俺、8個持ってるんだけど。
――まごうことなきチートですね。
デスヨネー。
「あれ? 魔法適正を持ってるのに魔法系技能は無いんですね。でもアレは魔法の様な……」
「生憎と魔法とは無縁の生活送ってたもんで。だからこれから覚えていこうかと」
ユフィの疑問に正直に答える。それと銃器技能は当然魔法じゃないし、出来れば伏せておきたい。
「そうですか。けど魔法を教える人がいるかどうか……私の周りには精々生活魔法を使える位ですし」
「魔王の子に教える人が居るわけありません。それに魔法と無縁の生活? とんだ田舎ですね。魔王の子は生まれも育ちもロクでもないのですね」
ユフィは心配してくれるが、イスカさんが嘲りの笑みを浮かべ、蔑んだ目でディスりやがった。
「田舎、ねえ。確かに都市部と比べれば田舎だけど、確か市の人口は30万人越えてた様な……少なくとも食うには困らなかったな」
「「「30万!!」」」
ユフィとヘンリエッタさん、イスカさんも驚愕の声をあげる。
「30万て、王都でもそこまで居ませんよ! 何処が田舎ですか!?」
「田舎で30万人……ソーマ様の居た国の人口はどれ程なのですか?」
ユフィがつっこみ、ヘンリエッタさんが質問する。別に秘密にする必要もないので答えた。
「あー、確か1億2000万人位?」
「1億2000万……」
ヘンリエッタさんが絶句する。けど隣の国の人口聞いたらどうなるんだろう。言ってみたい気もするのだが。
「ところで、だいぶ本筋からずれたけどさ、他に記入する事は無いの?」
「………………あ」
何で冒険者登録するのにこんなに脱線してるんだ?
「以上でよろしいですね。少々お待ちください」
「冒険者のタグに違うこと彫ったら許しませんよ。具体的に言うと、ギルドの受付嬢がやれなくなります」
さらっとユフィが脅してきた。「くっ!」という悔しげな声が聞こえたが、やはり違うこと彫るつもりだったか。
奥からイスカさんが戻ってきた。何か手にしており、それを俺に投げ渡した。いいのか、受付嬢がそんな対応して……
受け取ったものはドッグタグみたいなもので何か文字が彫られている。恐らくは俺の名前だろう。
「それがあなたの冒険者としての身分証になります。無くしたら……いえ是非無くして下さい。再登録料として500ディールいただきますので。あ、寧ろ登録抹消するので今すぐ無くして下さい」
この女……クライスも大概だったが、それ以上だな。アイツでさえここまで言わなかったぞ。
「次に、貴方に説明しても無駄でしょうけど冒険者のランクを説明します」
無駄ってなんだよ。それは置いとき、ランクはSを最高位としてA~Fまである。一定以上の依頼をこなすことでランクが上がっていき、その分難易度と報酬も上がるそうだ。「ま、貴方はずっとF級でしょうけどね」とか最後にふざけたことぬかしたが。
ねえ、何でこんな性格ブスが受付嬢やってんの? って美人だからか。
でも幾ら美人でも相手したくないなぁ。つかこれから依頼を受けるとき顔を会わせなきゃいけないとか憂鬱すぎる。他にいないのか?
「では用も済みましたし、これからどうします?」
そうだね。ユフィが言うように、何か依頼受けようにも文字が読めなきゃ意味無いし。とりあえずは、
「何か食べてから決めよう。正直腹へってしょうがない」
「それもそうですね」
そう言うと俺達は冒険者ギルドを後にした。
「あ、私チョココロネがいいです」
「では私はあんパンとコーヒーを」
本当好きだなあんたら!
何で冒険者に登録するだけでこんなに長くなるんだ……orz
あ、評価とかブクマとかしてくれるととても嬉しいです。