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日記

ちょっとグロめの表現があるかもしれないので、苦手な方は注意…と記しておこう。


俺には両親がいた。

親父の名前は業火(ごうか)  嘘花(きよもと)

いわゆる警察ってやつだ。

母は業火 エリー

美しい銀髪、緑の瞳、そしてその美貌と身体的な完璧なバランス(と、親父がいつも言っていた)…全てが完璧な人間だった。

さて、それに対して父親はというと、後に述べるがこちらもまた普通ではなかった。

第4次世界対戦以降人殺しの案件は爆発的に増え、そのほとんどの理由が「病気」だった。

その「病気」というのは第4次世界対戦のきっかけ、準無制限エネルギー機構、簡単に言うと核とか使わず物も燃やさないで同等のエネルギーを無制限に産み出せる新物質「ネオニウム」にあった。

先程無制限にエネルギーを産み出せる、と言ったが、それはもはや人間の領域では、なかった(学者曰く)。

その「ネオニウム」は圧力を加えることで反応し、超科学的エネルギーを産み出す。

その超科学的エネルギーこそが、病気の始まりだった。

症状は狂犬病によく似ていて、無意識の状態で人殺しをしてしまう、というものだ。

…それだけならすぐに直す方法もみつかったのだろうが。

この病気の怖いところはその後遺症にある。

人間の慣れとは恐ろしく、一度でも人を殺すとそれに対して抵抗が無くなっていくのだとか。それも、その病気…通称《狂症》、学名では《狂気的殺人衝動突発症》に感染すると、思考が加速し最も身近な人間への信頼が強ければ強いほどその者に対し強い殺人衝動を抱く。

その原因は超科学的エネルギー…それを多量に吸うことで脳の活性化が起こり、それに耐えられなくなった脳の一部が破損し思考が乱れる、らしい。

まあ第二次世界対戦後の各国が使用していたという原子力発電所、あれのように周囲と隔離すれば良いだけなので、対処は簡単だった。その後も僅かに狂症患者は出たが、それほど問題にはならなかった。

と、話を戻すと、この狂症の原因の特定、対策を発案したのがそこそこの立場の警察官であり俺の親父だった。

戦争中はなぜか起こらなかった狂症。それがなぜ戦後急速に拡散されたのかというと、他の国から技術を隠すため、壊されないために厳重な施設で使用していたから。

だから隔離すればいいと親父は言ったらしい。

その後親父は英雄扱いで、警察としての仕事も失敗がないので、本物の英雄…だったかもしれないな。

さて、そんな親だが俺としては幾つか不満な…いや、不思議な点がある。

家での話の半分以上が【理想郷について】なのだ。

異世界がどうだとか、ここは素晴らしいだとかよくわからないことを言っていた。

まるで直接見てきたかのように。

今の俺はその【理想郷】にいるわけで、その話が合っていたというのが…

いろいろ話されたが、いつも最後に言うのは

「エリーは最高」というものだ。夫婦なのだからそう言うのはわかるのだが、しつこいうるさいと俺としては迷惑と思っていた。いや別に気にしないが。


そういえば、俺には寝起きに親父との雑談の局所的な完全記憶…聞いたとき聞き流したのに朝になるとなぜか完全に記憶しているのだ。

理想郷(アアル)に行ったあとは寝起きに知らないことを知っていたりしたが…

っと、話が逸れたな。


俺は親父のそういう面ばかり見ていたが、警察としての親父は人が変わったみたいな真面目…脳筋…勤勉っぷりだった。

犯罪組織に一人で潜入し、そこにいる組織の人間を一人も殺さず捕らえたり(身体中血まみれで骨も数本折れていたが)、ヤクの取引現場に偶然遭遇し、全身を銃で撃たれつつもなんとか手錠をかけた…らしい。

それを示す大怪我や手柄があるので事実なのだが、信じれないと思うのは仕方ないだろう。

さて、そんな親父はあるとき唐突に死を受け入れた。

死を受け入れるなんてよくわからないが、言葉の通りなのだから仕方がない。狂症患者に襲われて、怪我をして、倒れた。

それが事実。いや…それが事実となっている、というのが正しいかもしれない。


俺は鈴蘭と家の2階にいて、親が帰ってきたので降りていった。大学を卒業してすぐだったので、ほとんどの時間を家で過ごしていた俺は、親の手伝いでもしようと思って降りた…のだが、衝撃的な現場を見てしまった。

帰ってきた母親と親父の後ろに知らない人間が一人いて、その知らない人間が親父の背中から大きなナイフで心臓を貫く光景だった。


母親はそれに気付き、父親を支えた。

その母親に向かって知らない人間がナイフを振り上げたので、


俺は足に付けておいた防犯ブザーを鳴らす。

それに驚愕した…犯人さんでいいや

犯人さんは動きを数瞬止める。

その隙に突進、押し倒してナイフを奪う。

そして俺は抵抗する犯人さんに馬乗りになりナイフを突き刺した。

刺して

切って

裂いて

抜いて

また刺して

引き裂き

腕や足の間接を切断し

刺して

挽いて

刺して

潰して

刺して

切って

切って

犯人さんが動きを止める

その表情は絶望に包まれ、

胃を掻き回した影響か口からは血が、

そして俺の手にも血がべっとりと付着していた。

血が詰まったのかブザーは止まっている。

後ろを向くと、父親が起き上がり、母親に支えながら立ち上がる。

それを確認した俺は死体チェックとしてもう一度、ナイフを刺した。

ナイフは心臓を貫き、血が溢れる。

親父は俺になにか話そうとして、やめた。

母親も、子どもがこんなことをしたというのになにも言わなかった。

その二人の目は慈愛に満ち、俺への恐れは無かった。

「徒徒、お前は悪くないからな。」

その一言、それだけを言って親父は家を出て車に乗り、何処かへ行った。

この状況を普通の人間なら「息子が怖くて逃げた」だが、今の俺はそうは考えなかった。

いつかまた会える、そんな気がしたから。

というといい話っぽいが、内容は残酷な殺し合いである。

その後警察が来たので、

「親2人が何処かで刺されたらしいのと、その刺した人物が襲いかかってきたので反撃した」

と伝えた。

嘘である。

だが、実際あの傷なら普通はすぐ死ぬ。

結局そのあと無気力な俺は死んだわけだが…


親父や母親が今何をしているかはわからないが、たぶん平和に生きているんだろう。



ーーーー徒花の日記29ページより引用

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